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  • 2025/08/07公開

【第4回】「変わり続ける経営体」はどう設計されるのか、三井物産の実践から学ぶ──静かなる大改革が、日本企業に示す新しい経営モデル──

【第4回】「変わり続ける経営体」はどう設計されるのか、三井物産の実践から学ぶ──静かなる大改革が、日本企業に示す新しい経営モデル──

【第1回】総合商社は“経営の最前線”へ、三井物産が挑む「脱・仲介」戦略とは

【第2回】脱炭素は“リスク”ではなく“収益源”、三井物産の逆転サステナ戦略

【第3回】ゼネラリストを超えて“経営人材”へ、三井物産の人と組織の進化論

【第4回】「変わり続ける経営体」はどう設計されるのか、三井物産の実践から学ぶ

この記事を書いた人

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山本 和敏(やまもと かずとし)
マサチューセッツ州立大学MBA。USCPA(米国公認会計士)。情報系の大学を卒業後、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。主にシステムインテグレーション関連のプロジェクトに従事する中で、製品やサービスに依存せず、顧客視点からの提案・支援を行いたいという思いが強くなり、コンサルティング業界への転職を決意。転職後は、IT関連のプロジェクトを中心に、業務改革や戦略策定など支援の範囲を広げ、様々な業界のクライアント様の課題解決に取り組んでいる。現在は、業界最大手のクライアント様の伴走支援を行い、上層部の方々が抱える難易度の高い課題に対し、これまで培ってきた知見やスキルを活かし、さまざまな視点から価値ある解決策を提供している。

目次
「巨大であること」は変化できない理由にならない
変革を支える“三位一体”の構造デザイン
「変わり続ける力」こそが、次代の競争優位になる
「実行される戦略」は“人”から始まる
三井物産から学べる、経営の5つの原則
この分析にMBAの学びはどう活きるか?


「巨大であること」は変化できない理由にならない

総合商社という存在は、ともすれば「変化に鈍い」「古い日本型組織」と見られがちです。
数万人の社員、重厚な業務構造、意思決定の多段階性。これらは従来であれば、こうした特徴は変革を阻む要因と考えられてきました。

しかし三井物産は、むしろ「巨大だからこそ、変われる構造」を設計し、自らを“持続的変化体”として機能させてきました。

・戦略を描き切る力
・組織を変え抜く力
・人を動かし続ける力

この三つが有機的に連動しているからこそ、三井物産は過去を否定せず、未来に適応する企業であり続けられるのです。

変革を支える“三位一体”の構造デザイン

三井物産の変革は、“個別の施策の連打”ではありません。 むしろ、経営構造を貫く“設計思想”が全体を一貫させていることが特徴です。

領域 経営レイヤーごとの進化のポイント
戦略 取引型から“事業経営型”へ転換し、
長期視点での収益創出へシフト(第1回)
事業構造 カーボンニュートラル・ヘルスケア等、
社会課題と収益をつなぐモデル設計(第2回)
組織・人材 ゼネラリスト依存を脱し、
“経営する人材”を起点に組織を組み直す(第3回)

このように、単一領域の改革ではなく、「経営の仕組みそのものを動かす」姿勢が成功の鍵となっています。

「変わり続ける力」こそが、次代の競争優位になる

企業にとって最も価値ある資質とは、“何をしているか”ではなく、“どう変化できるか”にあります。

三井物産は、「○○業界の会社」ではなく、「変化を続けられる構造そのもの」としての経営体を目指しています。

これは、MBAで言う「ダイナミック・ケイパビリティ(変化対応能力)」── すなわち、市場の変化に応じて自らのリソース構造・戦略を再構築できる能力に他なりません

「実行される戦略」は“人”から始まる

三井物産の事例から学べる最大の教訓は、「戦略=紙ではなく、組織に染み込ませてこそ意味を持つ」ということです。

・事業戦略は、経営に挑む人材がいなければ絵に描いた餅
・ESG戦略も、日々の意思決定に埋め込まれなければ意味がない
・組織再設計は、“制度設計”ではなく“行動と文化の設計”でこそ真価を発揮する

つまり、変革とは“構造の話”であると同時に“人の話”でもあるのです。

三井物産から学べる、経営の5つの原則

① 戦略とは、やめることを決めること
テレビやPC、石炭事業の縮小など、“撤退の選択”も戦略の一部。

② 組織は、構造よりも“動き方”がすべて
機能別か事業別かではなく、ミッションごとの柔軟な連動がカギ。

③ ESGはコストではなく、構造的な事業機会
脱炭素、水素、再生可能エネを“稼ぐ力”に変える設計力。

④ 人は“設計された仕組み”で育ち、“意志ある役割”で動く
キャリアを自らデザインし、経営に参加する構造づくりが進む。

⑤ 変化を習慣にできる企業が、最終的に勝つ
「変わった企業」ではなく、「変わり続けられる企業」になる。

この変革にMBAの学びはどう活きるか?

三井物産のこの変革を深く理解するには、経営の複数レイヤーにまたがる横断的な視座が必要です。

MBA分野 対応する内容
経営戦略 事業ポートフォリオ/ESG事業の戦略化
組織設計 役割ベース構造/プロジェクト型組織への転換
人材マネジメント リーダーシップ育成/行動評価制度の実装
コーポレートガバナンス 持株会社化による統治構造の高度化

これらを統合的に理解・応用できるようになることが、MBA的な“経営を見る力”の実践的価値です。

終わりに──“静かなる改革”にこそ、変革の本質がある

三井物産の変革は、決して派手ではありません。
新しいビジネスモデルを掲げたり、創業ストーリーで注目を集めるスタートアップでもありません。

しかし、彼らが実現しているのは、構造・人・文化をすべて設計し直すことで、“変化する力”を構造・文化・人材に根づかせる経営の実践”です。

この静かなる大改革は、すべての企業にとって普遍的な問いを投げかけています。
あなたの組織は、変わり続けられる構造を備えていますか?

次回は、また別の業界・企業の事例を取り上げていく予定です。あなた自身の現場と重ねながら、引き続き一緒に考えていきましょう。

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