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  • 2025/06/13公開

【第3回】楽天の「挑戦文化」はどう生まれたのか? ── グローバル志向と内製主義が育む“攻める組織”のリアル──

【第3回】楽天の「挑戦文化」はどう生まれたのか? ── グローバル志向と内製主義が育む“攻める組織”のリアル──

【第1回】なぜ楽天は「通信×金融×EC」にこだわるのか?

【第2回】楽天グループ再編の本質「持株会社化」と戦略子会社の再定義

【第3回】楽天の「挑戦文化」はどう生まれたのか?

【第4回】楽天の経営に学ぶ「変革する組織」の設計図

この記事を書いた人

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山本 和敏(やまもと かずとし)
マサチューセッツ州立大学MBA。USCPA(米国公認会計士)。情報系の大学を卒業後、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。主にシステムインテグレーション関連のプロジェクトに従事する中で、製品やサービスに依存せず、顧客視点からの提案・支援を行いたいという思いが強くなり、コンサルティング業界への転職を決意。転職後は、IT関連のプロジェクトを中心に、業務改革や戦略策定など支援の範囲を広げ、様々な業界のクライアント様の課題解決に取り組んでいる。現在は、業界最大手のクライアント様の伴走支援を行い、上層部の方々が抱える難易度の高い課題に対し、これまで培ってきた知見やスキルを活かし、さまざまな視点から価値ある解決策を提供している。

目次
なぜ楽天は“挑戦し続ける組織”であり得るのか?
「公用語英語化」は文化の象徴である
楽天の“内製主義”が生む現場主導のスピード
評価制度とキャリア設計も“挑戦前提”
組織文化は「制度 × 行動 × 言語」でかたちづくられる
この分析にMBAの学びはどう活きるのか?

なぜ楽天は“挑戦し続ける組織”であり得るのか?

楽天は、金融・通信・物流・ヘルスケアと、常に異分野へと果敢に挑戦し続けています。なぜ、これほどの事業多角化をスピーディに展開できるのでしょうか?その鍵となっているのが、楽天独自の「挑戦文化」にあると言えます。

単に「リスクを取る」ことを是とするのではなく、組織全体が挑戦を当たり前とする行動原理を備えているのです。その文化は、経営陣の姿勢、評価制度、社内制度、採用方針、日常の言葉づかいにまで浸透していると言えます。

「公用語英語化」は文化の象徴である

楽天の企業文化を語るうえで、象徴的な出来事が2012年の社内公用語英語化です。この決断は単なる語学施策ではなく、以下のような文化的意図が込められていました。

・グローバル人材と対等に議論できる組織へ変化する

・発言力やスキルでリーダーが決まる“実力主義”の文化を浸透させる

・曖昧な意思決定や、根回し文化からの脱却

「全社員が英語を話すようになる」以上に、「グローバルな視野・スピード感・論理性を組織のDNAに組み込む」という強い文化改革の意志があったのです。

楽天の“内製主義”が生む現場主導のスピード

もうひとつ、楽天を支えているのが「自分たちで作る」文化=内製主義です。

・楽天市場のEC基盤も、楽天証券の取引システムも、楽天モバイルのネットワークも、基本は自社開発

・外部ベンダー任せにせず、「システムは経営の中核」という考え方が根づいている

これにより、以下のようなメリットが実現しています。

・機能改善やUX改善のサイクルが速い

・サービス同士を技術的に容易に連携できる

・組織内にナレッジが蓄積し、革新が継続する

つまり、「挑戦のアイデアがすぐ実装できる構造」が整っているのです。

評価制度とキャリア設計も“挑戦前提”

楽天では、「結果に責任を持つが、挑戦は評価される」風土が制度としても支えられています。

・成果主義だけでなく、「新しい取り組みへの積極性」が評価軸に含まれる

・若手でも事業責任者になる道が開かれている

・職種横断での社内公募制度が活発に活用されている

このような設計により、「自分で未来を選べる」という自己効力感が高まり、組織全体が自走する状態に近づいています。

組織文化は「制度 × 行動 × 言語」でかたちづくられる

楽天の持つ“挑戦の文化”は、単なる理念やスローガンとして語られるものではありません。それは、社員の日常行動、評価制度、そして使われる言葉そのものにまで浸透しており、組織全体のDNAのように機能しています。これは、経営学における「文化は構造の蓄積された形(Culture is the accumulated form of structure)」という考えを体現している好例といえます。

制度面:行動を促す“仕掛け”としての仕組み

楽天では、「挑戦を評価する」ことを制度として明示しています。

たとえば、短期的な失敗があったとしても、その挑戦の背景や仮説・検証プロセスが正当であれば、評価に悪影響が出ない設計がなされています。この仕組みが、社員のリスクテイクを後押ししています。

さらに、定期的な“1on1ミーティング”や、チーム横断で行われるプロジェクトレビューなども制度化されており、上司と部下が継続的に対話し、課題をすり合わせる仕組みが整っています。

行動面:オープンさとロジックを尊ぶ習慣

楽天では、失敗を隠さずに共有し、そこから何を学んだかを語ることが自然と根づいています。「反省会」や「振り返り会議」が批判ではなく成長の場として機能しており、ミスやトラブルの報告を“責任追及”ではなく“全社的な学び”として扱う文化が醸成されています。

また、感情や直感よりもデータとロジックに基づいた議論が好まれる傾向にあり、報告・提案・意思決定すべてにおいて「なぜそう考えるのか?」「根拠は何か?」が問われます。これは、楽天がIT・金融・通信などの“高精度な意思決定”が求められる産業で成長してきた背景とも無関係ではありません。

言語面:「世界で勝てるか?」が共通のものさし

日常の会話や会議の中で、楽天らしいキーフレーズが飛び交います。

「それってグローバルで通用する?」

「日本基準になっていない?」

「世界で勝てるモデルに昇華できる?」

こうした言葉の選び方・基準の置き方は、単なるフレーズではなく、価値観のインストールそのものです。組織のなかで交わされる言葉は、実は無意識の行動基準や意思決定の前提を形作るもの。楽天では「日本で便利かどうか」ではなく、「世界で戦えるかどうか」が常に議論の起点になっているのです。

文化は“意志と構造”の繰り返しでつくられる

楽天の挑戦文化は、創業者のリーダーシップだけに依存しているわけではありません。制度(仕組み)、行動(日常の振る舞い)、言語(使われる言葉)のすべてが一貫したメッセージを発しているからこそ、文化として定着しているのです。つまりこれは、「意志のある構造設計」が何度も繰り返されることで、やがて“文化”という空気になった結果といえるでしょう。

この分析にMBAの学びはどう活きるのか?

楽天の企業文化は、MBAで学ぶ以下の領域に深く結びついています。

MBAの論点 関連する思考・知識
組織行動論 人の行動を支えるインセンティブと制度の設計
変革マネジメント 抵抗を乗り越え文化を変えるリーダーの働きかけ
人材マネジメント 評価とキャリア開発をどう戦略と接続するか
リーダーシップ 挑戦する組織を言葉と行動で導く力とは何か

楽天の事例は、「組織文化」という見えにくいものを、構造と制度の言語で読み解く力を鍛える貴重なケーススタディです。

次回予告

シリーズ最終回では、これまでの戦略・構造・文化の分析を統合し、楽天という企業が私たちに教えてくれる「変革と経営の本質」を総まとめとしてお届けします。次回もぜひご覧ください!

【第4回】楽天の経営に学ぶ「変革する組織」の設計図

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