本ウェブサイトでは、Cookieを利用しています。本ウェブサイトを継続してご利用いただく際には、当社のCookieの利用方針に同意いただいたものとみなします。

  • 2025/08/06公開

【第2回】脱炭素は“リスク”ではなく“収益源”、三井物産の逆転サステナ戦略─ESGを“稼ぐ戦略”に──三井物産の逆転思考──

【第2回】脱炭素は“リスク”ではなく“収益源”、三井物産の逆転サステナ戦略─ESGを“稼ぐ戦略”に──三井物産の逆転思考──

第1回】総合商社は“経営の最前線”へ、三井物産が挑む「脱・仲介」戦略とは

【第2回】脱炭素は“リスク”ではなく“収益源”、三井物産の逆転サステナ戦略

【第3回】ゼネラリストを超えて“経営人材”へ、三井物産の人と組織の進化論

【第4回】「変わり続ける経営体」はどう設計されるのか、三井物産の実践から学ぶ

この記事を書いた人

guest.jpg

山本 和敏(やまもと かずとし)
マサチューセッツ州立大学MBA。USCPA(米国公認会計士)。情報系の大学を卒業後、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。主にシステムインテグレーション関連のプロジェクトに従事する中で、製品やサービスに依存せず、顧客視点からの提案・支援を行いたいという思いが強くなり、コンサルティング業界への転職を決意。転職後は、IT関連のプロジェクトを中心に、業務改革や戦略策定など支援の範囲を広げ、様々な業界のクライアント様の課題解決に取り組んでいる。現在は、業界最大手のクライアント様の伴走支援を行い、上層部の方々が抱える難易度の高い課題に対し、これまで培ってきた知見やスキルを活かし、さまざまな視点から価値ある解決策を提供している。

目次
ESGは“商社の強み”にフィットするのか?
脱炭素は“新たな市場創造”の起点
“環境対応”を“利益モデル”に変える発想
なぜそれが可能なのか?── 商社のDNAを活かす
この分析にMBAの学びはどう活きるか?
まとめ── ESGを“利益構造”に転換する思考法


ESGは“商社の強み”にフィットするのか?

商社、とりわけ総合商社といえば、エネルギー・資源・インフラなど、“重厚長大”産業の中核を担ってきた存在。
とりわけ三井物産は、資源投資で世界展開してきた歴史を持ち、「脱炭素」というキーワードとは本来、対立する立場に見えるかもしれません。

しかし、現実の三井物産はまったく逆を行っています。

・化石燃料への依存度を計画的に減らし
・再生可能エネルギーに巨額投資を実施
・水素・アンモニア・カーボンリサイクルなど、新技術に先手で取り組む

つまり、“環境制約を、経営レバレッジに変える”企業へと進化しているのです。

脱炭素は“新たな市場創造”の起点

三井物産は、単に“排出量削減”を目指しているわけではありません。 彼らが本当に見ているのは、「脱炭素によって生まれる新たな価値連鎖」です。

主な取り組み領域:

・水素/アンモニア供給チェーン:海外での製造〜輸送〜活用までを自社で構築
・再生可能エネルギー投資:洋上風力、太陽光、バイオマス発電事業への資本投下
・CCUS(CO₂回収・貯留):産業排出源からの炭素回収・再利用を視野に
・サーキュラーエコノミー:廃棄物リサイクル、プラスチック循環モデルなどの事業化

これらは、単なる“環境コスト”ではなく、“成長市場”として設計されている点が特徴です。

“環境対応”を“利益モデル”に変える発想

多くの企業が脱炭素投資を「仕方なくやるESG対応」として捉える中、三井物産はそこに意事業性(リターン)を設計しています。

たとえば:

・水素インフラに関しては、製造・輸送・販売までをバリューチェーン化
・脱炭素ソリューション(CO₂排出量可視化・最適化システム)をSaaS化して提供
・サプライチェーン全体の脱炭素支援を、BtoBサービスとして展開中

MBAで言えば、これは「サステナブル戦略」×「新規事業開発」×「サービス化」の高度な統合。脱炭素を“理念”ではなく、“収益構造”として設計できる企業体になりつつあります。

なぜそれが可能なのか?── 商社のDNAを活かす

三井物産がこのような構造転換に成功している背景には、以下のような「商社ならでは」の強みがあります。

商社の伝統/span> サステナ戦略での活用法
グローバルネットワーク 再エネ開発地・供給拠点との協業・展開力
複数領域の知見 エネルギー×製造×流通のバリューチェーン設計力
投資・事業統括力 新規領域におけるP/L設計とガバナンス力
リスクテイク文化 長期投資前提の収益モデル構築力

つまり、「既存の力を、これからの課題に応用できている」というのが、他社との「構造的優位性」と言えるでしょう。

この分析にMBAの学びはどう活きるか?

三井物産のサステナブル経営は、以下のMBA分野に深く関わっています:

MBA分野 三井物産の対応事例
経営戦略論 カーボンニュートラルを機会と捉える戦略転換
サステナブル経営 ESGを“事業価値化”するモデル構築
新規事業開発 環境領域でのプラットフォーム/SaaS化の展開
組織設計論 長事業横断型のプロジェクト体制/専門人材の内製化

環境対応はもはやCSR(企業の社会的責任)ではなく、「未来の稼ぐ力」の源泉であることを、三井物産の事例は、“環境を収益源に変える戦略”の実例です。

まとめ── ESGを“利益構造”に転換する思考法

三井物産の取り組みは、「脱炭素だから仕方なくやる」の真逆を行くものです。

・社会課題を“自社の経営資源”と組み合わせ
・長期的成長と短期的収益を両立する設計を行い
・変化を“収益モデル”に組み込む

これは、今後すべての企業が求められる「社会変化を収益に変える構造的対応力」のひとつの理想像と言えます。

次回予告

次回第3回では、人材と組織の側面から、三井物産の変革を読み解きます。 “ゼネラリスト神話”を超えて、どのようにして“経営人材の育成”を実現しているのか?
その裏側に迫ります。

次の記事はこちら

【第3回】ゼネラリストを超えて“経営人材”へ、三井物産の人と組織の進化論

アビタスでは、国際認証を取得している「マサチューセッツ州立大学(UMass)MBAプログラム」を提供

国際資格の専門校であるアビタス(東京)が提供しているプログラムで、日本の自宅からオンラインで米国MBA学位を取得できます。

日本語で実施する基礎課程と英語で行うディスカッション主体の上級課程の2段階でカリキュラムが組まれているため、英語力の向上も見込めます。

世界でわずか5%のビジネススクールにしか与えられていないAACSB国際認証を受けており、高い教育品質が保証されているプログラムです。

自宅にいながら学位が取得できるため、仕事や家事と両立できる点も強みです。

アビタスでは無料のオンライン説明会と体験講義を実施しています。興味のある人はお気軽にお問い合わせください。

まずは無料の説明会にご参加ください。

合わせてお読みください

最近のエントリー