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  • 2025/09/24公開

【第1回】ソフトバンクグループは、なぜ“投資会社”として生まれ変わったのか?──孫正義の構想と、超巨大ポートフォリオ経営の正体──

【第1回】ソフトバンクグループは、なぜ“投資会社”として生まれ変わったのか?──孫正義の構想と、超巨大ポートフォリオ経営の正体──

【第1回】ソフトバンクグループは、なぜ“投資会社”として生まれ変わったのか?

【第2回】ソフトバンクグループの投資は、なぜ成功と失敗が極端なのか?

【第3回】「超巨大ポートフォリオ」をどう管理するのか?

【第4回】ソフトバンクグループに学ぶ「未来型経営」の条件

この記事を書いた人

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山本 和敏(やまもと かずとし)
マサチューセッツ州立大学MBA。USCPA(米国公認会計士)。情報系の大学を卒業後、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。主にシステムインテグレーション関連のプロジェクトに従事する中で、製品やサービスに依存せず、顧客視点からの提案・支援を行いたいという思いが強くなり、コンサルティング業界への転職を決意。転職後は、IT関連のプロジェクトを中心に、業務改革や戦略策定など支援の範囲を広げ、様々な業界のクライアント様の課題解決に取り組んでいる。現在は、業界最大手のクライアント様の伴走支援を行い、上層部の方々が抱える難易度の高い課題に対し、これまで培ってきた知見やスキルを活かし、さまざまな視点から価値ある解決策を提供している。

目次
ソフトバンクグループは“通信会社”ではない
孫正義の「群戦略」とポートフォリオ思考
ビジョンファンドという“巨大金融エンジン”
通信事業は“安定キャッシュフローエンジン”
ソフトバンクグループ型投資経営をMBA的に整理
“投資会社化”の光と影


ソフトバンクグループは“通信会社”ではない

ソフトバンクと聞けば、多くの人は携帯電話や通信事業を思い浮かべます。
しかし、現在のソフトバンクグループの本質は、もはや通信会社ではありません。

・2023年時点で、グループの純利益の大半は投資事業からの変動益
・「ビジョンファンド」による世界中のAI・テクノロジー企業投資
・通信子会社(ソフトバンク株式会社)は、SBG全体の一事業に過ぎない

この変貌は、創業者・孫正義氏の「情報革命で人々を幸せにする」というミッションを背景にした、“事業経営から投資経営への大転換”の結果です。

孫正義の「群戦略」とポートフォリオ思考

ソフトバンクグループの経営を理解するキーワードは「群戦略(cluster strategy)」です。
孫氏は単独事業の成功よりも、複数のテクノロジー企業を束ねたエコシステムを構想しました。

・ARM(半導体設計)、Alibaba(EC・クラウド)、WeWork(シェアオフィス)など
・AI・IoT・ロボティクス領域に集中
・投資先同士の協業やシナジーを促進

これは「ポートフォリオ戦略+エコシステム経営」の応用です。
従来型の多角化(conglomerate diversification)ではなく、未来技術に的を絞った集中投資が特徴です。

ビジョンファンドという“巨大金融エンジン”

ソフトバンクグループ変革の象徴が、2017年に設立されたソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)です。

・ファンド総額は1号・2号合わせて15兆円超(世界最大級)
・投資先はAI・IoT・モビリティなど約400社
・リターンは巨額だが、評価損益は四半期ごとに大きく変動

この構造は、従来の事業会社とは異なる金融型経営モデルです。
孫氏は、ハイリスク・ハイリターンの投資を通じて、“未来のGAFAを先取りして保有する”というポジションを築こうとしています。

事業の利益ではなく、投資ポートフォリオの価値変動がグループ業績を左右する
これが、ソフトバンクグループを理解する上で最も重要な視点です。

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通信事業は“安定キャッシュフローエンジン”

投資主体に変貌したとはいえ、通信事業は依然としてソフトバンクグループの生命線です。

・国内通信事業は営業利益約1兆円規模で安定
・配当・借入返済・投資資金の原資を提供
・PayPayや法人DX事業など新規事業の土台にも

つまり、ソフトバンクは通信の安定収益で投資のリスクを支える構造を取っています。

ソフトバンクグループ型投資経営をMBA的に整理

このモデルは、MBAの以下の領域に直結します。

MBA領域 ソフトバンクグループの実践例
コーポレート戦略論 群戦略(cluster)によるポートフォリオ経営
ファイナンス ビジョンファンドを中心とした巨大レバレッジ投資
組織設計論 投資先を束ねる“緩やかなネットワーク型組織”
リスクマネジメント キャッシュフロー源(通信)と投資変動リスクの分離
イノベーション戦略 AI・IoT・次世代テクノロジーへの先行投資モデル

この整理から見えるのは、ソフトバンクグループが単なる投資会社ではなく、 「戦略的意図を持ったテクノロジー投資集団」だということです。

“投資会社化”の光と影

ソフトバンクグループの転換には明確なリスクもあります。

・株価・為替・IPO環境に業績が大きく依存
・WeWorkの失敗や中国IT規制などで巨額損失を経験
・財務レバレッジの高さは、投資家から常に懸念

しかし孫氏はこのリスクを理解したうえで、「100年後に残る企業を今から持つ」という時間軸で意思決定しています。この発想は、MBAで学ぶ長期価値創造(long-term value creation)の極端な実践例とも言えます。

次回予告

第1回では、ソフトバンクグループが投資会社へ変貌した理由と構造を整理しました。

1. 孫正義の群戦略とポートフォリオ思考
2. ビジョンファンドという巨大金融エンジン
3. 通信事業の安定キャッシュフロー構造
4. MBA的には、戦略・財務・組織の複合モデル

次回(第2回)では、ソフトバンクグループの投資先企業の実態と、成功と失敗のパターン分析に踏み込みます。

・ARM・アリババ・WeWork・Coupangのケース比較
・投資選定プロセスとリスク管理の仕組み
・MBA的「投資ポートフォリオ最適化」の実際

ソフトバンクグループ型経営の真価は、個別投資と全体ポートフォリオの連動設計にあります。
その構造を具体事例で読み解いていきましょう。

次の記事はこちら

【第2回】ソフトバンクグループの投資は、なぜ成功と失敗が極端なのか?

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