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  • 2025/09/24公開

【第3回】「超巨大ポートフォリオ」をどう管理するのか?──ソフトバンググループの組織とリスクマネジメントの実像──

【第3回】「超巨大ポートフォリオ」をどう管理するのか?──ソフトバンググループの組織とリスクマネジメントの実像──

【第1回】ソフトバンクグループは、なぜ“投資会社”として生まれ変わったのか?

【第2回】ソフトバンクグループの投資は、なぜ成功と失敗が極端なのか?

【第3回】「超巨大ポートフォリオ」をどう管理するのか?

【第4回】ソフトバンクグループに学ぶ「未来型経営」の条件

この記事を書いた人

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山本 和敏(やまもと かずとし)
マサチューセッツ州立大学MBA。USCPA(米国公認会計士)。情報系の大学を卒業後、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。主にシステムインテグレーション関連のプロジェクトに従事する中で、製品やサービスに依存せず、顧客視点からの提案・支援を行いたいという思いが強くなり、コンサルティング業界への転職を決意。転職後は、IT関連のプロジェクトを中心に、業務改革や戦略策定など支援の範囲を広げ、様々な業界のクライアント様の課題解決に取り組んでいる。現在は、業界最大手のクライアント様の伴走支援を行い、上層部の方々が抱える難易度の高い課題に対し、これまで培ってきた知見やスキルを活かし、さまざまな視点から価値ある解決策を提供している。

目次
世界最大級の投資会社に“管理部門”は存在しない?
孫正義の意思決定は「集中と分散」のハイブリッド
“管理しない”ことを支える3つのリスクマネジメント
伝統的大企業との対比
MBAで学ぶ「自律分散型マネジメント」の実例


世界最大級の投資会社に“管理部門”は存在しない?

ソフトバンクグループは、通信事業・投資事業・金融事業を抱える巨大コングロマリットです。2024年度時点での投資先は約470社以上、資産規模は約50兆円に達します。

驚くべきは、その投資ポートフォリオを運営する本社組織の小ささです。

・ビジョンファンド含め、投資運営に関わる中核メンバーは数百名規模
・孫正義氏は、個別案件の最終意思決定に直接関与
・「意思決定は速く、現場は極端にスリム」という経営スタイル

つまり、超巨大な投資ポートフォリオを、極めて小さな本社組織で動かすのがソフトバンクグループの特徴です。この「管理しない組織構造」が、ハイリスク・ハイリターン戦略を支える基盤になっています。

孫正義の意思決定は「集中と分散」のハイブリッド

ソフトバンクグループの意思決定の中心には、孫正義氏本人の投資哲学があります。
彼は自らを「300年に一度のAI革命の目利き」と位置づけ、以下のような意思決定フローをとります。

1. 投資チームが案件を発掘・初期分析
2. 孫氏が短時間で本質を見極め、Go/No-Goを判断
3. 投資後は基本的に独立経営を尊重、必要に応じて戦略支援のみ

この構造はMBA的には「集中型意思決定×分散型運営」です。

・投資判断はトップに集中
・経営は原則として分散・自律型
・組織内の承認プロセスは極端にシンプル

一方で、このスピードと集中型判断は、WeWorkのような失敗案件の温床にもなり得ます。

“管理しない”ことを支える3つのリスクマネジメント

ソフトバンクグループは、形式的な管理をしない代わりに、リスクを構造的に分散しています。

1.ポートフォリオ分散の徹底

・投資先は470社以上
・1社の失敗が致命傷にならない「VC型設計」
・1社が大成功すればポートフォリオ全体の損失をカバーできる

2.資金調達と責任分散

・ビジョンファンドを通じて外部資金を活用
・リスクの一部を投資家に分散し、自社BSへの直接影響を軽減
・孫氏は「外部資金を活かして未来を先取りする」ことを重視

3.情報の見える化と迅速な対応

・投資先の主要KPIは、クラウド上でリアルタイム把握
・問題発生時は、孫氏直轄でハンズオン対応も実施
・形式的な会議・稟議よりも「速報性」を重視

MBAで言えば、これは「自律分散型マネジメント+リアルタイム情報管理」の実例です。

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伝統的大企業との対比

一般的なコングロマリットは、事業部管理・稟議・予算統制によるリスク管理が基本です。
しかしソフトバンクグループは、真逆の設計です。

観点 伝統的大企業 ソフトバンクグループ
意思決定 事業部・本社の階層承認 孫氏に集中(高速意思決定)
投資後の関与 PMI・管理・報告重視 原則放任、必要時のみ支援
リスク管理 年次予算・事業部損益で統制 ポートフォリオ分散+資金調達で吸収
情報管理 四半期・月次報告 クラウドでリアルタイム把握
MBA的類型 ヒエラルキー型・管理重視 自律分散型・スピード重視

この構造により、ソフトバンクグループは世界最速クラスの投資執行が可能となる一方、
WeWorkのような「トップの過信による失敗」も生まれやすくなります。

MBAで学ぶ「自律分散型マネジメント」の実例

ソフトバンクグループの組織は、MBAで学ぶ以下の概念と直結します。

MBA分野 ソフトバンクグループの該当事例
組織設計論 集中型意思決定+分散型運営のハイブリッド
リスクマネジメント ポートフォリオ分散、外部資金活用、情報見える化
リーダーシップ論 トップ主導の変革型リーダーシップ、意思決定の高速化
ナレッジマネジメント 投資先KPIをリアルタイムで把握・共有

ソフトバンクグループの組織は、従来型企業では考えられないほど軽量かつ高速で、「管理せずに管理する」構造的リスクコントロールを体現しています。

次回予告

第3回では、ソフトバンクグループの組織設計とリスクマネジメントを整理しました。

・本社組織は極端にスリム
・意思決定は孫氏に集中、運営は分散
・リスクはポートフォリオと外部資金で吸収

MBA的に見ると、自律分散型マネジメントの最先端事例であり、スピードとリスク管理の両立という点で示唆に富みます。

次回(最終回)は、シリーズの総まとめとして、ソフトバンクグループ型経営が今後の企業経営に与える示唆を整理します。

・投資会社型コングロマリットは、持続可能か?
・孫正義モデルは他社に応用可能か?
・MBA的に学ぶ「未来型経営の条件」とは?

ソフトバンクグループの事例は、「管理せずに成長する組織」を考えるうえで格好の教材です。
最終回では、その本質をMBA視点で総括します。

次の記事はこちら

【第4回】ソフトバンクに学ぶ「未来型経営」の条件

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