本ウェブサイトでは、Cookieを利用しています。本ウェブサイトを継続してご利用いただく際には、当社のCookieの利用方針に同意いただいたものとみなします。
本ウェブサイトでは、Cookieを利用しています。本ウェブサイトを継続してご利用いただく際には、当社のCookieの利用方針に同意いただいたものとみなします。
【第1回】資生堂はなぜ「世界で勝てる日本ブランド」になれたのか
【第4回】「美の経営」を支える統合モデル
目次
ブランド・組織・人材の三位一体が生む強さ
無形資産を“経営資源”に変える仕組み
ブランド成長と財務成果をつなぐ経営デザイン
統合経営モデルのMBA的整理
経営に“美意識”を持ち込むということ
終りに──「見えない価値を、経営で可視化し、成果につなぐ」
これまで3回にわたり、資生堂の変革をブランド戦略・組織設計・人材育成の観点から見てきました。
・プレミアムブランドへの集中とグローバル展開
・地域カンパニー制+グローバル本社機能による連動型組織
・グローバルリーダー育成とD&I推進
これらは個別の施策に見えますが、資生堂の本質は「三位一体の経営システム」にあります。
・ブランド価値を起点に、
・人材と組織を統合し、
・無形資産を持続的な成果に変える。
この仕組みこそが、資生堂を単なる化粧品メーカーから「美の経営を実現するグローバル企業」へ進化させた鍵なのです。
現代の経営では、財務諸表に載らない資産こそが競争力の源泉となります。 資生堂は、無形資産を以下の3領域で経営に組み込みました。
無形資産 | 経営への組み込み方 |
---|---|
ブランド価値 | 「プレミアムブランド集中戦略」でグローバル市場に展開。ブランドごとに世界共通のKPIを設定 |
人材資産 | グローバルリーダー育成プログラム(GLDP)やD&I施策により、価値を生む人材ポートフォリオを構築 |
組織・知識資産 | 地域カンパニー制と情報基盤(BI・kintone類似の社内可視化ツール)で知識と意思決定を共有 |
MBA的には、これは「無形資産の資産化(ICM=Intellectual Capital Management)」に相当します。資生堂は「見えない価値」を、制度と仕組みで事業成果につなぐ設計に成功しているのです。
資生堂の統合モデルでは、ブランド・人材・組織の成果が財務指標と直結する仕組みが作られています。
・ブランドごとの売上・利益・ブランド力指標(BHI)を共通管理
・R&D投資と市場投入までのスピードをKPI化
・社員エンゲージメント指標を財務KPIと並列管理(人的資本の可視化)
その結果、資生堂は2020年代に入っても以下の成果を示しています。
・プレミアムブランド比率の上昇(国内売上の約70%を占有)
・中国・北米を中心とした高収益ブランドの拡大
・離職率の低さとグローバル人材比率の向上
つまり、資生堂は「ブランド価値→人材・組織→財務成果」という価値創造のループを設計し、持続的成長を可能にしているのです。
今回の最終回で紹介した統合モデルを、MBAの学びと対応させると以下のようになります。
MBA領域 | 資生堂の実践例 |
---|---|
経営戦略論 | プレミアムブランド集中と無形資産活用による差別化戦略 |
人的資本経営 | グローバルリーダー育成、エンゲージメント可視化 |
組織設計論 | 地域カンパニー制+グローバル本社の統合構造 |
無形資産マネジメント | ブランド・人材・組織知識を財務成果につなぐIC設計 |
財務・管理会計 | ブランド別KPI、人的資本KPIと財務指標の連動 |
この整理から見えてくるのは、資生堂が単なる化粧品メーカーを超え、「無形資産を核とする統合経営モデル」を確立している点です。
資生堂の経営思想の根底には、「美は人を幸せにし、社会を豊かにする」という信念があります。この価値観は、単なるスローガンではなく、以下のように経営に落とし込まれています。
・製品デザインだけでなく、働き方や組織の在り方も“美しく”
・利益追求だけでなく、社会的価値と両立させるガバナンス
・無形資産を磨き、長期的に価値を生む経営サイクル
「信頼」「共感」「美意識」のような抽象的価値は、制度・組織・KPIを通じてはじめて成果を生む資産に変わります。資生堂はまさに、美意識と経営科学を融合した日本発グローバル企業なのです。
4回にわたり、資生堂の変革を追ってきました。
1. プレミアムブランド集中戦略とグローバル化
2. ブランドごとの成長戦略と顧客体験設計
3. 地域カンパニー制とグローバル人材育成
4. 無形資産を統合した経営モデル
「見えない価値を、経営で可視化し、成果につなぐこと」、これは、次世代のグローバル経営の本質と言えます。資生堂の変革の分析を通じて、その意味を実感して頂けたのではないでしょうか。
次回は、また別の業界・企業の事例を取り上げていく予定です。あなた自身の現場と重ねながら、引き続き一緒に考えていきましょう。
国際資格の専門校であるアビタス(東京)が提供しているプログラムで、日本の自宅からオンラインで米国MBA学位を取得できます。
日本語で実施する基礎課程と英語で行うディスカッション主体の上級課程の2段階でカリキュラムが組まれているため、英語力の向上も見込めます。
世界でわずか5%のビジネススクールにしか与えられていないAACSB国際認証を受けており、高い教育品質が保証されているプログラムです。
自宅にいながら学位が取得できるため、仕事や家事と両立できる点も強みです。
アビタスでは無料のオンライン説明会と体験講義を実施しています。興味のある人はお気軽にお問い合わせください。