本ウェブサイトでは、Cookieを利用しています。本ウェブサイトを継続してご利用いただく際には、当社のCookieの利用方針に同意いただいたものとみなします。

  • 2025/07/23公開

【第1回】なぜソニーは「家電メーカー」から脱皮できたのか?── 事業再編と収益構造の変革に見る経営のリアル──

【第1回】なぜソニーは「家電メーカー」から脱皮できたのか?── 事業再編と収益構造の変革に見る経営のリアル──

【第1回】なぜソニーは「家電メーカー」から脱皮できたのか?

【第2回】IPとテクノロジーを融合する「ソニーのプラットフォーム戦略」

【第3回】“統合しない強さ”、ソニーの組織文化と経営統制

【第4回】ソニーに学ぶ「多角化の成功条件」

この記事を書いた人

guest.jpg

山本 和敏(やまもと かずとし)
マサチューセッツ州立大学MBA。USCPA(米国公認会計士)。情報系の大学を卒業後、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。主にシステムインテグレーション関連のプロジェクトに従事する中で、製品やサービスに依存せず、顧客視点からの提案・支援を行いたいという思いが強くなり、コンサルティング業界への転職を決意。転職後は、IT関連のプロジェクトを中心に、業務改革や戦略策定など支援の範囲を広げ、様々な業界のクライアント様の課題解決に取り組んでいる。現在は、業界最大手のクライアント様の伴走支援を行い、上層部の方々が抱える難易度の高い課題に対し、これまで培ってきた知見やスキルを活かし、さまざまな視点から価値ある解決策を提供している。

目次
もはや「家電メーカー」ではない、ソニーの現在地
収益構造の根本的な入れ替え
“製造のソニー”から“IPとテックのソニー”へ
グループ経営と持株会社化による意思決定の再設計
ソニーから得られる3つの経営学的視点
この分析にMBAの学びはどう活きるか?


ソニーといえば“家電”の会社だと思っていませんか?でも今のソニーの稼ぎ頭は、実はゲーム・映像・金融です。

もはや「家電メーカー」ではない、ソニーの現在地

「ソニー」と聞くと、あなたは何を思い浮かべますか?テレビ?ウォークマン?それともプレイステーション?かつてソニーは、家電製品を象徴とする日本の“ものづくり”の顔でした。しかし、2020年代のソニーは、もはや家電メーカーではなく、IP・テクノロジー・ファイナンスの複合経営体へと進化しています。

主な事業セグメント 特徴
ゲーム&ネットワークサービス PlayStation事業
収益の柱であり、サブスクモデルへ移行中)
映画・音楽 ソニー・ピクチャーズ、ソニー・ミュージック等
IP保有・配信に強み
半導体 イメージセンサー世界首位
スマホ・カメラ・車載向けに展開
金融 ソニーフィナンシャル
保険・銀行を中心としたストック型事業

この変貌の裏にあるのは、「選択と集中」による構造的な収益改革と、未来志向の経営判断です。

収益構造の根本的な入れ替え

ソニーは2000年代、業績不振と経営迷走に苦しみました。テレビ事業の赤字、ハード偏重、世界競争の激化……。

そのなかで行われた大転換が、ハード依存から“IPとストックビジネス”への移行でした。

・利益を生まないテレビ・PCからは撤退・縮小
・一方、ゲーム・音楽・映画はIPとサブスク収入で利益率が高い
・金融事業(生命保険・ネット銀行)も安定収益源として確立

結果として、2010年代後半からは「売上より利益で語れる企業」に変貌。営業利益の大半をエンタメと半導体が占めるようになりました。

これは、MBA的に言えば事業ポートフォリオのリバランス(再設計)による「経営資源の再配分」と定義できます。

“製造のソニー”から“IPとテックのソニー”へ

従来のソニーは、「すごい製品を作る会社」でした。ウォークマンやトリニトロンブラウン管テレビなど、イノベーションの代名詞的存在です。

しかし現在のソニーは、体験やストーリーを“IP”として提供(キャラクターや作品世界を、繰り返し商品化・映像化して提供する仕組み)し、それをテクノロジーで支える企業構造に移行しています。

・ゲームでは、ハード売上よりもPS Plusなどのサービス課金が重視される
・映画・音楽では、配信やリメイクによりIPが“繰り返し稼ぐ資産”になる
・イメージセンサーでは、スマホの進化に伴い非家電領域への拡大が進む

この構造変化は、MBAで学ぶ「バリューチェーン再構築」や「ビジネスモデル転換」の代表例といえます。

グループ経営と持株会社化による意思決定の再設計

2021年、ソニーは「ソニー株式会社」から「ソニーグループ株式会社」へ社名変更し、持株会社制に移行しました。これは単なる名称変更ではなく、“戦略本社と事業会社の分離”によって、経営の質を上げる構造改革でした。

Before After
本社が事業オペレーションに深く関与 各事業会社が独立採算で迅速判断
経営資源配分が重複 本社が資本配分とM&Aに集中

この移行により、グループ全体がポートフォリオマネジメントで動く“自走型経営”へと進化しました。

ソニーから得られる3つの経営学的視点

① 「全体最適」と「部分自立」を両立させる設計力
複合事業を束ねる上で、“支配しすぎず、放任しない”絶妙な統治構造が鍵となる。

② 利益構造は戦略で変えられる
不採算事業の整理と成長領域へのシフトで、収益体質を根本から変えることは可能。

③ ブランドとは「変わり続ける力」そのもの
製品が変わっても、“らしさ”が残る。その柔軟性こそがブランドの本質。ウォークマンの会社ではなくなっても、“創造的であること”を守れば、ブランドは持続できる。

この分析にMBAの学びはどう活きるか?

ソニーの変革は、MBAで学ぶ以下の領域と深く結びついています:

MBA分野 ソニーとの接点
経営戦略論 コア事業の見直し、事業ポートフォリオの再構成
組織設計論 持株会社制への移行、グループ経営の設計
財務戦略 不採算事業の撤退、成長投資への資源配分
ブランド戦略 技術主導からIP・体験主導へのブランド進化

こうした知識があることで、「なぜソニーはあのタミングでその決断をしたのか?」を構造的に理解できるようになります。変化の時代にこイそ、“見えない構造”を読み解く力が、経営を動かすヒントになります。

次回予告

次回第2回では、IP × テクノロジーの融合戦略をテーマに、ゲーム・映画・音楽をつなぐ「メディア・プラットフォーム経営」の深層に迫ります。次回もぜひご覧ください!

次の記事はこちら

【第2回】IPとテクノロジーを融合する「ソニーのプラットフォーム戦略」

アビタスでは、国際認証を取得している「マサチューセッツ州立大学(UMass)MBAプログラム」を提供

国際資格の専門校であるアビタス(東京)が提供しているプログラムで、日本の自宅からオンラインで米国MBA学位を取得できます。

日本語で実施する基礎課程と英語で行うディスカッション主体の上級課程の2段階でカリキュラムが組まれているため、英語力の向上も見込めます。

世界でわずか5%のビジネススクールにしか与えられていないAACSB国際認証を受けており、高い教育品質が保証されているプログラムです。

自宅にいながら学位が取得できるため、仕事や家事と両立できる点も強みです。

アビタスでは無料のオンライン説明会と体験講義を実施しています。興味のある人はお気軽にお問い合わせください。

まずは無料の説明会にご参加ください。

合わせてお読みください

最近のエントリー