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  • 2025/08/06公開

【第1回】総合商社は“経営の最前線”へ、三井物産が挑む「脱・仲介」戦略とは──取引型から“事業経営型”へ。変わる商社の本質──

【第1回】総合商社は“経営の最前線”へ、三井物産が挑む「脱・仲介」戦略とは──取引型から“事業経営型”へ。変わる商社の本質──

【第1回】総合商社は“経営の最前線”へ、三井物産が挑む「脱・仲介」戦略とは

【第2回】脱炭素は“リスク”ではなく“収益源”、三井物産の逆転サステナ戦略

【第3回】ゼネラリストを超えて“経営人材”へ、三井物産の人と組織の進化論

【第4回】「変わり続ける経営体」はどう設計されるのか、三井物産の実践から学ぶ

この記事を書いた人

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山本 和敏(やまもと かずとし)
マサチューセッツ州立大学MBA。USCPA(米国公認会計士)。情報系の大学を卒業後、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。主にシステムインテグレーション関連のプロジェクトに従事する中で、製品やサービスに依存せず、顧客視点からの提案・支援を行いたいという思いが強くなり、コンサルティング業界への転職を決意。転職後は、IT関連のプロジェクトを中心に、業務改革や戦略策定など支援の範囲を広げ、様々な業界のクライアント様の課題解決に取り組んでいる。現在は、業界最大手のクライアント様の伴走支援を行い、上層部の方々が抱える難易度の高い課題に対し、これまで培ってきた知見やスキルを活かし、さまざまな視点から価値ある解決策を提供している。

目次
「総合商社=中間業者」の時代は終わった
商社が“経営する”時代へ──三井物産の投資ポリシー
なぜ転換できたのか?── 3つの内部要因
「リスクを取る商社」への進化
この変革にMBAの学びはどう活きるか?
まとめ──三井物産は「進化する経営体」である


「総合商社=中間業者」の時代は終わった

かつて、総合商社は「なんでも屋」と呼ばれていました。

・資源・食品・機械・化学品を世界中で調達・販売
・巨大な取引ネットワークと情報力が武器
・仲介・物流・ファイナンスの“橋渡し”役

しかし現在の三井物産は、もはや「モノを右から左に動かす企業」ではありません。“物流と資金の橋渡し役”を超えて、自ら価値を創るプレイヤーへと変貌しています。彼らが目指しているのは、“事業経営の主体”として、長期的価値を創出するビジネスグループ”です。

これは、単なる役割の変化ではなく、企業の「存在意義」そのものの変革といえます。

商社が“経営する”時代へ──三井物産の投資ポリシー

三井物産は2020年代以降、以下のような領域で“事業経営者”としての関与を深めています:

・ヘルスケア:日本国内外での医療機器・製薬企業への資本・経営参画
・モビリティ:EV・水素燃料関連事業に長期投資
・食料・農業:農業プラットフォームの開発と食品流通網の構築
・スタートアップ:米シリコンバレーや東南アジアでの先端技術企業への出資・支援

これらは、従来の「貿易・物流」中心モデルでは考えにくいものであり、明らかに“事業創造と経営支援”を自社のコア機能と位置づけている証拠です。

これはMBAで言う「事業ポートフォリオ経営(corporate portfolio management)」と「コーポレートベンチャリング」を融合したモデルといえるでしょう。

なぜ転換できたのか?── 3つの内部要因

三井物産の変革は偶然ではなく、意図的に設計された構造改革によるものです。

① セクター制から「P/L責任を伴う事業本部制」へ
従来の商材軸の組織を廃止し、「事業×地域」の組み合わせによるP/L責任体制へ再設計。これにより、意思決定が迅速化し、事業単位で経営判断が可能に。

② 社内人材の多様化と“経営者人材”の育成
“ジェネラリスト商社マン”から脱却し、戦略思考・事業運営スキル・デジタル素養を持った専門人材を登用。社内起業家・CXO人材を多数育成。

③ 中長期価値を重視したKPI設計
「今期の利益」ではなく、「投資回収期間」「社会インパクト」「顧客ロイヤルティ」など、長期軸の成果指標で評価される文化に移行。

このような取り組みが、従来の“手数料型ビジネス”からの脱皮を可能にしたのです。

「リスクを取る商社」への進化

三井物産の変化で最も象徴的なのは、“リスクを取る主体”としての立場を明確にしたことです

たとえば:

・鉱山・エネルギー開発では出資比率を高め、自らオペレーションに関与
・新興国での都市インフラ整備において、運営・収益管理までを担う
・スタートアップと共同で事業会社を設立し、P/L責任を共有

これは、単なる投資家ではなく、“経営当事者”としてのリスクとリターンの最適設計を行っていることを意味します。

MBA的にいえば、「事業投資(corporate venturing)」と「JV経営(joint venture governance)」の融合とも言える構造です。

この変革にMBAの学びはどう活きるか?

以下のMBA主要領域における“実践教材”として活用できます:

MBA分野 三井物産の対応事例
コーポレート戦略 コーポレート戦略 事業選択・資源配分・ポートフォリオ設計
ガバナンス論 投資先への関与レベル設計と経営統制
イノベーション経営 社内・社外ベンチャーとの連携による事業創出
ファイナンス 長期投資・ROIC管理・リスク評価モデル

つまり、総合商社の変革は、「学び」と「実務」をつなぐ絶好の教材となるのです。

まとめ──三井物産は「進化する経営体」である

本記事のキーメッセージは、「総合商社は“売る会社”から“経営する会社”に進化した」ということです。

従来の「なんでも屋」モデルを脱し、各事業で“専門性・経営力・リスク管理力”を武器に、持続可能な価値創出を行う企業群体となった今、三井物産はまさに“動く経営体”といえるでしょう。

こうした変革は、三井物産だけの話ではありません。VUCA時代において、あらゆる企業が“経営体としての自律性”を問われています。あなたの組織は、進化に挑む構造を備えていますか?

次回予告

次回第2回では、三井物産が挑戦する「カーボンニュートラル」戦略に焦点を当てます。
単なるESG対応を超えた、“脱炭素を利益に変える経営モデル”の裏側に迫ります。

次の記事はこちら

【第2回】脱炭素は“リスク”ではなく“収益源”、三井物産の逆転サステナ戦略

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