本ウェブサイトでは、Cookieを利用しています。本ウェブサイトを継続してご利用いただく際には、当社のCookieの利用方針に同意いただいたものとみなします。

  • NEW
  • 2025/07/08公開

【第4回】任天堂に学ぶ、“競わず勝つ”経営の本質とは──独自価値で市場を創る企業の思考と設計──

【第4回】任天堂に学ぶ、“競わず勝つ”経営の本質とは──独自価値で市場を創る企業の思考と設計──

【第1回】なぜ任天堂は“競争しない”戦略を選ぶのか?

【第2回】ハードとソフトの“一体戦略”が任天堂を強くする

【第3回】任天堂が貫く「面白さ最優先」の組織文化とは

【第4回】任天堂に学ぶ、“競わず勝つ”経営の本質とは

この記事を書いた人

guest.jpg

山本 和敏(やまもと かずとし)
マサチューセッツ州立大学MBA。USCPA(米国公認会計士)。情報系の大学を卒業後、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。主にシステムインテグレーション関連のプロジェクトに従事する中で、製品やサービスに依存せず、顧客視点からの提案・支援を行いたいという思いが強くなり、コンサルティング業界への転職を決意。転職後は、IT関連のプロジェクトを中心に、業務改革や戦略策定など支援の範囲を広げ、様々な業界のクライアント様の課題解決に取り組んでいる。現在は、業界最大手のクライアント様の伴走支援を行い、上層部の方々が抱える難易度の高い課題に対し、これまで培ってきた知見やスキルを活かし、さまざまな視点から価値ある解決策を提供している。

目次
任天堂は「変わらずに、変わり続ける」会社
企業の強さは「競争戦略」だけでは決まらない
任天堂の経営に見る“三位一体”の変革構造
任天堂から得られる、ビジネスパーソンへの3つの示唆
なぜMBAの学びが任天堂理解に活きるのか?
終わりに──「任天堂的視点」を自分の仕事に活かすには


“競争しない企業”は本当に強いのか?
任天堂の経営は、この問いに一つの答えを示しています。

任天堂は「変わらずに、変わり続ける」会社

これまで3回にわたり任天堂を分析してきました。印象的だったのは、彼らが一貫して追い求めているのは「面白さ」であり、それを実現するためには何を変えてもいいという柔軟さです。

・競争を避けて市場を創造する(戦略)
・ハードとソフトを一体設計する(構造)
・面白さで組織を動かす(文化)

任天堂は、これらを自社の“らしさ”として再定義し、再現性のある設計思想に昇華(誰でも説明・再現できる戦略として明文化されている)させています。

企業の強さは「競争戦略」だけでは決まらない

MBAでは「競争戦略」が主要テーマになりますが、任天堂はそれとは異なる視点から強さを築いてきた企業です。

・ハイスペック競争を避け、体験で差別化
・他社との比較でなく、ユーザーの感情にフォーカス
・数字で測れない「楽しさ」に投資

つまり、戦うのではなく、土俵そのものを変えてしまう。これが任天堂の基本思想であり、「ポジショニングではなく価値創造」に軸足を置いた経営です。

任天堂の経営に見る“三位一体”の変革構造

本シリーズで扱ったように、任天堂の変革は単一の側面では語れません。むしろ以下の三要素が連動しているからこそ、持続的な成果が生まれているのです。

領域 特徴
戦略 土俵を変える(競争を避けるブルーオーシャン型)
構造 ハード×ソフトの一体開発で体験を制御
文化 面白さを最優先にするプロジェクト型・現場裁量の文化

これらが相互補完的に機能しており、「どれが重要か」ではなく「すべてを揃える設計力」こそが任天堂の競争力です。

任天堂から得られる、ビジネスパーソンへの3つの示唆

① “競わない”という選択肢もある
任天堂は、スペック競争が激化するゲーム業界の中で、真っ向勝負を避けてきた数少ない企業です。たとえば、PlayStationやXboxが「高性能・高グラフィック」に投資する中、任天堂は「Wii」や「Switch」のように、スペックを抑えながらも“体験”に重きを置いた戦略を展開しました。

この姿勢は、ビジネスパーソンにも通じるものがあります。自社や自分が「リソースに劣る」「技術で勝てない」と感じたとき、正面から戦うことが唯一の選択肢ではありません。むしろ、「自分にしかない価値」「ユーザーが本当に困っていること」に寄り添うことで、“競争しない戦い方”が可能になるのです。

② ユーザー価値はスペックや数値で測れない
任天堂が追い求めているのは、CPUの処理速度や解像度の高さではありません。彼らが重視するのは、“驚き”や“笑顔”といった感情価値です。『どうぶつの森』や『スプラトゥーン』のように、数値では評価しにくい「プレイヤー同士の関係性」「遊び方の多様性」を生み出す設計が評価されています。

ビジネスの現場でも、提案書やKPIに表れない“感覚的な価値”を扱えるかどうかが競争力になる場面は多くあります。数字やスペックに表れない、“その人が本当に望んでいること”を言語化し、形にして届ける力。これは、プロダクトだけでなく、営業、プレゼン、社内調整などあらゆる場面で求められる力です。

③組織文化は戦略と構造を支える“見えない力”
任天堂は、社風そのものに「遊び心」や「ユーザー目線」が根付いています。たとえば、社内では「社長が社員にゲーム開発の提案を求める」という文化もあり、現場の発想を大切にする風土があることが知られています。これは、単なる制度やルールではなく、日々の会話、評価のされ方、働く人の態度といった“目に見えない行動様式”の積み重ねです。どんなに戦略が良くても、文化が現場と乖離していれば、実行に移されることはありません。

ビジネスパーソンにとっても、「戦略を考える力」だけでなく、「日常の行動がどう文化に影響し、組織を動かすか」を意識することが、リーダーシップに直結します。

まずは無料の説明会にご参加ください。

なぜMBAの学びが任天堂理解に活きるのか?

任天堂のような企業を深く理解するには、表面的な製品情報やニュースだけでは不十分です。戦略・構造・文化を“構造的に捉える力(全体を俯瞰する視点)”が必要です。

MBA領域 任天堂との接点
経営戦略論 ブルーオーシャン・非価格競争・ポジショニング理論
組織設計論 一体型運営、プロジェクト組織、開発体制設計
組織行動論 文化の醸成、失敗容認、行動変容の仕組み
イノベーション論 意味の再構築、顧客体験起点の価値創出

MBAの学びは、こうした企業事例を“理論で読み解く”だけでなく、“実務で応用する”力を与えてくれます。

終わりに──「任天堂的視点」を自分の仕事に活かすには

あなたの業務やチームにも、任天堂的視点は応用できます。

・「競合はどうしてるか?」より「自分たちがどうしたいか?」
・「数字を伸ばす」より「顧客が感動する体験は何か?」
・「何を変えるか?」より「何を守りながら進化するか?」

このような問いを日々の意思決定に組み込むだけで、経営視点が大きく変わります。任天堂のように「何を変え、何を守るか」を問い続けることが、実は一番の競争優位なのかもしれません。

次回は、また別の業界・企業の事例を取り上げていく予定です。あなた自身の現場と重ねながら、引き続き一緒に考えていきましょう。

アビタスでは、国際認証を取得している「マサチューセッツ州立大学(UMass)MBAプログラム」を提供

国際資格の専門校であるアビタス(東京)が提供しているプログラムで、日本の自宅からオンラインで米国MBA学位を取得できます。

日本語で実施する基礎課程と英語で行うディスカッション主体の上級課程の2段階でカリキュラムが組まれているため、英語力の向上も見込めます。

世界でわずか5%のビジネススクールにしか与えられていないAACSB国際認証を受けており、高い教育品質が保証されているプログラムです。

自宅にいながら学位が取得できるため、仕事や家事と両立できる点も強みです。

アビタスでは無料のオンライン説明会と体験講義を実施しています。興味のある人はお気軽にお問い合わせください。

まずは無料の説明会にご参加ください。

合わせてお読みください

最近のエントリー