これまでのご経歴をお教えください
私は愛知県出身で、高校を卒業するまで同県で過ごしました。高校2年生の夏からはAFSの交換留学生として米国ミシガン州に滞在した経験があり、その体験が視野の広がりに少なからず影響を与えたように思います。留学先で友人になったデンマーク人の影響を受け、大学では大阪外国語大学(現・大阪大学)外国語学部にて中北欧地域文化(デンマーク語)を専攻しました。
卒業後は損害保険会社の三井住友海上火災保険株式会社に入社し、愛知県刈谷市で4年間、東京都新宿区で4年間、計8年間にわたり主に代理店営業に従事しました。この期間で得た実務経験は、顧客対応や営業プロセスの基盤になっていると感じています。なお、2012年3月に同社を退職し、合同会社ライフナビゲーションを立ち上げ、現在に至ります。
お勤め先の業界が、どのようなビジネスモデルかをお教えください
弊社は、個人向けにファイナンシャルプランニングサービスを、法人向けにコンサルティングおよびリスクマネジメントサービスをそれぞれ提供しております。また、関連会社が行う不動産事業における不動産管理サービスも受託しております。いずれの事業にも共通する使命は「安心・安全を提供し、クライアントの暮らしを支える」ことであり、この考え方が社名「ライフナビゲーション」の由来となっています。
起業当初は前職でのご縁を中心に事業を展開してまいりましたが、おかげさまで現在は既存クライアントからのご紹介が主な取引経路となっています。これは、一件一件の案件に誠実に向き合い、クライアント・ベネフィットを第一に追求してきた成果だと考えております。
ご担当の職種の業務内容をお教えください
代表として、経営戦略の立案や事業推進を担っています。小規模な企業であるため、自社の強みを最優先に据えつつ、周辺業務は外部に委託することが多いです。ただし、各業務がブラックボックス化しないよう、外注先のプロセスや成果に目を配ることも重要な職務だと考えています。興味深いことに、最近は弊社のスタイルを理解し柔軟に協力してくれる外注先が増えつつあり、コア業務に専念できる体制が徐々に整ってきていると感じます。とはいえ、まだ改善の余地は残っており、引き続き仕組みと関係性の双方を磨いていく必要があるのではないかと思います。
MBA取得は一種の心残り。いつか学び直して学位を取りたいという思いが根っこにあった
なぜMBA取得を考えられましたか。きっかけと課題感をお教えください
MBA取得を考えた理由は大きく2つあります。
第一に、20代の頃に働きながら国内MBAの取得を目指した時期がありました。当時、必修の単位はすべて取得したものの、業務との両立の都合でケースライティングに十分な時間を割けず、結果的に修了できないまま退学することになりました。その経験は40歳を過ぎた今でも一種の心残りとして残っており、いつか学び直して学位を取りたいという思いが根っこにあった、というのが正直なところです。
第二に、コロナ禍の影響も無視できません。幸い弊社はパンデミックの打撃を大きく受けることはなかったのですが、リモートワークの進展によって業務の効率化が進み、以前より学びに充てられる時間が確保しやすくなりました。こうした環境変化を単に受け流すのではなく、有効に活用する選択肢の一つとしてMBA取得が現実的な目標として浮かび上がってきた、ということです。
私自身、もともと勉強が好きだというところがありますので、MBA取得を考える際には司法書士や税理士など全く別の資格を取得することも検討しました。そのなかでやはり、まずは昔から取得したいと考えていたMBAだろうと思い選択しました。ほかの資格についても今後取ろうかなと考えています。
すべてを教科書通りに運用できるわけではないが、授業でのちょっとした議論や気づきが現場で思わぬ効果をもたらす
どういう活用イメージをもって取得を決断しましたか
業務上、MBAで学ぶ知識は比較的仕事に直結しやすいという印象を持っていました。これは前述のように、国内MBAで得た学びが実務で大いに役立った経験があるからだと思います。フレームワークを文字どおりそのまま当てはめる場面は正直それほど多くはないものの、企業ごとに咀嚼してカスタマイズし、応用して使うケースは少なくありませんでした。とはいえ、すべてを教科書通りに運用できるわけではなく、現場の制約や企業文化に合わせて柔軟に設計する必要があります。その種の翻訳力がむしろ重要だと感じています。
また、自分の知識をアップデートしたいという思いも大きな動機でした。社会経済の構造が大きく変わる中で、新しい知見や方法論を体系的に学んでいくことは、会社としても、ひとりの社会人としても生き残っていくために不可欠だと考えています。本や記事から独学する手段もありますが、著名な先生方の講義や学生同士の討議を通じて得られる学びには、また別の深みやインパクトがあるように思います。実際、授業でのちょっとした議論や気づきが現場で思わぬ効果をもたらすことが何度もあり、そうした経験を期待してMBAという学びの場を選んだという側面があります。
オンラインで受講できることは最も重要な条件。通常業務に大きな支障をきたすことがあまりなかった
スクール選びの優先順位とその理由は
学び始めた時期がコロナ禍だったこともあり、オンラインで受講できることは最も重要な条件の一つだったように思います。結果論ではありますが、オンライン学習により通常業務に大きな支障をきたすことがあまりなかったため、選択は概ね正しかったのではないかと感じています。
また、学びを英語ベースにしたことも重要な要素でした。仕事上、海外企業とのやり取りが多いため英語を使う機会自体にはそれほど抵抗はなかったものの、実務の現場で十分に通用するかと言われると、いまだに心もとない部分があるのも事実です。英語でMBAを学ぶことでそうした抵抗感を少しでも薄められれば、という期待はありました。
また入学要件についてもTOEICでよかったので、いい意味での手軽さに魅力を感じました。
なぜ海外MBA、かつAACSB取得の米国MBAである必要がありましたか
AACSB認証自体は、私にとってそれほど決定的な要素ではなかったように思います。どちらかと言えば、海外でのMBAであること、そして自分がかつて留学した米国のMBAである点のほうが重視されました。正直に言えば、AACSBは付加価値の一つに過ぎない、という感覚が近いです。とはいえ、認証が持つブランド力やネットワーキングの効果が全く意味を持たないわけではなく、場合によっては有益に働くこともあるだろう、と考えています。
オンラインでも対面と変わらない学びを得ることは可能
オンラインであることをどう考えましたか
スクール選びの優先順位でも触れたように、私にとってオンラインで受講できることは最も重要な条件の一つでした。ウイルスを家庭や職場に持ち込んでしまうリスクは極力避けたかった、というのが正直な事情です。
とはいえ、対面でのMBAを実際に経験している身としては、状況によっては対面形式のほうが優位に感じられる場面もあったので、一長一短だとも思います。オンライン学習は利便性が高い反面、自分自身による学びのマネジメントがより重要になるように感じます。主体性を欠いた受講になってしまうと、単に講義を消費するだけに留まり、学生同士の深いディスカッションや双方向的な学びの価値が半減してしまう危険性があるためです。
ただし、UMass MBAにおいては対面に近い学びが得られる場合も多かったため、どちらが優れていると単純には言い切れないというのが所感です。自分の取り組み方次第で、オンラインでも対面と変わらない学びを得ることは可能だと思います。
開始前の英語力は
米国への留学経験があり、仕事でも英語を使う機会が多かったことから、日常会話や一定レベルのビジネス英語には問題なく対応できる程度の英語力はありました。ちなみに、過去にTOEICで960点を取得したこともあります。
とはいえ、こうした実務ベースの英語力と、MBAで求められる英語力は質的にかなり異なる印象を持ちました。私は会話の方が得意なため、文章も口語文寄りになってしまうので、これを直すことに苦労しました。文章の構造そのものや使うべき語彙も異なるため、レポート用の文章に直していく作業に時間がかかりました。
また、実際に多くのレポートを書いていく中で、適切な表現がぱっと出てこずに苦労する場面が少なくありませんでした。翻訳ソフトを補助的に使うこともありましたが、原文は自分で書いているにもかかわらず、翻訳ソフトを介すとAI生成率が高まってしまい、レポートの提出要件を満たさない結果になってしまったこともあり、やや複雑な思いを抱いたものです。
翻訳ツールの精度向上により、多少英語力が弱くても受講自体に支障は出にくくなっているのは事実だと思いますが、それでもUMass MBAを心から楽しみ、議論に深く関わるためには一定の英語力が求められるのではないかと感じます。
AACSB認証の米国MBAである点やサポート体制を考えると、学費はそれほど高いとは感じません
許容できる費用とその考え方は
費用についての考え方は個人差が大きく、一概に正解を出すのは難しいように思います。もちろん費用を抑えられるに越したことはありませんが、いわゆる「安かろう悪かろう」では本末転倒になりかねません。これは、授業がどんな内容であっても結局は自分次第だという意味です。私の場合は、仕事の都合上すべてをストレートに取得するのが難しいという前提で、数科目をWithdrawalする可能性も見込み、追加費用が発生することを織り込んだ予算を組んでいました。
AACSB認証の米国MBAである点やアビタスのサポート体制を考えると、提示されている学費は個人的にはそれほど高いとは感じません。とはいえ、何を高いと感じるかは人それぞれで、資金的余裕や学習計画との兼ね合いで評価が変わってくるだろうというのが率直な所感です。もちろん実際に留学して学ぶことと比べれば費用はかなり抑えられますが、オンラインと留学とでは得られるものが全く違うので、同じ土俵で考えるのは違うかなと思います。
コストと得られる価値のバランスをどう見るかによりますが、妥当な費用感であったかと思います。
基礎、上級の二段階式カリキュラムをどう受け止めましたか
個人的には、二段階式カリキュラムの必要性はそれほど高くないように思います。基礎課程を履修したのがかなり前のことで細部は思い出しにくいのですが、上級を学ぶにあたって「基礎が全くないと成り立たない」というほどの差は感じませんでした。とはいえ、学習には慣れという側面もあり、基礎で学びの土台を作っておくことで上級でより効率的に力を伸ばせる、という見方も一理あるように思います。
また、UMass MBAの醍醐味は上級課程であることは間違いありません。チームで課題に取り組むので傍観者になることもできますが、いかに自分が一つ一つの課題に関与していくかが重要だと思います。分からないことにもどんどん飛び込み、時には恥ずかしい経験をすることも大切です。そういった経験を積むことで、自分にとってのMBAの価値も高まっていくのだと思います。
印象に残っている科目とその理由は
おそらく「OF(Operations Fundamentals)」だったと思うのですが、Excelを用いる課題に苦労した覚えがあります。決してExcelが極端に不得手だったわけではないのですが、設定がうまく噛み合わずに明らかに誤った結果が出てしまい、どこをどう直せばよいのか分からないという状況に何度か陥りました。正直なところ、今でもあのときの原因が完全には解明できていないのが実情です。
上級課程の科目は総じてディスカッションの比重が高く、年齢や性別、国籍の垣根を越えた議論を重ねられたことは非常に有意義でした。その中でも、総括的な位置づけにあったStrategy Formulation and Implementationは特に印象深く、これまで学んだ多様な知見を総動員してレポートをまとめる機会を提供してくれたように感じます。個々のフレームワークや理論は単体では限定的でも、それらを組み合わせることで初めて実務に近い示唆が得られることが多かったと思います。
グループのダイナミクスで学びの質が大きく左右される
多業種、職種の同期との学びはどうでしたか
配属されるグループによって随分印象が変わるというのが率直な感想です。ほとんど発言がなく受け身のまま進むグループに当たると、正直少し残念に感じることがありました。逆に、議論が途切れずにどんどん深まっていく場面に居合わせると、「ここまで考えているのか」と気づかされることが多く、そういう回は本当に学びが濃くて楽しかったように思います。グループのダイナミクスで学びの質が大きく左右される点で、ここは教育設計上の難しさを感じさせるところでもあります。
上級課程では、結果的に日本人だけのグループにまとめられてしまうことが時折ありました。もちろんコミュニケーションは取りやすいのですが、個人的には、多様な視点に触れる機会の方が大切だと感じます。多国籍のグループに入りたい場合は、事前に担当教授へ「多国籍グループでの参加でも構わない」という旨を伝えておくのは有効な手立てかもしれません。例えば、課題テーマとなる国がインドであればインド人、中国であれば中国人がグループにいれば、表面的に調べただけでは分からない、実情に合った深い学びを得ることができます。
英語でのアウトプットに苦労しませんでしたか
実務ベースの英語力と、MBAで求められる英語力は質的にかなり異なるように感じ、特にレポート作成の場面では相当苦労しました。作成したレポートをいったんすべて消して、最初から書き直すということを何度も経験したのを覚えています。面倒ではありましたが、繰り返すごとに文章の質や表現の精度が明らかに上がっていくのを実感でき、英語の言い回しを含めて非常に貴重な勉強機会になったように思います。
以前よりビジネスを見る視野が広がった
入学前の期待値にあっていましたか、また入学前の課題感と活用イメージは叶いましたか
総じて、期待値を上回る学びがありました。一流と呼べる教授陣から直接学べたことは大きく、以前よりビジネスを見る視野が広がったという実感があります。教科書通りの内容を話すだけでなく、背景や根拠についてもしっかりと教えていただけましたし、質問をしても期待以上の返答が返ってくることが多く、とても良かったです。
また、年下の学生からは私の世代では思いつかないような新鮮なアイデアが出ることが少なくなく、そうした刺激も学びの価値を高めてくれたように思います。日常業務だけでは触れられない気づきや示唆を数多く得られた点で、期待以上だったと言って差し支えないのではないかと感じています。
最近のケースを分析する中でも新たな知識を取り入れる機会に恵まれ、それらをさまざまな企業に応用できるのではないかというイメージが持てるようになりました。今は業種を超えて使えるような自分独自のフレームワークを構築できないか検討しています。
「この人は凄い!」と感じた学生(同期に限らず)はいましたか
個別の名前は挙げられませんが、学んだ理論をそのまま当てはめるのではなく、各事象に応じて適切に修正を加えながら応用している学生が多かったように感じます。そうした柔軟な応用力に触れることで、自分自身も刺激を受け、切磋琢磨する機会になったのは非常に貴重な経験だったと言えます。
同期生とのコミュニケーションは続いていますか
数名の仲間とのやり取りは現在も続いています。機会があれば実際に会って顔を合わせられたら、個人的にはとても嬉しく思います。そんな機会が訪れることを楽しみにしています。私は外国の方とのやり取りも多かったので、そういった方々とも、いつか直接お会いしたいなと思っています。
MBAの修了は一つの節目に過ぎず、むしろここから学びを現実に落とし込む段階
学びが実務にどう役立っていますか
まだ目に見える具体的な変化が生じているとは断言できませんが、学んだことをこれからの仕事や生活に活かしていくイメージは持てています。人間力が上がったと感じますし、MBAを修了したということが自信のひとつにもなっています。
MBAの修了は一つの節目に過ぎず、むしろここから学びを現実に落とし込む段階だと考えています。
学位がキャリアアップ、転職に活きていますか
自営業のため、現時点ではキャリアアップや転職という観点での大きな変化は特にありません。ただ、数年前から事業譲渡の検討を進めており、機会があれば改めてサラリーパーソンとして自分を試してみたいという思いも抱いています。ひょっとすると近い将来に今回の学位がそうした選択肢で活きてくることがあるかもしれません。ちなみにこの記事を読んで雇ってみたいと思われた方がいらっしゃれば、ぜひご一報ください。
やらないで後悔するよりはやってみようという割り切りで一歩を踏み出しました
これから目指す方へのアドバイス、激励をお願いします
正直、学業と仕事の両立は想像以上に大変でした。平日は毎日3時間、週末は10時間くらい勉強に費やしていたと思います。とはいえ、その苦労を上回るだけの得難い経験を得られたのも事実です。反対に、どうしても時間がなくて妥協してしまった課題については、今でも後悔があります。ただ課題をこなすだけではなく、そこから何をどれだけ学び取れるかという部分に、UMass MBAの価値があると思います。
UMass MBAに挑戦する際は、本当に最後までやり切れるのかと自分でも半信半疑なところがありましたが、やらないで後悔するよりはやってみようという割り切りで一歩を踏み出しました。その選択が結果として意味を持ったようで、今では間違いではなかったと確信を持って言うことができます。
後悔しても時間は巻き戻せません。UMass MBAで得た学びは、少なくとも私自身のこれからの活動や判断に確かに影響を与えると思います。迷っている方がいれば、勇気を出して一歩踏み出してみてください。新たな世界が皆さんを待っています。