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  • 2025/12/25公開
  • 2026/02/03更新

【第2回】トヨタの生産・サプライチェーンの革新──「トヨタ生産方式(TPS)の進化」と“次世代ものづくり”の本質──

【第2回】トヨタの生産・サプライチェーンの革新──「トヨタ生産方式(TPS)の進化」と“次世代ものづくり”の本質──

【第1回】モビリティ企業への進化──“トヨタ再定義”の始まり

【第2回】生産・サプライチェーンの革新──「TPSの進化」と“次世代ものづくり”の本質

【第3回】人と組織文化──“トヨタウェイ”の進化とグローバル展開

【第4回】経営戦略と未来への挑戦──全体最適で築く競争優位

この記事を書いた人

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山本 和敏(やまもと かずとし)
マサチューセッツ州立大学MBA。USCPA(米国公認会計士)。情報系の大学を卒業後、システムエンジニアとしてキャリアをスタート。主にシステムインテグレーション関連のプロジェクトに従事する中で、製品やサービスに依存せず、顧客視点からの提案・支援を行いたいという思いが強くなり、コンサルティング業界への転職を決意。転職後は、IT関連のプロジェクトを中心に、業務改革や戦略策定など支援の範囲を広げ、様々な業界のクライアント様の課題解決に取り組んでいる。現在は、業界最大手のクライアント様の伴走支援を行い、上層部の方々が抱える難易度の高い課題に対し、これまで培ってきた知見やスキルを活かし、さまざまな視点から価値ある解決策を提供している。

目次
世界の製造業が学んだ「トヨタ生産方式」
「TPS×デジタル」──現場力のデジタル変換
サプライチェーン全体最適への挑戦
「トヨタらしさ」を失わない技術革新
MBAの学びとの接点


世界の製造業が学んだ「トヨタ生産方式」

トヨタの強みを語るうえで欠かせないのが「TPS(Toyota Production System)」です。
ジャスト・イン・タイムと自働化(人の判断を伴う自動化)という二大原則を軸に、1950年代から60年以上にわたり磨かれてきた独自の生産哲学です。

TPSは単なる生産管理手法ではありません。「ムダの徹底排除」を通じて、品質・コスト・納期を同時に最適化する“経営思想”そのものです。この思想は、リーン生産方式(Lean Manufacturing)として世界中に輸出され、米国のハーバード・ビジネス・スクールでは「トヨタ方式を理解することが経営学の基礎」とも教えられています。

しかし近年、トヨタはTPSを“固定化された伝統”としてではなく、進化させるべき動的システムと位置づけ直しています。背景には、EV化・サプライチェーンの地政学リスク・気候変動対応といった新たな現実があります。

「TPS×デジタル」──現場力のデジタル変換

トヨタは、長年の現場改善で培ったTPSの思想を、デジタル時代に再定義しています。
その中心が、「デジタル・カイゼン(Digital Kaizen)」です。

例えば、豊田自動織機やトヨタ車体の工場では、AIやIoTセンサーを活用して設備稼働データをリアルタイムで可視化。これにより、従来は人が経験で判断していた異常予兆や稼働ロスを、データ分析で即座に特定・改善できるようになりました。

また、バーチャル工場(Digital Twin)を活用し、部品配置や作業動線を仮想空間でシミュレーション。生産ライン立ち上げまでの期間を従来比で30〜40%短縮しています。

ここで重要なのは、トヨタが“現場をデジタル化した”のではなく、“現場の知恵をデジタルで再現した”という点です。AIやIoTをTPSの延長線上に置き、「人中心のデジタル生産」を志向しているのです。

サプライチェーン全体最適への挑戦

トヨタのサプライチェーンは、世界約1万社の取引先企業で構成されています。
近年はパンデミックや半導体不足、国際情勢の変化などでリスクが顕在化し、トヨタも一時的に生産停止を余儀なくされました。

その経験を踏まえ、同社は「サプライチェーン全体の可視化とレジリエンス強化」を加速しています。
主要サプライヤーと生産データを共有するプラットフォーム「RESCUE(Rescue Supply Chain Unified Evaluation)」を構築し、部品供給のリスクをリアルタイムに把握。さらに、代替部品の設計情報や輸送ルートを即時に切り替えられる体制を整えました。

この仕組みは、MBAで学ぶオペレーション戦略(Operations Strategy)やリスク・マネジメントの実践例と言えます。一部の最適化にとどまらず、サプライチェーン全体で「情報の流れ」と「モノの流れ」を統合する――まさにトヨタがTPSを全社的にアップデートしている姿です。

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「トヨタらしさ」を失わない技術革新

EVやデジタル化が進む中でも、トヨタは「人の感性を生かす現場」を重視しています。
自動化・AI活用が進んでも、最終判断や改善提案は人が担う──これがTPSの根幹です。

例えば、技能五輪でメダルを多数獲得するほど熟練度の高い技能者を、ロボット教育やAI設計支援の指導者として配置。人の“カン”をAIモデルに翻訳する取り組みも進めています。ここには、「現場の知を形式知化し、技術と文化を両立させる」という哲学が貫かれています。

言い換えれば、トヨタは技術進化を“効率化の道具”ではなく、“人の力を最大化する補助輪”として活用しているのです。この姿勢が、同社を単なる製造業ではなく“学習する組織(Learning Organization)”へと進化させています。

MBAの学びとの接点

トヨタの事例は、MBAで学ぶ経営理論と密接に関係しています。

MBAの論点 トヨタの実践事例
オペレーション戦略 TPSをデジタル技術で再設計し、全体最適化を実現
サプライチェーン・マネジメント 取引先を含めた可視化・データ共有によるレジリエンス強化
技術経営(MOT) 現場知をAI・IoTに変換し、学習するシステムを構築
組織行動論 現場主導の改善文化を維持しながらデジタル化を推進

MBAの知識を“理論”として学ぶだけでなく、トヨタのように「制度・現場・人」を結びつけて実装することが、変革の本質を理解する鍵となります。

次回予告

次回第3回では、トヨタの競争力を支えるもう一つの中核──人材と組織文化に焦点を当てます。
「現場力」と「挑戦」を両立させる人材育成モデル、そして“トヨタウェイ”がいかにグローバルで機能しているのかを解き明かしていきます。
次回もぜひご覧ください!

次の記事はこちら

【第3回】人と組織文化──“トヨタウェイ”の進化とグローバル展開


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