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  • 2025/12/05公開

【第2回】ユニクロの戦略と改革──「グローバルワン」とサプライチェーン変革の実相──

【第2回】ユニクロの戦略と改革──「グローバルワン」とサプライチェーン変革の実相──

【第1回】なぜユニクロは変わらなければならなかったのか?

【第2回】ユニクロの戦略と改革

【第3回】ユニクロを支える“文化と人材”

【第4回】ユニクロの成長から学ぶ「経営の本質」

この記事を書いた人

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山本 和敏(やまもと かずとし)
マサチューセッツ州立大学MBA。USCPA(米国公認会計士)。情報系の大学を卒業後、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。主にシステムインテグレーション関連のプロジェクトに従事する中で、製品やサービスに依存せず、顧客視点からの提案・支援を行いたいという思いが強くなり、コンサルティング業界への転職を決意。転職後は、IT関連のプロジェクトを中心に、業務改革や戦略策定など支援の範囲を広げ、様々な業界のクライアント様の課題解決に取り組んでいる。現在は、業界最大手のクライアント様の伴走支援を行い、上層部の方々が抱える難易度の高い課題に対し、これまで培ってきた知見やスキルを活かし、さまざまな視点から価値ある解決策を提供している。

目次
グローバル経営への転換点
有明プロジェクト──デジタル駆動のSPA改革
グローバル商品戦略──“普遍性”と“ローカル適応”
GUとのブランドポートフォリオ戦略
ESG経営とサステナビリティへの布石
成果と残る課題
MBAの学びとの接点


グローバル経営への転換点

ユニクロは2000年代後半から本格的に「世界市場」を見据えた経営に舵を切りました。柳井正会長兼社長が掲げたのは、「グローバルワン」 という考え方です。

日本本社主導ではなく、世界全体をひとつの市場として捉える
商品企画・物流・販売・人材を国境を超えて最適化する
目標は「真のグローバル企業」=欧米ブランドと肩を並べる存在

この戦略は、「国内で勝っているから海外に輸出する」という従来型の日本企業モデルを超えた挑戦でした。

有明プロジェクト──デジタル駆動のSPA改革

ユニクロ改革の象徴的な施策が、東京・有明に設置されたR&D・物流統合拠点です。

SPAモデル(製造小売)の進化
従来のアパレル業界では、商品企画と生産・物流・販売が分断され、意思決定や市場投入までに数か月を要することも珍しくありませんでした。
ユニクロはSPA(Specialty Store Retailer of Private Label Apparel)モデルをさらに進化させ、有明拠点を中心に商品企画から生産、物流、販売までを一気通貫で管理しています。
これにより、企画から店頭投入までのサイクルが大幅に短縮され、季節やトレンドに迅速に対応可能となっています。

デジタル統合の推進
ECと実店舗在庫を統合管理する仕組みも整備。
顧客がアプリで注文した商品は、最寄りの店舗や倉庫から迅速に配送される仕組みが構築され、オンラインとオフラインのシームレスな購買体験を提供しています。
また、在庫データのリアルタイム可視化により、商品欠品や余剰在庫のリスクを低減し、販売機会の最大化を図っています。

効率化効果
この結果、サプライチェーン全体の在庫回転率は向上。2023年度の棚卸資産回転日数は従来の約100日から80日台に改善されました。
在庫効率の向上は資金効率にも寄与し、グローバル展開や新規事業投資の余地を生む基盤となっています。

この「有明モデル」は、ユニクロを単なる小売業から、データドリブンのプラットフォーム型企業へと進化させる中核施策と言えます。

グローバル商品戦略──“普遍性”と“ローカル適応”

ユニクロの商品戦略は、世界市場に対応するため独自の二軸で構成されています。

普遍的なベーシックアイテム
ヒートテック、エアリズム、ウルトラライトダウンなど、世界共通で売れる機能性商品をコアに据えています。
これにより、地域ごとに異なるトレンドに左右されず、グローバル規模で安定した販売基盤を確保しています。

ローカル適応の工夫
一方で、地域特性に応じた商品ラインナップも重視しています。
インドでは高温多湿に対応した通気性素材を強化、中国では寒冷地向けに保温性を高めた製品を展開。地域ごとの消費者嗜好や気候条件に合わせた商品開発により、規模の経済とローカル適応の両立を実現しています。

この戦略の成果として、2023年度には中国・東南アジア・オセアニアの事業営業利益が国内事業を上回る大きな転換が起きました。

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GUとのブランドポートフォリオ戦略

ユニクロの成長を支えるもう一つの軸が、グループブランド「GU」です。

ターゲット層:ユニクロよりも若年層・トレンド志向
価格帯:ユニクロより低価格(平均で2〜3割安い)
売上規模:2023年度約3,000億円、営業利益は過去最高水準

GUは「トレンド×低価格」を武器に若年層を中心に支持を拡大。
一方でユニクロは「ライフウェア(LifeWear)」としてベーシック市場をターゲットにする戦略です。
両ブランドを併用することで、アパレル市場の多層的な需要をカバーし、国内市場の成熟による成長限界を補完しています。

ESG経営とサステナビリティへの布石

ユニクロは環境・社会・ガバナンス(ESG)戦略を単なるCSRではなく、成長戦略の一部として位置づけています。

リサイクル素材の拡大
2023年度には、ダウンジャケットの約50%にリサイクル羽毛を採用。資源循環型の製品提供を進めています。

サプライチェーン監査の強化
協力工場の労働環境や環境負荷を厳しく監査。違反工場には契約停止も含めた厳格な対応を実施しています。

国際的評価
気候変動関連情報開示(CDPスコア)で高評価を獲得し、海外投資家からのESG評価も上昇。
これにより、サステナビリティは消費者や投資家に選ばれる条件として、企業価値の向上にも直結しています。

成果と残る課題

こうした改革の結果、ファーストリテイリングはアパレル業界でも際立った成長を遂げています。

2023年度売上:2.7兆円(過去最高)
海外比率:売上の55%、営業利益の60%超
EC比率:約20%(欧米競合よりは低い)

しかし課題も残ります。

欧米市場でのブランド浸透は依然として弱い
デジタル比率は競合ZARAの約30%に及ばず
サステナビリティ施策は投資負担が大きく、短期的には利益圧迫要因

MBAの学びとの接点

ユニクロの事例から見えるポイントは、MBAで学ぶフレームワークに直結します。

MBAの論点 ユニクロ事例の示唆
グローバル戦略 「標準化 × ローカル適応」の両立
サプライチェーン戦略 デジタル統合による在庫最適化とスピード経営
ブランド戦略 マルチブランド(ユニクロ×GU)の棲み分け設計
サステナビリティ ESGを成長戦略に組み込む発想

次回予告

第3回では、制度や仕組みだけでは変わらない「文化と人材」の観点から、ファーストリテイリングを分析します。

・ユニクロが従業員や現場にどのような文化を根付かせているのか
・グローバル人材登用と現地経営の実態
・「柳井イズム」はどう浸透しているのか

をテーマに掘り下げます。

次の記事はこちら

【第3回】ユニクロを支える“文化と人材”


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