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【第2回】フジフイルムHDの事業ポートフォリオ戦略
目次
第2回のテーマ──なぜフジフイルムは「生き残れた」のか
写真事業を「捨てなかった」戦略的判断
成長領域へのシフト──ヘルスケアと高機能材料
ポートフォリオ経営を支える「時間軸の分離」
財務規律と投資判断──「我慢できる経営」
多角化の落とし穴を回避できた理由
この分析にMBAの学びはどう活きるのか?
第1回では、フジフイルムHDが写真フィルム市場の急激な崩壊という未曾有の環境変化に直面しながらも、企業として存続・成長を遂げた全体像を確認しました。第2回では、その中核にあった事業ポートフォリオ戦略と経営判断の構造に焦点を当てます。
同時期、同じ写真業界に属していたコダックは破綻しました。一方でフジフイルムは、写真事業を縮小させながらも企業全体としては成長軌道を描きました。この差を生んだ要因は、単なる技術力や運ではなく、「事業をどう位置づけ、どう組み替えたか」という経営の設計思想にあります。
フジフイルムの最大の特徴は、写真フィルム事業を急激に切り捨てなかった点にあります。デジタル化によって需要が激減する中、多くの企業であれば撤退や売却を検討する局面でした。しかしフジフイルムは、写真事業を以下のように再定義しました。
・成長事業ではないが、一定期間は安定したキャッシュを生む事業
・技術・人材・品質管理ノウハウの蓄積源
・新規事業に転用可能な「技術の母体」
つまり、写真事業を「過去の遺産」ではなく、次の成長を支える基盤事業として位置づけたのです。この判断により、写真事業から生まれるキャッシュフローを、将来性の高い分野へ計画的に再配分する余地が生まれました。
写真事業で培った技術は、意外な分野で競争力を発揮しました。例えば、写真フィルムで用いられていた以下の技術は、他分野への転用が可能でした。
・微粒子制御技術
・高精度な化学反応制御
・薄膜塗布・多層構造技術
これらは、医療用画像診断、再生医療、化粧品、高機能材料といった分野で高い付加価値を生み出す要素となりました。
特にヘルスケア事業では、医療機器、バイオ医薬品、再生医療といった領域へ段階的に投資を拡大。短期的には利益が出にくい分野であっても、長期的な成長性を重視した意思決定が行われてきました。
フジフイルムの経営で重要なのは、事業ごとに異なる時間軸を設定している点にあります。
・写真事業:縮小を前提としつつ、安定収益を確保 ・医療・ヘルスケア:中長期視点で育成 ・高機能材料:比較的早期に収益化を狙う成長事業
すべての事業に同じ収益基準や成長目標を課してしまうと、探索型事業は育ちません。フジフイルムは、事業フェーズごとに期待役割を明確化することで、ポートフォリオ全体のバランスを取ってきました。
これは理論としては知られていても、実務で徹底するのは極めて難しい判断と言えます。
成長事業への投資は、短期的には利益を圧迫します。フジフイルムは、この点を理解した上で、以下のような財務運営を行ってきました。
・写真事業のキャッシュを成長分野へ再投資
・一時的な利益率低下を許容
・財務健全性を維持しつつ研究開発費を確保
重要なのは、「投資をやめなかったこと」ではなく、投資を継続できる財務体質と社内合意を維持したことにあります。
これは経営トップの意思だけでなく、組織全体が戦略を理解し、短期的な数字に一喜一憂しない文化があってこそ可能になります。
多角化戦略は失敗するケースも少なくありません。フジフイルムがその罠を回避できた理由は、以下の点に集約されます。
・技術的な連続性がある分野に限定して参入
・既存技術・人材を活かせる領域を選択
・買収後も技術・品質基準を自社流に統合
単なる「事業数の拡大」ではなく、自社の強みを軸にした関連多角化であった点が決定的でした。
フジフイルムHDの事業ポートフォリオ戦略は、MBAで学ぶ理論を実践レベルで結びつけた好例です。
| MBAの論点 | フジフイルムHDの事例からの示唆 |
|---|---|
| コーポレート戦略 | 写真事業を撤退せず「基盤事業」と再定義し、全社ポートフォリオを再構築 |
| 事業ポートフォリオ理論 | 成熟・衰退事業と探索型事業に異なる役割と評価軸を設定 |
| 財務戦略 | 短期利益よりも長期価値創造を優先した投資判断 |
| 経営管理論 | 事業フェーズごとにKPIや期待成果を切り替える管理設計 |
| 組織行動論 | 既存人材・技術を新規事業へ再配置する組織運営 |
MBAで学ぶフレームワークは、フジフイルムの事例を通すことで「理論が経営判断にどう使われるのか」を具体的に理解できます。
次回第3回では、フジフイルムHDのR&Dとイノベーション創出の仕組みに焦点を当てます。
・写真技術はどう新事業に転用されたのか
・長期研究投資を支える組織と評価制度
・MBA的視点で読み解く、探索型イノベーションのマネジメント
次回も、単なる成功談ではなく、再現可能な経営の学びとして掘り下げていきます。
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