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  • 2025/11/26公開

【第4回】MUFGの変革から学ぶ「経営の本質」──巨大金融グループの進化が示す普遍的教訓──

【第4回】MUFGの変革から学ぶ「経営の本質」──巨大金融グループの進化が示す普遍的教訓──

【第1回】なぜMUFGは変わらなければならなかったのか?

【第2回】MUFGの戦略と改革

【第3回】MUFGの人と文化の変革

【第4回】MUFGの変革から学ぶ「経営の本質」

この記事を書いた人

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山本 和敏(やまもと かずとし)
マサチューセッツ州立大学MBA。USCPA(米国公認会計士)。情報系の大学を卒業後、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。主にシステムインテグレーション関連のプロジェクトに従事する中で、製品やサービスに依存せず、顧客視点からの提案・支援を行いたいという思いが強くなり、コンサルティング業界への転職を決意。転職後は、IT関連のプロジェクトを中心に、業務改革や戦略策定など支援の範囲を広げ、様々な業界のクライアント様の課題解決に取り組んでいる。現在は、業界最大手のクライアント様の伴走支援を行い、上層部の方々が抱える難易度の高い課題に対し、これまで培ってきた知見やスキルを活かし、さまざまな視点から価値ある解決策を提供している。

目次
MUFGの変革を読み解く3つの層
金融業界の特殊性──「規制」と「収益」の狭間を生きる
巨大組織を動かすための“全体最適”の発想
個人にとっての学び──制約を超える3つの力
MBAの学びとの接点
終わりに──変革は「規模」とは無関係


MUFGの変革を読み解く3つの層

これまでの3回で見てきたように、MUFGは「規制産業としての制約」「巨大組織ゆえの硬直性」「収益モデルの陳腐化」という三重苦に直面してきました。
それでもなお、メガバンクの枠を越えた進化を続けています。

この変革の構造は、3つの層に整理できます。

1. 戦略の転換
国内依存から海外成長市場へ、そして貸出利ザヤから手数料・運用収益中心のモデルへ。
特にアジアでのM&Aや資産運用・デジタル証券など、新しい収益源の確立が進みました。

2. 構造の再設計
銀行・信託・証券の縦割りを超え、顧客起点の「グループ型組織」へと再編。
法人営業の一体運営やデジタルチャネル強化により、MUFG全体として価値を届ける仕組みに変わりつつあります。

3. 文化と人材の刷新
若手・女性・海外人材・デジタル人材の登用を進め、硬直的だった銀行文化に風穴を開ける。
「安定から挑戦へ」という価値観のシフトが、ようやく芽吹き始めています。

この三層が“同時並行で連動”することにより、MUFGは単なる銀行グループから「グローバル金融サービス企業」へと進化しているのです。

金融業界の特殊性──「規制」と「収益」の狭間を生きる

MUFGの変革を理解するには、金融業界特有の制約構造を押さえる必要があります。
それは、常に「規制」と「収益性」の狭間にあるという現実です。

規制の存在
銀行は公共性の高い産業であり、自己資本比率やリスク資産の管理は厳格に定められています。
バーゼルⅢの導入以降、リスクを取るほど資本が必要となり、収益拡大には制約が伴う構造になりました。
さらに2016年以降のマイナス金利政策は、国内貸出の利ザヤを押し下げ、伝統的な収益モデルを直撃しました。

収益の多角化ニーズ
一方で、株主や投資家からはROE(自己資本利益率)の改善を強く求められます。
「リスクは取れないが、利益は伸ばせ」と迫られる──この矛盾こそ金融業の宿命です。

MUFGはこの狭間で、海外M&A、デジタル証券、ウェルスマネジメントなどの新たな収益源を開拓してきました。制約を前提に戦略を設計する力こそ、金融経営の真髄といえます。

巨大組織を動かすための“全体最適”の発想

MUFGのような巨大組織では、常に「部分最適の罠」が潜んでいます。

・銀行部門は貸出残高の拡大を重視
・証券部門は案件獲得に注力
・信託部門は運用残高の増加を目指す

それぞれが正しく見えても、全体では顧客が“分断されたサービス”を感じてしまう危険があります。

そこでMUFGは、「顧客体験を起点に全体最適を設計する」という考え方を導入しました。
法人向け営業では、銀行・証券・信託がワンチームで提案する仕組みを導入。
リテール領域では、支店中心からアプリ・オンライン相談中心へとシフトし、チャネル横断の利便性を追求しています。

MBA的に言えば、これは“システムとしての組織デザイン”。
各ユニットが自律しながらも、全体で顧客価値を最大化する「協調型構造」への移行です。

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個人にとっての学び──制約を超える3つの力

MUFGの変革は、私たちビジネスパーソンにとっても重要な示唆を与えます。
巨大組織の話に見えて、実はあらゆる職場・キャリアに共通する本質が隠れています。

① 制約を前提に創造する力
「ルールがあるからできない」ではなく、「ルールがある中で最適な形をデザインする」。
MUFGが規制を“制約”でなく“設計条件”と捉えたように、個人も環境制約を創造の出発点に変える発想が求められます。

② 部分最適に満足しない視点
自部署や自分の成果に閉じず、組織全体や顧客体験の全体像を意識する。
これは「戦略的思考」そのものであり、MBA教育でも最も重視される視点です。

③ 自ら学び直し、変わる姿勢
銀行員であってもデジタルを学び、海外市場に挑むように、
あらゆる職種で“知識のアップデート”は避けて通れません。
変化の時代において、最も価値を持つスキルは「学び続ける力」です。

MBAの学びとの接点

MUFGの事例から見えるポイントは、MBAで学ぶフレームワークに直結します。

MBAの論点 MUFG事例の示唆
経営戦略論 制約下での成長戦略と収益モデル再設
組織デザイン 縦割りから顧客起点の全体最適へ
ファイナンス 規制を踏まえたROE改善と資本効率向上
組織行動論 人材多様性と文化変革の浸透プロセス

終わりに──変革は「規模」とは無関係

MUFGのような巨大組織の事例は、一見「スケールが違うから参考にならない」と思うかもしれません。
しかし実際には、

・制約条件をどう捉えるか
・全体最適をどう設計するか
・人と文化をどう動かすか

といった問いは、中小企業やチーム単位の組織でも同じです。

変革とは「環境の変化に適応するための再設計」であり、その本質は組織規模に関わらず普遍的です。
MUFGの歩みは、私たち一人ひとりに「制約を超える思考」と「全体最適を描く視点」を問いかけています。

次回は、また別の業界・企業の事例を取り上げていく予定です。あなた自身の現場と重ねながら、引き続き一緒に考えていきましょう。


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