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【第1回】資生堂はなぜ「世界で勝てる日本ブランド」になれたのか
目次
「国内の老舗」から「世界の資生堂」
「事業をやめる勇気」が生んだ再成長
無形資産を「稼ぐ力」に変える仕組み
数字が証明する変革の成果
MBA視点で整理する「資生堂の変革」
資生堂は、1872年創業の日本最古の化粧品メーカーです。
銀座にオープンした洋風調剤薬局が始まりで、「七色粉白粉」や「花椿マーク」は明治・大正期を代表するヒット商品となりました。多くの日本人にとっては「老舗=安心感のある化粧品会社」という印象が強いかもしれません。
しかし資生堂は、2023年時点で、世界売上の約8割を海外が占めるグローバル企業になっています。
・主力のスキンケアブランド「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」は、欧米・中国で高く評価
・メイクアップブランド「NARS」は、米国・欧州のセフォラ店舗で大人気
・研究・マーケティング拠点は世界120以上の国と地域に広がる
かつては国内依存度が高く、海外展開も限定的だった資生堂が、いまや日本発のグローバルラグジュアリー企業として再評価されています。資生堂は「成熟企業が無形資産を武器に再成長したモデル」と言えます。
2010年代前半までの資生堂は、国内7割依存の総花経営でした。
・スキンケア・メイクだけでなく、シャンプー、ボディソープ、洗剤まで幅広く展開
・ドラッグストア中心の低価格帯が多く、利益率は低迷
・海外売上比率は低く、グローバル化は中途半端
2014年に魚谷雅彦氏がCEOに就任すると、改革の核心は「何をやるか」ではなく「何をやめるか」にありました。
1. 日用品・低価格帯からの撤退
・「TSUBAKI」などのヘアケア事業を2018年に投資ファンドのCVCキャピタルへ譲渡
・「洗顔専科」など低価格帯も整理し、資源をプレミアム領域に集中
2. ブランドの整理とポジショニング明確化
・「グローバル・プレステージ」を軸に、SHISEIDO/Clé de Peau Beauté/NARSに注力
・中価格帯(ELIXIR、ANESSA)はアジア市場に特化
・国内向け大衆製品は最小限に縮小
3. 海外市場への本格シフト
・中国と米国に経営資源を集中投下
・EC・SNSを活用した現地発マーケティングを強化
・研究拠点も海外に設置し、現地対応力を高めた
この「撤退と集中」の結果、資生堂は利益率の高いグローバル化粧品企業への道を切り拓きます。これはポートフォリオ戦略の大胆な再編であり、低成長事業を切り離すカーブアウト戦略によって収益力を高めた好例です。
次に資生堂が取り組んだのは、ブランド力・研究開発・顧客データといった無形資産を収益源に変える取り組みです。
1. ブランドの世界観を明確化
・「SHISEIDO」=科学的エビデンスと日本的美意識の融合
・「Clé de Peau Beauté」=世界最高峰のラグジュアリー・スキンケア
・「NARS」=プロフェッショナルメイクアップ、SNS発信に強い
2. R&Dのグローバル化とデータ活用
・日本・中国・米国・フランスに研究所を配置
・世界数百万人規模の肌データを解析し、商品開発やパーソナライズ提案に活用
・AI肌診断、バーチャルメイクなどデジタルCXを導入
3. 顧客体験価値(CX)の拡張
・店舗・EC・アプリを連動させた「オムニチャネル体験」
・高級カウンターでは肌診断・美容相談と連動した購買体験を提供
化粧品は模倣が容易な製品ですが、資生堂は無形資産を組み合わせて参入障壁を構築しました。これは知的資本経営(ICM)とブランド戦略の融合例です。
この戦略は、わかりやすい形で成果に表れています。
・海外売上比率:2014年約50% → 2023年約80%
・営業利益率:5%未満 → 10%前後に改善
・株価:10年間で約3倍に上昇
・中国・米国でのシェア:中国はプレステージ市場で外資上位、米国もNARSが市場牽引
これは、成熟市場企業が低収益事業を手放し、無形資産を武器に再成長した好例です。
同じ課題に直面する日本企業にとって、きわめて示唆に富む成功モデルでしょう。
MBA分野 | 資生堂の実践事例 |
---|---|
経営戦略 | 選択と集中、低収益事業の撤退、グローバル市場への再資源配分 |
マーケティング | ブランドポートフォリオ再編、CX重視、オムニチャネル戦略 |
組織設計 | 海外主導のマトリクス組織、現地経営権限の強化 |
知的資本経営(ICM) | ブランド・R&D・顧客データを統合し、参入障壁と収益力を確立 |
国際経営 | 中国・米国をコア市場に据えた現地適応型グローバル経営 |
特に、「ブランドとデータを組み合わせた無形資産経営」は、MBA理論を現実に落とし込む好例であり、他産業にも応用可能な知見です。
次回(第2回)では、資生堂がいかにして世界市場で勝てるブランドを構築し、欧米大手と競いながらポジションを確立してきたのかを深掘りします。
・ブランドポートフォリオ戦略の設計
・グローバルマーケティングと現地適応の両立
・MBA理論との接点(ブランド戦略×国際経営)
を通じて、日本企業が世界市場で勝つためのヒントを探ります。
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