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  • 2025/09/09公開

【第4回】「美の経営」を支える統合モデル──資生堂に学ぶ、無形資産を価値に変える戦略──

【第4回】「美の経営」を支える統合モデル──資生堂に学ぶ、無形資産を価値に変える戦略──

【第1回】資生堂はなぜ「世界で勝てる日本ブランド」になれたのか

【第2回】資生堂が挑む「ブランド・ポートフォリオ経営」

【第3回】資生堂のグローバル組織はなぜ機能するのか?

【第4回】「美の経営」を支える統合モデル

この記事を書いた人

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山本 和敏(やまもと かずとし)
マサチューセッツ州立大学MBA。USCPA(米国公認会計士)。情報系の大学を卒業後、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。主にシステムインテグレーション関連のプロジェクトに従事する中で、製品やサービスに依存せず、顧客視点からの提案・支援を行いたいという思いが強くなり、コンサルティング業界への転職を決意。転職後は、IT関連のプロジェクトを中心に、業務改革や戦略策定など支援の範囲を広げ、様々な業界のクライアント様の課題解決に取り組んでいる。現在は、業界最大手のクライアント様の伴走支援を行い、上層部の方々が抱える難易度の高い課題に対し、これまで培ってきた知見やスキルを活かし、さまざまな視点から価値ある解決策を提供している。

目次
ブランド・組織・人材の三位一体が生む強さ
無形資産を“経営資源”に変える仕組み
ブランド成長と財務成果をつなぐ経営デザイン
統合経営モデルのMBA的整理
経営に“美意識”を持ち込むということ
終りに──「見えない価値を、経営で可視化し、成果につなぐ」


ブランド・組織・人材の三位一体が生む強さ

これまで3回にわたり、資生堂の変革をブランド戦略・組織設計・人材育成の観点から見てきました。

・プレミアムブランドへの集中とグローバル展開
・地域カンパニー制+グローバル本社機能による連動型組織
・グローバルリーダー育成とD&I推進

これらは個別の施策に見えますが、資生堂の本質は「三位一体の経営システム」にあります。

・ブランド価値を起点に、
・人材と組織を統合し、
・無形資産を持続的な成果に変える。

この仕組みこそが、資生堂を単なる化粧品メーカーから「美の経営を実現するグローバル企業」へ進化させた鍵なのです。

無形資産を“経営資源”に変える仕組み

現代の経営では、財務諸表に載らない資産こそが競争力の源泉となります。 資生堂は、無形資産を以下の3領域で経営に組み込みました。

無形資産 経営への組み込み方
ブランド価値 「プレミアムブランド集中戦略」でグローバル市場に展開。ブランドごとに世界共通のKPIを設定
人材資産 グローバルリーダー育成プログラム(GLDP)やD&I施策により、価値を生む人材ポートフォリオを構築
組織・知識資産 地域カンパニー制と情報基盤(BI・kintone類似の社内可視化ツール)で知識と意思決定を共有

MBA的には、これは「無形資産の資産化(ICM=Intellectual Capital Management)」に相当します。資生堂は「見えない価値」を、制度と仕組みで事業成果につなぐ設計に成功しているのです。

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ブランド成長と財務成果をつなぐ経営デザイン

資生堂の統合モデルでは、ブランド・人材・組織の成果が財務指標と直結する仕組みが作られています。

・ブランドごとの売上・利益・ブランド力指標(BHI)を共通管理
・R&D投資と市場投入までのスピードをKPI化
・社員エンゲージメント指標を財務KPIと並列管理(人的資本の可視化)

その結果、資生堂は2020年代に入っても以下の成果を示しています。

・プレミアムブランド比率の上昇(国内売上の約70%を占有)
・中国・北米を中心とした高収益ブランドの拡大
・離職率の低さとグローバル人材比率の向上

つまり、資生堂は「ブランド価値→人材・組織→財務成果」という価値創造のループを設計し、持続的成長を可能にしているのです。

ブランド成長と財務成果をつなぐ経営デザイン

今回の最終回で紹介した統合モデルを、MBAの学びと対応させると以下のようになります。

MBA領域 資生堂の実践例
経営戦略論 プレミアムブランド集中と無形資産活用による差別化戦略
人的資本経営 グローバルリーダー育成、エンゲージメント可視化
組織設計論 地域カンパニー制+グローバル本社の統合構造
無形資産マネジメント ブランド・人材・組織知識を財務成果につなぐIC設計
財務・管理会計 ブランド別KPI、人的資本KPIと財務指標の連動

この整理から見えてくるのは、資生堂が単なる化粧品メーカーを超え、「無形資産を核とする統合経営モデル」を確立している点です。

経営に“美意識”を持ち込むということ

資生堂の経営思想の根底には、「美は人を幸せにし、社会を豊かにする」という信念があります。この価値観は、単なるスローガンではなく、以下のように経営に落とし込まれています。

・製品デザインだけでなく、働き方や組織の在り方も“美しく”
・利益追求だけでなく、社会的価値と両立させるガバナンス
・無形資産を磨き、長期的に価値を生む経営サイクル

「信頼」「共感」「美意識」のような抽象的価値は、制度・組織・KPIを通じてはじめて成果を生む資産に変わります。資生堂はまさに、美意識と経営科学を融合した日本発グローバル企業なのです。

終りに──「見えない価値を、経営で可視化し、成果につなぐ」

4回にわたり、資生堂の変革を追ってきました。

1. プレミアムブランド集中戦略とグローバル化
2. ブランドごとの成長戦略と顧客体験設計
3. 地域カンパニー制とグローバル人材育成
4. 無形資産を統合した経営モデル

「見えない価値を、経営で可視化し、成果につなぐこと」、これは、次世代のグローバル経営の本質と言えます。資生堂の変革の分析を通じて、その意味を実感して頂けたのではないでしょうか。

次回は、また別の業界・企業の事例を取り上げていく予定です。あなた自身の現場と重ねながら、引き続き一緒に考えていきましょう。

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