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【第1回】なぜユニクロは変わらなければならなかったのか?
目次
世界企業に成長したユニクロ
国内市場の成熟と構造的限界
海外市場での「第二の戦い」
ESGとサステナビリティの重圧
DX(デジタル化)の遅れと巻き返し
課題の本質は「ブランドと経営構造の再定義」
MBAの学びとの接点
ユニクロを展開するファーストリテイリングは、今や日本を代表するグローバルアパレル企業です。
売上高:約2.7兆円(2023年度)
営業利益:約3750億円
世界の店舗数:約3,700店(国内800、海外2,900以上)
時価総額:一時的にアパレル業界で世界2位に到達(ZARAのInditexに次ぐ規模)
「安くて高品質なベーシックウェア」を武器に、フリースブームやヒートテック、エアリズムなどの機能性商品をヒットさせ、国内で圧倒的な地位を築きました。さらに近年では、中国・東南アジアを中心に海外展開を加速し、売上の半分以上を海外市場が占めるまでに成長しています。
一見、盤石に見えるユニクロですが、なぜ「変わらなければならない」と言えるのでしょうか?
ユニクロが直面する最大の課題の一つは、日本国内市場の構造的な縮小です。長年の成長を支えてきた国内需要が、人口動態や消費者行動の変化により、徐々に限界に近づいています。
人口減少と少子高齢化
日本の総人口はすでに減少局面に入り、特に若年層人口の減少が顕著です。
衣料消費は主に20〜40代の購買力に依存していますが、この世代の人口が減ることで、ファッション市場全体の需要も自然と縮小していきます。
例えば、15〜24歳の若年人口はここ10年で約15%減少しており、学生や若年層向け商品の売上への影響は無視できません。
消費者の価値観変化
かつては「安くて無難な服」が広く受け入れられていましたが、現代の消費者はそれだけでは満足しません。
持続可能性(サステナビリティ)への関心が高まり、リサイクル素材や環境配慮型の製品が選択肢として重要になっています。
さらに、店頭だけでなくオンラインやアプリなどのデジタル接点も購買判断に影響を与え、単なる価格・品質だけでは差別化が難しくなっています。
ブランド体験やサービスの質も重視され、消費者の価値観は「総合的な体験」にシフトしています。
競争激化
国内市場には、ユニクロの兄弟ブランドであるGUに加え、ZARAやH&M、無印良品など、グローバル・国内の競合がひしめいています。
各ブランドとも低価格や機能性だけでなく、デザイン・季節感・購買体験を武器にシェアを奪い合っており、ユニクロ単独では差別化が難しくなっています。
特に若年層向けやトレンド商品では、国内競争が激しく、既存の「大量生産・低価格モデル」だけでは市場優位性を維持しにくい状況です。
こうした人口動態の変化、消費者の価値観の多様化、激化する競争を考えると、国内市場だけを見据えて成長を続けることには限界があります。
ユニクロは2000年代から海外進出を本格化しましたが、当初は苦戦も多く経験しました。
米国進出の初期は「安いだけの服」と認識され、撤退を余儀なくされた店舗も。
欧州市場では「ZARA・H&M」といったファストファッションの強者に押され、浸透に時間がかかりました。
中国市場では一定の成功を収めていますが、ローカルブランドやEC専業企業との競争が激化。
結果として、海外市場は成長の柱であると同時に最大のリスク要因でもあるのです。
アパレル業界は、環境負荷の高さから世界的に批判の的となってきました。
廃棄衣料問題(世界で毎年9200万トン廃棄)
水資源消費(ジーンズ1本で約7,500リットルの水が必要)
CO2排出(ファッション産業全体で世界の約10%を占めると推計)
ユニクロも例外ではなく、2010年代以降は「サステナブル経営」への取り組みを加速させています。
リサイクル回収プログラム
再生可能エネルギーによる生産シフト
2021年には「2030年までに温室効果ガス90%削減」を目標に掲げる
つまり、環境対応は「やるかやらないか」ではなく「生き残りの必須条件」となったのです。
もう一つの構造課題は、デジタル化対応です。
2010年代前半、EC比率は10%未満と低水準にとどまり、アマゾンやZARAのオンライン展開に遅れをとりました。店舗依存型モデルからの転換が進まず、コロナ禍では大きな打撃を受けました。
その後、ユニクロアプリの強化、オンラインと店舗在庫を一体化する「有明倉庫」の導入など、オムニチャネル戦略を推進。2023年度にはEC比率が20%超にまで伸びましたが、依然として海外競合に比べると課題は残っています。
ここまでの課題を総合すると、ユニクロの本質的なテーマは次の通りです。
国内依存からの脱却
海外市場で「グローバルブランド」としての地位を確立できるか。
ブランド価値の再定義
「安さと機能性」から「サステナブルで社会的価値のあるブランド」への転換。
デジタル×リアルの融合
EC・アプリ・店舗を一体で設計し、グローバル顧客体験を提供できるか。
つまりユニクロは、単なる「衣料品メーカー」から「グローバル・ライフスタイル企業」へ進化しなければならない段階に来ているのです。
ユニクロの事例から見えるポイントは、MBAで学ぶフレームワークに直結します。
| MBAの論点 | ユニクロ事例の示唆 |
|---|---|
| 経営戦略論 | 成熟市場から新興市場へのポートフォリオ転換 |
| ブランド戦略 | 機能価値から社会的価値へのシフト |
| サステナビリティ経営 | 環境規制と消費者期待を両立する経営 |
| デジタル戦略 | リアルとデジタルを融合した新しい顧客体験設計 |
第2回では、ファーストリテイリングが実際にどのような戦略を打ち出し、具体的な成果を上げてきたのかを掘り下げます。
・「グローバルワン」経営体制
・有明プロジェクトとサプライチェーン改革
・GUとのブランドポートフォリオ戦略
を中心に分析し、「世界標準の経営」に挑む姿を描きます。
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