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  • 2025/09/05公開

【第2回】資生堂が挑む「ブランド・ポートフォリオ経営」──無形資産を戦略に変えるグローバル経営の秘密──

【第2回】資生堂が挑む「ブランド・ポートフォリオ経営」──無形資産を戦略に変えるグローバル経営の秘密──

【第1回】資生堂はなぜ「世界で勝てる日本ブランド」になれたのか

【第2回】資生堂が挑む「ブランド・ポートフォリオ経営」

【第3回】資生堂のグローバル組織はなぜ機能するのか?

【第4回】「美の経営」を支える統合モデル

この記事を書いた人

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山本 和敏(やまもと かずとし)
マサチューセッツ州立大学MBA。USCPA(米国公認会計士)。情報系の大学を卒業後、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。主にシステムインテグレーション関連のプロジェクトに従事する中で、製品やサービスに依存せず、顧客視点からの提案・支援を行いたいという思いが強くなり、コンサルティング業界への転職を決意。転職後は、IT関連のプロジェクトを中心に、業務改革や戦略策定など支援の範囲を広げ、様々な業界のクライアント様の課題解決に取り組んでいる。現在は、業界最大手のクライアント様の伴走支援を行い、上層部の方々が抱える難易度の高い課題に対し、これまで培ってきた知見やスキルを活かし、さまざまな視点から価値ある解決策を提供している。

目次
ブランドは資生堂の“経営資源”そのもの
「ブランド・ポートフォリオ再編」の三段階戦略
ブランド戦略を支える「無形資産マネジメント」
収益モデルは「高付加価値×グローバル市場」
ブランド経営の学びをMBA視点で整理


ブランドは資生堂の“経営資源”そのもの

資生堂の経営を語るうえで、最も象徴的な資産はブランドです。
クレ・ド・ポー ボーテ、SHISEIDO、NARS、bareMinerals…これらは単なる商品名ではなく、市場参入障壁そのものとして機能しています。

かつての資生堂は、国内市場におけるシェア確保が主戦場でした。
しかし、少子高齢化やドラッグストアでの価格競争に直面し、国内依存型のポートフォリオでは成長に限界がありました。

そこで、2014年以降の中期経営改革で打ち出されたのがグローバル・ブランド経営への転換です。

・マス市場依存の縮小:低価格帯の撤退・縮小
・プレステージ領域の強化:クレ・ド・ポーやNARSを中心に投資集中
・海海外売上比率の大幅増加:2014年は約40% → 2023年は約80%

つまり、資生堂は「ブランドを経営資源として最適配置する」という、いわばポートフォリオ経営への転換を進めたのです。

「ブランド・ポートフォリオ再編」の三段階戦略

資生堂のポートフォリオ変革は、単なる商品の入れ替えではなく、経営資源の配分戦略でした。そのプロセスを3つの段階で整理すると、変革の本質が見えてきます。

1. 選択と集中(2014〜2016年)
・国内低価格帯ブランドの縮小(インテグレートなど一部ブランド統合)
・赤字事業・非中核ブランドから撤退
・グローバルで通用するプレステージブランドへ投資をシフト

2. グローバル拡張(2017〜2020年)
・クレ・ド・ポー ボーテを中心に中国・アジアでの販売拡大
・NARSの北米・欧州市場強化
・デジタルチャネル強化(EC・SNSマーケティングの本格導入)

3. 収益性と無形資産の最大化(2021年〜現在)
・ブランド価値の数値化(ブランド資産評価、顧客LTV管理)
・グローバル統合での効率化(生産・研究開発・マーケティングの統合)
・ESGとサステナビリティをブランド価値の一部として訴求

この戦略の肝は、「製品の数ではなく、ブランドの強さで勝つ」という方針にあります。

ブランド戦略を支える「無形資産マネジメント」

ブランド経営は、単に広告費を投下すれば成立するわけではありません。
資生堂は、以下の無形資産を統合的に活用する経営構造を確立しています。

無形資産 資生堂の活用事例
ブランド価値 クレ・ド・ポーを「世界No.1高級化粧品ブランド」へ育成方針を明示
R&D(研究開発力) 肌解析データ・AI研究・バイオ技術で高付加価値商品を開発
顧客データ・CRM SHISEIDO+会員・中国SNS分析でLTV最大化
グローバルマーケティング力 地域ごとに最適化された広告・KOL活用戦略

このように、ブランド価値は単独で存在するのではなく、R&D・顧客データ・マーケティングが有機的に組み合わさることで持続的競争優位となります。

MBAで言うと、これは「VRIO分析(価値・希少性・模倣困難性・組織活用)」を体現した無形資産経営です。

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収益モデルは「高付加価値×グローバル市場」

ブランド戦略の成果は、収益構造の変化として明確に表れます。

・プレステージ化粧品の売上比率:2014年約35% → 2023年約70%
・海外売上比率:約80%)
・営業利益率:低価格帯縮小により改善(単価上昇・広告効率向上)

つまり、「少品種・高収益・グローバル展開」というモデルが完成しつつあるのです。

この変革は、MBAで学ぶプロダクト・ポートフォリオ戦略(PPM)の典型的成功事例でもあります。マス市場の「金のなる木」から撤退し、プレステージという「花形」事業へ集中させた結果、収益性が劇的に向上したのです。

ブランド経営の学びをMBA視点で整理

最後に、今回の分析をMBAでの学びと紐づけて整理します。

MBA領域 資生堂の実践例
経営戦略論 事業ポートフォリオの再編、グローバル市場への集中
マーケティング戦略 ブランド価値最大化・プレステージ戦略・LTV管理
無形資産マネジメント ブランド・R&D・顧客データを統合した競争優位
国際経営論 地域最適とグローバル統合の両立

MBA的に見ると、資生堂は単なる化粧品メーカーではなく、無形資産を核にグローバル展開するブランド経営企業と言えるでしょう。

次回予告

次回(第3回)では、資生堂が「組織と人材」の面でどのようにグローバル経営を支えているのかを掘り下げます。

・世界共通ブランドを運営する組織構造
・研究・マーケティング・サプライチェーンの一体化
・グローバル人材戦略とリーダー育成

単なるブランド論を超え、人と組織の観点から資生堂の競争優位に迫ります。

次の記事はこちら

【第3回】資生堂のグローバル組織はなぜ機能するのか?

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