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アビタス代表の宇坂純はこのほど、米国公認会計士(USCPA)試験の運営管理を担っている全米州政府会計委員会(NASBA:National Association of State Boards of Accountancy)のCEOダニエル・J・ダスティン氏と米国で会談しました。
宇坂:本日はお時間をいただきありがとうございます。
この数年間で、大きな変化と進展があったと実感しております。なかでも「CPAエボリューション」は、米国のみならず日本においても非常に大きな変化であり進展でした。アビタスにとっても大きなチャレンジではありましたが、日本のUSCPA受験者にとって必要不可欠な教材・サービスを提供し続けることができたと自負しております。その結果、アビタスから多くのUSCPA合格者が輩出され、大変嬉しく思っております。
先日、NASBAから発行された「Candidate Performance Book(受験者実績レポート)」最新版を入手し日本在住のUSCPA合格者数を分析したのですが、合格者の実に約8割がアビタスの受講生であることが明らかになりました。
この結果に大きな誇りを感じるとともに、今後も質の高い教育サービスを日本の皆様に提供していく責任を強く感じております。
ダスティン氏:私たちのチームにとっても、私自身にとっても、アビタスの取り組みについて理解を深める貴重な機会となりました。
多くの方々がUSCPA試験に合格されているとのこと、大変素晴らしい成果ですね。
宇坂:ありがとうございます。では、さっそくインタビューに入らせていただきます。最初の質問は、「CPAエボリューション」に関するものです。
2024年1月から新試験制度が開始されて、すでに1年3か月が経ちました。NASBAでは現在、「CPAエボリューション」の取り組みについて、どのような評価・レビューをされているのでしょうか?
「CPAエボリューション」開発時に使用された調査結果等に基づいて評価をされているのか、それとも受験者数や選択科目の変化など、より現在の状況を踏まえた視点も評価・レビューに加えられているのでしょうか?
また、当初の目的は順調に達成されているのか、あるいは予想外の課題が生じているのか、現時点での所見をお聞かせください。
ダスティン氏:2024年1月(※訳注:「CPAエボリューション」開始)は、5年にわたるCPA試験再構築プロジェクトの最終段階でした。新試験制度導入に伴い、受験者数が一時的に急増し、その後、急減するという現象は今回も過去の試験制度改訂時と同様の傾向でしたので、特に驚きはありませんでした。
試験制度改定により、多くの受験者が「様子見」の姿勢を取ったため、最初はやや慎重な動きが見られましたが、ここ4~5回の受験期間を分析してみると、受験者数は着実に増加しています。この傾向が続くことを期待しています。
NASBAでは、受験者数を常時モニタリングしています。これは受験会場の確保や試験内容の見直しに役立てるためです。
幸いにも、試験における重大なトラブルや予期せぬ問題は発生しておらず、旧試験制度から「CPAエボリューション」への移行は非常にスムーズに行われました。
宇坂:それは素晴らしいことですね。長期にわたるプロジェクトが無事に完了されたこと、本当におめでとうございます。
宇坂:次に、USCPA試験の将来的な方向性についてお伺いします。
「CPAエボリューション」において、ISC(情報システム及び統制)およびTCP(税務遵守及び税務計画)の導入は、近年の技術進展を反映していると理解しています。
一方で、AIの活用により、従来の会計業務の多くが自動化される流れも見られます。こうした変化をNASBAとしてはどのように捉えておられますか?
また、AIなどの技術革新が今後のUSCPA試験の内容や構成に影響を与える可能性について、どのようにお考えでしょうか?
ダスティン氏:NASBAでは、AI技術がどのように業務に活用できるかについて、内部でガイドラインを整備し、継続的に検討しています。
USCPA試験の内容については、AICPA(米国公認会計士協会)が定期的に実施する「実務分析(Practice Analysis)」に基づいて決定されています。直近の分析は「CPAエボリューション」への制度移行検討中の2020〜2021年に実施されました。したがって、次回の実務分析が行われるまで、AI関連を含む試験内容の変更はいまのところ予定されていません。
とはいえ、AIが会計業務に与える影響は大きく、業界内でも注目されています。次回の実務分析では、会計事務所や実務家へのインタビューも行い、新たに求められるスキルや知識が評価されることになっています。
その時点で、AIが会計実務に不可欠なものと認識されていれば、将来的に試験内容にも反映されることになるでしょう。
宇坂:ありがとうございます。次の質問も関連する内容になります。
ESG(環境・社会・ガバナンス)やサステナビリティに対する関心が世界的に高まっており、企業評価の新たな基準になりつつあります。
NASBAとして、今後ESGやサステナビリティが米国公認会計士の役割においてより重要な要素になるとお考えでしょうか?
また、それらの要素が今後、USCPA試験に取り入れられる可能性についてもお聞かせください。
ダスティン氏:ESGはまさに今、世界的に注目されているテーマの一つです。
米国では、連邦政府および州政府の両方がESGに関心を持っています。SEC(米国証券取引委員会)もESG関連の規則を提案していましたが、現在は保留となっています。
現時点では、連邦レベルでの義務化は進んでいませんが、グローバルに展開する会計事務所などは、すでに導入が進んでいる国のESG基準に対応する必要があります。
また、カリフォルニア州のように、州レベルでESG報告を義務づけた動きもあります。
USCPA試験への反映については、AIと同様、将来の実務分析で判断されます。新たにライセンスを取得するCPAに求められるスキルの一部となれば、試験内容にも盛り込まれる可能性があります。
宇坂:ありがとうございます。それでは、最後の質問のテーマとして、USCPAのグローバル化についてお伺いします。
昨年のNASBAが発行した「Candidate Performance Book(受験者実績レポート)」を見ると、インドにおける受験者数がこの数年で大きく増加していることが分かります。
このような状況を踏まえ、USCPAの今後のグローバル展開について、NASBAとしての方針や戦略をお聞かせいただけますか?
ダスティン氏:AICPAと連携しながら、私たちは常にUSCPA試験に対する国際的なニーズの有無を評価しています。ある国でニーズがあると判断されれば、特定の検討ルールに従って、その国で試験を提供すべきかどうかを検討します。
ご指摘のとおり、最近インドへの展開を行い、大きな受験者数の伸びを確認しています。現在検討中の国もいくつかありますが、近い将来に大規模な拡大を予定しているわけではありません。将来的な拡大計画はありますが、段階的に進める予定です。
興味深い点として、USCPA試験は基本的にエントリーレベルの受験者を対象としているため、(※訳注:各国においても)会計業界へ入るための一般的な入り口となっている点が挙げられます。
一方で、NASBAとは相互認証協定(MRA)を締結している国々もあり、それらの国とは、すでに自国で資格やライセンスを保有している方に対して、米国のCPAライセンス取得を支援しています。
この場合、受験者は国際版のUSCPA試験を受けます。通常版と少し異なる形式になっています。MRAのもとでは、すでに母国で資格を有する方が米国のライセンスを取得することを目的としています。
USCPA試験の国際展開については、先ほども申し上げた通り、今後さらにいくつかの国での展開を検討中です。引き続き、各国の需要を見ながら柔軟に対応してまいります。
宇坂:すぐに対応が必要ということではありませんが、今後USCPA試験の提供国が増えていく中で、ますます、各国の会計資格との相互認証の必要性も高まっていくと考えています。
ダスティン氏:この点についても、まずは需要の評価から始めます。具体的には、他国の会計士資格保有者のうち、どれだけの方が米国のCPA資格を取得したいと考えているか、またその価値はどれほどかを見極めます。それによって、MRA(相互認証協定)を検討すべきかどうかを判断します。
私たちは、資格の完全な一致ではなく、共通点を見つけることに重点を置いています。教育内容や実務経験など、各国の要件が米国のライセンス要件とどの程度一致しているかを評価します。
その結果、相互に認め合えると判断されれば、MRAを締結することになります。
宇坂:ありがとうございます。それでは最後の質問です。
USCPA資格およびアメリカという国そのものの価値を、グローバルに、特に日本など海外に広めていくための方針についてお伺いします。NASBAでは、これに関して何らかの具体的な取り組みをすでに始められているのでしょうか?
ダスティン氏:AICPAと連携し、USCPA資格の海外展開を進めていく上で、どのような取り組みが必要かを検討しています。
AICPAでは現在、USCPA資格に対する関心が高まっている地域を対象に、複数のグローバル施策を展開しています。これらの地域では、資格の認知度を高めるためのプロモーション活動などが進められており、今後も関心の高まりとともに、さらに展開が進んでいくものと見込んでいます。
宇坂:本日は貴重なお時間をいただき、本当にありがとうございました。