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  • 2025/07/08公開

【第2回】ハードとソフトの“一体戦略”が任天堂を強くする──「設計・製造・体験」をすべて握る経営モデルの真髄──

【第2回】ハードとソフトの“一体戦略”が任天堂を強くする──「設計・製造・体験」をすべて握る経営モデルの真髄──

【第1回】なぜ任天堂は“競争しない”戦略を選ぶのか?

【第2回】ハードとソフトの“一体戦略”が任天堂を強くする

【第3回】任天堂が貫く「面白さ最優先」の組織文化とは

【第4回】任天堂に学ぶ、“競わず勝つ”経営の本質とは

この記事を書いた人

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山本 和敏(やまもと かずとし)
マサチューセッツ州立大学MBA。USCPA(米国公認会計士)。情報系の大学を卒業後、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。主にシステムインテグレーション関連のプロジェクトに従事する中で、製品やサービスに依存せず、顧客視点からの提案・支援を行いたいという思いが強くなり、コンサルティング業界への転職を決意。転職後は、IT関連のプロジェクトを中心に、業務改革や戦略策定など支援の範囲を広げ、様々な業界のクライアント様の課題解決に取り組んでいる。現在は、業界最大手のクライアント様の伴走支援を行い、上層部の方々が抱える難易度の高い課題に対し、これまで培ってきた知見やスキルを活かし、さまざまな視点から価値ある解決策を提供している。

目次
なぜ任天堂は“自前主義”にこだわるのか?
Switchに見る“体験主導設計”の思想
IPとソフト開発力が“ハード”を引っ張る
なぜ「ソフト単独売り」に走らないのか?
「垂直統合戦略」のメリットと課題
この分析にMBAの学びはどう活きるのか?

なぜ任天堂はハードもソフトも“全部自社”にこだわるのか?
その非効率に見える戦略の裏には、体験を重視する哲学があります。

なぜ任天堂は“自前主義”にこだわるのか?

任天堂は、ゲーム機(ハード)を自社開発し、その上で動くゲームソフト(ソフト)も多くを自社で制作しています。

これは一般的なエンタメ業界やIT業界の常識と逆行しており、「分業化・外注・パートナー戦略」が主流の現代においては珍しい構造です。

しかし、この“ハードとソフトの一体戦略”こそが、任天堂の競争優位の本質です。
なぜなら、「ユーザー体験の全体設計」を自社で完結できるからです。

Switchに見る“体験主導設計”の思想

Switchの最大の特徴は、据え置きと携帯という2つのプレイスタイルを1つに統合したハードです。この発想は、従来の市場調査やスペック思考では生まれにくいものでした。なぜなら、顧客が「こういうゲーム機が欲しい」と言ったわけではないからです。

任天堂は、ユーザーの「使われ方」や「遊び方」に徹底的に向き合い、ハードウェア自体を“遊びの一部”として設計しました。

これは、MBAで言うデザイン思考(Design Thinking)やサービス・ドミナント・ロジック(“モノではなく体験そのものが価値”という考え方)に近く、「製品」ではなく「体験価値」の提供が目的となっています。

IPとソフト開発力が“ハード”を引っ張る

任天堂のもう一つの強みは、自社開発によるソフトの強さと知的財産(IP)です。

・マリオ、ゼルダ、ポケモン、どうぶつの森などの定番IP
・ゲーム体験そのものを革新するソフト設計(例:リングフィット、スプラトゥーン)
・ソフトウェアに最適化されたハード仕様(例:Joy-Conの振動や傾き検知)

つまり、ゲームソフトが単なるコンテンツではなく、ハードを進化させる起爆剤となっているのです。この関係性は、MBA的にいえば「垂直統合によるバリューチェーン制御(すべてを自社でつなげる設計)」です。任天堂は、顧客体験の上流から下流までを一体で管理できる体制を持つことで、UXを設計する力=競争優位を手にしているのです。

なぜ「ソフト単独売り」に走らないのか?

他社の多くは、プラットフォームは外部依存し、ソフトだけで利益を追求します。一方、任天堂はハードとソフトをセットで開発・販売し、常に一体運用しています。

この理由はシンプルです。

・ハードごとに「遊びの体験」を再定義できる
・ソフトによってハードの価値を高められる
・売上構造を「ハード+ソフト+IPライセンス」にできる

任天堂はハードで収益を得るだけでなく、ユーザーの時間と習慣を獲得し、長期的なブランド接点を持つことに価値を見出しています。この考え方は、Appleのエコシステムと似ており、製品そのものがプラットフォーム化しているのです。

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「垂直統合戦略」のメリットと課題

MBAで学ぶように、垂直統合には大きなメリットがありますが、同時にリスクも伴います。

メリット デメリット
顧客体験の完全コントロール 投資コストが大きく、固定費が重い
プラットフォーム独自化が可能 成功には“両方”の開発力が必要
IP・ブランドとの連携強化 自社での失敗が全体に波及する

任天堂はこのバランスをとりながら、慎重かつ独創的に経営判断を下している点が特筆に値します。

この分析にMBAの学びはどう活きるのか?

任天堂の一体型経営モデルは、MBAで学ぶ多くの視点と交差しています。

MBA分野 任天堂事例との接点
バリューチェーン分析 開発から販売、IP活用までを一気通貫で設計
プラットフォーム戦略 ハード=基盤、ソフト=アプリ層として機能させる思考
デザイン思考 顧客視点で「体験」から製品を逆設計する力
戦略的統合 差別化の手段としての自前主義の是非と設計

任天堂の強みは、単に「すべてを自社でやること」ではなく、すべてを“設計思想の中で連動させる”ことにあります。

次回予告

次回第3回では、「任天堂らしさ」を支える組織文化・開発体制・人材思想に焦点を当てます。「面白さを最優先にする組織」は、どうすれば実現できるのか?次回もぜひご覧ください!

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