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  • 2025/07/24公開

【第2回】IPとテクノロジーを融合する「ソニーのプラットフォーム戦略」── 映画、音楽、ゲームをつなぐ経営モデルの進化──

【第2回】IPとテクノロジーを融合する「ソニーのプラットフォーム戦略」── 映画、音楽、ゲームをつなぐ経営モデルの進化──

【第1回】なぜソニーは「家電メーカー」から脱皮できたのか?

【第2回】IPとテクノロジーを融合する「ソニーのプラットフォーム戦略」

【第3回】“統合しない強さ”、ソニーの組織文化と経営統制

【第4回】ソニーに学ぶ「多角化の成功条件」

この記事を書いた人

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山本 和敏(やまもと かずとし)
マサチューセッツ州立大学MBA。USCPA(米国公認会計士)。情報系の大学を卒業後、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。主にシステムインテグレーション関連のプロジェクトに従事する中で、製品やサービスに依存せず、顧客視点からの提案・支援を行いたいという思いが強くなり、コンサルティング業界への転職を決意。転職後は、IT関連のプロジェクトを中心に、業務改革や戦略策定など支援の範囲を広げ、様々な業界のクライアント様の課題解決に取り組んでいる。現在は、業界最大手のクライアント様の伴走支援を行い、上層部の方々が抱える難易度の高い課題に対し、これまで培ってきた知見やスキルを活かし、さまざまな視点から価値ある解決策を提供している。

目次
ソニーは“ハードの会社”ではなくなった
IPとは「経営資産」である
なぜ「縦割り」ではなく「融合」に成功したのか?
テクノロジーが支える「エンタメ体験の高度化」
サブスクリプションで“接点”を取りにいく戦略
この戦略にMBAの学びはどう活きるか?


“ゲーム会社”に見えるソニーの真の強みは、“IP × テクノロジー”で“体験を束ねる力”にあります。

ソニーは“ハードの会社”ではなくなった

前回の記事で、ソニーが「家電メーカー」から脱皮し、IP・エンタメ・半導体・金融を中核に据えた多角経営体へと変化したことを解説しました。では、その中でも特に注目すべき領域は何か?

答えは、「IP(知的財産)とテクノロジーの融合によるプラットフォーム戦略」です。

もはやソニーは、製品(プロダクト)ではなく体験(エクスペリエンス)で勝負する企業となっており、ゲーム・音楽・映画・アニメといったエンタメ領域で、自社IPを軸に複数事業を連携させる経営モデルを実現しています。

IPとは「経営資産」である

ソニーが所有するコンテンツIPは、世界でも有数の規模と質を誇ります。

・映画:『スパイダーマン』『ヴェノム』など(ソニー・ピクチャーズ)
・音楽:Adele、YOASOBIなど(ソニー・ミュージック)
・ゲーム:『ゴッド・オブ・ウォー』『ラスト・オブ・アス』(PlayStation Studios)
・アニメ:アニプレックス(『鬼滅の刃』など)

これらのIPは、ソフトウェア(コンテンツ)としての価値だけでなく、他領域へ展開できる“再利用性”と“継続収益性”を持った資産です。

つまり、IPは一度ヒットすれば、その後も映画化・ゲーム化・配信・音楽展開などで長期的にキャッシュを生み出す“ストック型”のビジネス資源となります。

なぜ「縦割り」ではなく「融合」に成功したのか?

一般的に、大企業が映画・音楽・ゲームといった複数のメディア領域を抱えると、各事業が“縦割り”になりがちです。しかしソニーは、以下のような仕組みで事業横断の統合を促進しています。

・統一された経営メッセージ:「IPは会社の核」(売り切り型ではなく“継続収益を生む資産”として扱う視点)
・クロスプロジェクトの推進:例)ゲーム→映画→アニメとメディアミックス展開
・グループ内での人的・技術的連携(例:モーションキャプチャ技術の共有)

これにより、たとえば『ラスト・オブ・アス』のようなタイトルがゲームからHBOドラマへと展開され、ブランド価値を飛躍的に高めるといった好循環が実現しています。

テクノロジーが支える「エンタメ体験の高度化」

ソニーの強みは、単にコンテンツを持っていることではありません。そこにテクノロジーとデバイスの力が掛け算されることで、“体験の質”が圧倒的に高まるのです。

・ゲーム:PlayStation 5の高性能ハードによる没入体験
・音楽:360 Reality Audio(立体音響)での音楽新体験
・映像:イメージセンサー技術での高精細映像制作支援
・VR/AR:PlayStation VRによるインタラクティブな没入型メディア

これらは、「作品」だけでは成し得ない“体験価値”の設計であり、ソニーが“体験プラットフォーマー”(作品を超えて、継続的に体験を提供する仕組みを構築する企業)として進化している証拠です。

サブスクリプションで“接点”を取りにいく戦略

近年、ソニーは「接点の確保」にも積極的です。単なるヒット作ではなく、顧客との継続的な関係構築=プラットフォーム化を重視しています。

・PlayStation Plus:定額制でゲーム提供+クラウドセーブなどを提供
・Crunchyroll(アニメ配信):世界最大規模のアニメ専門配信サービスを買収
・高品質な音楽サブスクや配信支援機能(ソニー・ミュージック)

これにより、一度コンテンツに触れたユーザーが、長期的にソニーの“経済圏”にとどまり続ける仕組みが整備されつつあります。

この戦略にMBAの学びはどう活きるか?

ソニーの「IP × テクノロジー」戦略は、MBAで学ぶ複数分野にまたがる総合戦略です。

MBA分野 ソニーとの接点
プラットフォーム戦略 コンテンツを軸とした“多面的接点設計”
経営戦略論 垂垂直統合と事業横断で競争優位を強化
イノベーション戦略 テクノロジーとIPを融合させた体験革新
顧客戦略 “所有”から“継続接点”への戦略転換(サブスク化)

“面白い作品”を生む企業ではなく、“顧客との関係性”を経営資源と捉え直す企業としてのソニーは、まさにMBA的に語る価値のあるモデルです。“商品を売る”から、“体験と関係を売る”へ。ソニーの進化は、私たち自身のサービス設計にもヒントを与えてくれます。

次回予告

次回第3回では、「ソニーの組織文化と経営統制」に焦点を当てます。なぜ、ここまで多様な事業が“自立しつつ協調”できるのか?分社化と経営哲学、現場と本社の絶妙な関係性に迫ります。次回もぜひご覧ください!

次の記事はこちら

【【第3回】“統合しない強さ”、ソニーの組織文化と経営統制

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