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  • 2026/04/08公開
  • 2026/05/14更新

【第2回】三菱重工業の技術戦略とイノベーション創出──「巨大企業で、なぜ技術革新は可能なのか」──

【第2回】三菱重工業の技術戦略とイノベーション創出──「巨大企業で、なぜ技術革新は可能なのか」──

【第1回】三菱重工業の概要と事業ポートフォリオ改革

【第2回】三菱重工業の技術戦略とイノベーション創出

【第3回】三菱重工業のグローバル展開と地政学リスク

【第4回】三菱重工業の変革から学ぶ経営の本質

この記事を書いた人

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山本 和敏(やまもと かずとし)
マサチューセッツ州立大学MBA。USCPA(米国公認会計士)。情報系の大学を卒業後、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。主にシステムインテグレーション関連のプロジェクトに従事する中で、製品やサービスに依存せず、顧客視点からの提案・支援を行いたいという思いが強くなり、コンサルティング業界への転職を決意。転職後は、IT関連のプロジェクトを中心に、業務改革や戦略策定など支援の範囲を広げ、様々な業界のクライアント様の課題解決に取り組んでいる。現在は、業界最大手のクライアント様の伴走支援を行い、上層部の方々が抱える難易度の高い課題に対し、これまで培ってきた知見やスキルを活かし、さまざまな視点から価値ある解決策を提供している。

目次
三菱重工業における「技術」の位置づけ
「技術が強い」だけでは勝てない時代へ
技術戦略の転換──「研究開発」から「価値創出」へ
技術の「縦割り」を超える仕組み
巨額投資とリスクマネジメント
技術者集団をどうマネジメントするか
この分析にMBAの学びはどう活きるのか?


三菱重工業における「技術」の位置づけ

三菱重工業を語るうえで、技術は単なる競争手段ではありません。それは、同社の存在理由そのものです。

エネルギー、航空宇宙、防衛、社会インフラ。これらはいずれも「高い技術がなければ事業として成立しない」領域であり、価格競争や模倣では勝負できません。言い換えれば、三菱重工業は創業以来、技術を起点に事業を構築してきた企業なのです。
しかし、この技術重視の姿勢は、同時に経営上の難題も生みました。

・技術者主導になりやすい
・開発期間が長期化しやすい
・投資回収の見通しが立ちにくい

多くの日本の技術系大企業が直面してきた課題を、三菱重工業も例外なく抱えてきました。

「技術が強い」だけで技術は勝てない時代へ

2000年代以降、三菱重工業を取り巻く環境は大きく変わります。
グローバル競争の激化により、「技術的に優れていること」と「事業として成功すること」の間に、明確なギャップが生まれました。
例えば、

・開発には成功したが、市場投入後に採算が合わない
・技術的完成度を追い求めるあまり、顧客ニーズとのズレが生じる
・プロジェクトが大型化し、失敗時の損失が致命的になる

こうした事例は、三菱重工業だけでなく、多くの重工メーカーに共通する問題です。三菱重工業が直面した本質的な問いは、次の一点に集約されます。技術を、どうすれば「持続的な価値創造」に変えられるのか?

技術戦略の転換──「研究開発」から「価値創出」へ

三菱重工業の技術戦略は、近年明確な転換を遂げています。その核心は、研究開発そのものではなく、研究開発の“使い方”を変えたことにあります。
かつての重工メーカーでは、「技術的に可能かどうか」がプロジェクト判断の中心でした。

現在の三菱重工業では、そこに次の視点が加わります。

・社会課題との接続性はあるか
・長期的に事業として成立するか
・自社の強みを横断的に活かせるか

たとえばエネルギー分野では、単なる発電設備の提供に留まらず、脱炭素社会を前提としたシステム全体の最適化がテーマとなっています。

水素エネルギー、CO₂回収・貯留(CCUS)、高効率ガスタービン。これらは単独ではなく、「社会実装されて初めて意味を持つ技術」として位置づけられています。


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技術の「縦割り」を超える仕組み

巨大企業におけるイノベーションの最大の敵は、組織の縦割り構造です。

三菱重工業も例外ではなく、事業部・技術部門・研究所がそれぞれ独立して動く時代が長く続きました。近年の改革で特徴的なのは、技術を「事業部単位」で完結させない設計に切り替えた点です。

・共通技術の横断活用
・技術ロードマップの全社共有
・研究テーマと事業戦略の連動

これにより、航空宇宙で培った制御技術がエネルギー分野に応用され、防衛技術で蓄積された信頼性設計がインフラ事業に活かされる、といった循環が生まれています。

重要なのは、これが「偶然の連携」ではなく、経営として意図的に設計されている点です。

巨額投資とリスクマネジメント

三菱重工業の技術開発は、常に巨額の投資を伴います。航空機エンジン、宇宙ロケット、次世代エネルギー。いずれも失敗すれば経営に大きな影響を与えかねません。

ここで同社が重視しているのが、技術リスクと事業リスクを切り分けて管理する発想です。

・技術としての成立性
・市場としての成立性
・社会・政策環境との整合性

これらを段階的に検証し、「どの段階で、どこまでリスクを取るか」を明確にしています。MBA的に言えば、リアルオプション的な思考を、実務に落とし込んでいる事例と言えます。

技術者集団をどうマネジメントするか

もう一つ見逃せないのが、人の問題です。三菱重工業には、長年にわたり高度な専門性を磨いてきた技術者が多数在籍しています。彼らのモチベーションは、「利益」よりも「技術的完成度」に向かいがちです。

経営として重要なのは、この価値観を否定することではありません。

三菱重工業は、
・技術者の専門性を尊重しつつ
・事業視点・社会視点を接続する
というバランスを取ろうとしています。

技術を「自己目的化」させず、「社会にどう貢献するのか」という物語に結びつける。これが、巨大技術組織を動かす鍵となっています。

この分析にMBAの学びはどう活きるのか?

第2回のテーマは、MBAの中でも特に応用が難しい領域と直結します。

MBAの論点 三菱重工業の示唆
技術戦略 技術と事業の接続設計
イノベーション論 大企業における持続的革新
リスクマネジメント 巨額投資と段階的意思決定
組織論 専門家集団のマネジメント

スタートアップの事例と異なり、三菱重工業のような巨大企業では、「速さ」よりも「失敗しない構造」が重視されます。MBAで学ぶフレームワークは、こうした複雑な意思決定を言語化し、共有するための道具として機能します。


次回予告

次回第3回では、三菱重工業のグローバル展開と地政学リスクをテーマに掘り下げます。

・防衛・エネルギー事業と国家戦略
・グローバル企業としてのリスク管理
・地政学を前提にした経営判断とは何か
を、MBA的視点で整理していきます。次回もぜひご覧ください!

次の記事はこちら

【第3回】三菱重工業のグローバル展開と地政学リスク

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