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【第4回】JALの未来と私たちへの教訓
目次
再建の先にある“第二の変革”
GX(グリーントランスフォーメーション)への挑戦
新需要の創出──観光立国との連動
デジタルと顧客体験の変革
JALの未来から得られる3つの教訓
MBAの学びとの接点
2012年の再上場を果たした日本航空(JAL)は、営業利益率で世界一を誇り、「奇跡の再建」と称される企業として国際的にも注目されました。再建のスピードと成果は確かに際立っており、一時は「世界で最も効率的なフルサービスキャリア」とまで評価されました。
しかし、時間が経つにつれて明らかになったのは、「再建=永続的競争優位ではない」という現実でした。航空業界そのものが大きな変動期を迎え、再建当時の強みだけでは持続的成長を保証できない状況に直面したのです。
LCC台頭の構造的インパクト
ピーチやジェットスター・ジャパンといった新興勢力が急速にシェアを伸ばし、価格志向の顧客層を取り込みました。フルサービス型のJALは「高品質・高価格」のビジネスモデルで差別化を試みたものの、市場のボリュームゾーンがLCCに移っていく中で、収益構造の再設計が避けられなくなりました。
コロナ禍が突きつけた脆弱性
2020年度には国際線旅客数が前年比96%減、売上高も65%減と、文字通り「需要蒸発」に直面しました。JALの強みだった効率経営も、外部ショックの前では限界があることが露呈し、「航空事業一本足打法」のリスクが顕在化しました。
こうした環境変化を踏まえ、現在のJALが直面しているのは「第二の変革」です。単なる再建型リストラではなく、事業ポートフォリオの多角化と新たな成長モデルの構築が求められています。
航空輸送に加え、マイレージ事業の拡張、旅行・地域活性化事業、カーボンニュートラル対応など、「空を超えた経営モデル」への転換が焦点となっているのです。
航空業界全体にとって避けられない課題が脱炭素化です。
航空機は世界のCO₂排出の約2〜3%を占めると言われ、社会的責任は大きい。
EUを中心に「持続可能な航空燃料(SAF)」の利用義務化が進む中、JALも2030年までに燃料の10%をSAFに置き換える目標を掲げています。
ボーイング787やエアバスA350といった省燃費機材の導入も加速。A350は従来機比でCO₂排出を約25%削減できるとされます。
GX対応は単なる環境課題ではなく、競争優位を左右する戦略課題に変わりつつあります。
日本政府は「観光立国」を成長戦略の柱に掲げ、2030年に訪日外国人6,000万人を目標としています。2019年のピーク時(約3,188万人)の約2倍という挑戦的な目標であり、この追い風を最大限に活かせるのが航空会社です。JALにとっても、これは再建後の持続成長を支える重要なチャンスになります。
国際線ネットワークの強化
コロナ後の需要回復を見据え、東南アジア・欧州路線の増便を進めています。特にASEAN諸国は中間層の拡大で訪日需要が高まり、タイ・ベトナム・フィリピンからの観光客は2019年比で2倍以上の増加ポテンシャルがあると予測されています。
ZIPAIRによる中長距離LCC戦略
子会社ZIPAIRは東京—ホノルル、ロサンゼルス、ソウル、バンコクなどを運航し、コストを抑えた中長距離フライトで新たな需要を開拓しています。フルサービスキャリアでは取りきれない「価格敏感層」を取り込み、インバウンド需要を広げる役割を担っています。
地域観光との連携強化
単なる輸送事業から脱却し、自治体や観光業者と連携したパッケージ型旅行サービスを展開。例として、北海道・九州など地域資源を活かした「航空券+宿泊+体験」の統合商品を提供することで、JAL自身が「旅行体験のプロデューサー」として付加価値を創出しようとしています。
観光政策とのシナジーを実現できれば、JALは単なる航空会社を超え、「日本ブランドのゲートウェイ」として世界からの観光需要を呼び込む役割を果たせる可能性があります。
次世代の航空会社にとって重要なのは「輸送業」から「顧客接点ビジネス」への転換です。
・アプリやマイレージを通じたデータ活用で顧客ロイヤルティを強化
・サブスクリプション型航空券「JAL全日空路線乗り放題実証」など、新サービスを試行
・顧客接点を「航空券販売」にとどめず、旅行、ライフスタイル、金融領域まで拡張
JALのこれまでの歩みとこれからを見据えると、私たちビジネスパーソンにとっても示唆は多いです。
① 再建はゴールではなく、変革の入り口にすぎない
環境変化は常に起こる。構造を変えた後も、継続的な再構築が求められる。
② 環境・社会課題は“制約”ではなく“戦略課題”
GX対応のような社会要請は、コストではなく競争優位の源泉にもなり得る。
③ 事業の本質の再定義
JALが「輸送業」にとどまるか、「顧客体験産業」へ進化するかで未来は大きく変わる。これはすべての企業に共通する問いかけです。
JAL事例からの学びをMBAの視点で整理すると以下の通りです。
| MBAの論点 | JAL事例からの学び |
|---|---|
| サステナビリティ戦略 | GXをコストでなく成長機会と捉える発想 |
| マーケティング論 | 顧客接点を「航空」から「旅行体験」へ拡張 |
| 経営戦略論 | 観光立国政策とのシナジーによる新市場創造 |
| イノベーション論 | 既存産業の再定義と新ビジネスモデル設計 |
MBAのフレームで捉えると、JALの未来は「制約対応型」ではなく「構造転換型」の挑戦だと位置づけられます。
JALの事例は、破綻・再建・成長停滞・そして再変革という「経営のライフサイクル」を一望できる格好の教材です。重要なのは、どんなに成功した再建でも、環境が変われば再び構造改革が必要になるということです。
次回は、また別の業界・企業の事例を取り上げていく予定です。あなた自身の現場と重ねながら、引き続き一緒に考えていきましょう。
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