これまでのご経歴をお教えください
大阪大学の経済学部を卒業しました。卒業年に公認会計士二次試験に合格し、大手監査法人入社。会計監査で経験を積み、入社4年目以降はアドバイザリーを中心とした業務を行っていました。4年前にグループ内のコンサルティング会社に異動し、現在は通常のコンサルティング業務の他、イノベーション創出や地方創生、大学でのイノベーション/スタートアップをテーマにした講座等を担当しています。
現在の所属では、地方の交通問題や町の人口減少など、社会課題解決系を扱うことが多いですね。例えば、地方の路線バスは運賃だけではとても成り立たないので、じゃあどうやって持続していくのかと。自家用車に頼りすぎると、運転免許のない人や免許を返納した高齢者、子どもなどが困ります。ヨーロッパの事例なども参考にしながら、街を活性化させたり市民の生活水準を上げたりできるような方法がないか、模索しています。難題ではありますが、やりがいのある仕事だと思います。
イノベーションの推進、サステナビリティという文脈においては、経済性と社会性をどのように両立させるか、というところに腐心しています。監査法人やコンサルティング会社では従来あまりなかった発想かもしれません。そして、今の私が自分のやりたいこと/やるべきと思うことをやりながら働くことができている理由のひとつに、MBAの取得があるかもしれません。
お勤め先の業界が、どのようなビジネスモデルかをお教えください
いわゆる会計系の総合コンサルティングファームです。受講当時は、ファーム全体では監査収入の方が多かったのですが、今はわずかですがコンサル収入の方が多くなっています。
サステナビリティ経営の重要性が増すなかで、社会課題をビジネスで解決するという流れがありますよね。今までのようにボランティア活動やCSR活動をするのではなくて、きちんと利益を上げながら社会貢献をするというのは、我々だけではなくほとんどの企業が掲げている課題です。私の場合は従来型のコンサルティングワークの他に、大学での授業や外部講演などでイノベーション創出や社会課題解決型ビジネスに関する情報発信をしています。
ご担当の職種の業務内容をお教えください
受講当時は会計監査と、会計に関連するコンサルティング業務を担当していました。会計関連のコンサルティングとしては、例えば国際財務報告基準の導入や決算早期化、リスク管理や戦略に関する業務を行っていました。コンサル業務は基本となる考え方の枠がありますが、先輩がやってきた事例をアレンジする力や、ロジカルシンキングが必要だったりするので、現場で鍛えられる部分が大きいです。ただ、最近はコンサルの世界にもAIが深く関わってきているので、AIを活用する力は若い人の方が強いこともありますね。
また、ファームのマーケティング部門の日本代表として、海外の同僚と話す機会もありました。個人的な興味から週末などに教育分野に関わっていたのと、法人のCSR活動の一環として次世代教育にも関与していました。
なぜMBA取得を考えられましたか。きっかけと課題感をお教えください
MBA取得を考えたきっかけは3つあります。
ひとつ目は、監査法人での自分のキャリアを考えるようになったことです。先ほど少しお話しましたが、やはり監査法人の中では私がやりがいを感じる業務で、短期的な収益に結び付かないような活動はなかなか評価されにくいという側面があります。自分のやりがいを感じており、社会のためにもいいと思っていることと組織の評価というジレンマについていろいろと考える中で、MBAを取得すれば何か少し変わるかも、という気持ちもありました。
ふたつ目は、海外の同僚と英語でマーケティングや戦略について会話できるようになりたいと思ったことです。私はいわゆるグローバルファームに所属していますが、本当の意味で英語で流暢にコミュニケーションを取れる人はそれほど多くはありませんでした。海外の同僚がMBA用語を使っている姿を見て、MBAを取りたいなと思いました。
また、単純に経歴書にMBAと書きたかったからです。MBAを持つ同僚をカッコいいと思ったんですよね。海外の同僚はMBAを持っている人が多いのですが、日本ではMBAホルダーは少ないので、希少性があっていいな、という思いもありました。
MBA取得によってキャリアやアイデアが通りやすくなっていると実感
どういう活用イメージをもって取得を決断しましたか
クライアントや海外の同僚と英語で会話をする際のベースにしようと思いました。また、経歴書にMBAと記載して箔をつけたいとも思いました。業務の関係で社外向けの資料に経歴を書くことが多いので、そこにMBAを書けたらいいなと。実際、MBA取得によってキャリアやアイデアが通りやすくなっていると実感しています。特に大学や自治体関連の方と話をする際には、信頼感を得るための最初のハードルが下がるように感じます。
スクール選びの優先順位とその理由は
上述の通り海外の同僚とのコミュニケーションスキルを身につけたいという動機もあったので、英語ベースということは前提条件でした。話すスキルは普段日本で喋っていることを英語に置き換えるだけなので、ある程度パッション的な部分もありますが、きちんとしたビジネス文章を書く機会があまりなかったので、みっちりやってみるのもいいかなと。
あとは知名度や難易度、費用なども検討しました。
なぜ海外MBA、かつAACSB取得の米国MBAである必要がありましたか
正直、特にこだわりはなかったのですが、「マサチューセッツ」の名前がいいなとは思いました。私の場合は箔をつける上で好都合だと思ったので、国内のMBAは考えませんでした。
通学時間ゼロですし、なんなら着替えなくてもいい(笑)
オンラインであることをどう考えましたか
米国に行かなくても受けられるのは大きなメリットだと思います。今でこそリモートはごく当たり前になっていますが、当時はまだリモートでの受講は一般的ではなかったので、ありがたかったです。オンラインで困ったり不便を感じたりすることもありませんでした。通学時間ゼロですし、なんなら着替えなくてもいいですしね。(笑)
開始前の英語力は
TOEICでは950点でした。20代のときは確か600点台だったのですが、ファーム内で英語の仕事をするうえで痛い目にあうことが何度かあったので、30代の時に勉強に力を入れました。日常会話は普通にできましたが、ビジネス用語はイマイチだったように思います。
基礎、上級の二段階式カリキュラムをどう受け止めましたか
受講前は特に考えていませんでしたが、実際に受けてみて、基礎を日本語で受講するのはよく考えられたシステムだなと感じました。いきなり英語でMBAを学び始めるのはハードルが高いと思います。特に聞き取りが難しいですよね。私自身も、日本語の授業でベースを学び、その後も日本語サポートテキストなどの補助教材を活用しながら学びました。
また、掲示板への書き込み、グループの作り方、テストの提出方法、オンラインテストなど、オンラインならではの作法がありますよね。これらを最初からすべて英語で理解するのは大変だったと思います。
印象に残っている科目とその理由は
3つ挙げさせていただきます。
会計系の科目:申し込みの個別説明の際に「会計系の科目が多いので会計士は楽」と聞いていたのですが、その通りでした。一方で、同僚の多くが会計系の科目で苦しんでいるのを見て、日本の会計・財務教育の足りなさを再認識しました。会社では経理でない限り会計に触れることがありませんよね。その流れで、管理職なのに会計が一切分からないという現状に繋がってしまっています。会計処理はできなくても、財務諸表は読めた方がいいと思います。この経験が今担当している大学での講義などに生きているということもあり、印象に残っています。
組織行動論:社内政治や気の合わない上司や同僚との付き合い方など、実際に苦労したことが題材として取り扱われていて、“なるほど”と思ったと同時に、その後の自社での行動に活かすことができました。専門職とはいえ、会計ファームの中でもヒエラルキーが存在します。ポジション争いのようなものもありますし、自分とは考え方が合わない人もいる。そういったときの付き合い方ですとか、考え方を学べたのがとてもよかったです。
品質管理系:製造業や製薬業の人は得意そうでしたが、自分は大いに苦労しました。勉強にはなったのですが、苦手なものに無理をしてチャレンジするのは止めよう、とも思いました。コンフォートゾーンを一歩踏み出そうという考えは大事ですが、踏み出しすぎるとストレスゾーンになってしまいますよね。コンフォートゾーンを少し広げてみて、ヤバいなと思ったらすぐにコンフォートゾーンに戻ってくる。私は、苦手な世界や厳しい世界に無理に飛び込んでいく必要はないと思いますよ。
他業種、職種の同期との学びはどうでしたか
様々なバックグラウンドを持つ同期との交流は学ぶところが多かったです。MBAを取りに来ているという時点で、かなりフィルターがかかっていますよね。「同じMBA取得を目指す」という共通の目標があるので、背景の多様性がありながら一定の同質性もあり、話題が合いやすかったです。
英語でのアウトプットに苦労しませんでしたか
言い回しや論文独特の作法に苦労しました。当時はGoogle翻訳や同僚に教えてもらったGrammarlyというツールに随分助けられました。今だと生成AIでしょうか。
私は日本語で書いて英語に訳すのではなく、最初から英語で書いていました。文法チェックやスペルチェックのためにツールを使っていた感じです。
苦労こそしましたが、在学中に英語力が上がった実感があります。文章のバリエーションが増えましたし、とにかく書く力が伸びました。
入学前の期待値にあっていましたか
あっていました。迷った時期もあったし、やっている時期は毎週の課題対応が大変でしたが、振り返るとやってみて良かったと思います。『迷ったら飛べ』ですね。
妻の“やってみたらいいんじゃない”の言葉も背中を押してくれました。
「この人は凄い!」と感じた学生(同期に限らず)はいましたか
成績優秀者は大したものだと思います。私は卒業だけが目標だったので、全科目B+以上取ることだけを目指していました。
入学前の課題感と活用イメージは叶いましたか
叶いました。入学当時はCVに書くことだけを考えていましたが、名刺に書いている同僚を参考に、自分も今では名刺に書いています。“公認会計士”と“MBA”を併記することで、第一印象でそれなりのインパクトはあると思います。本当はPhDも書きたいところですが、想像以上に大変そうなので今のところ保留です。
卒業から10年近くたっても繋がりがあるというのは嬉しい
同期生とのコミュニケーションは続いていますか
続いています。SNSでのやり取りがあるのと、たまに飲み会等で会っています。近況報告や趣味の話、受講時代の話なんかをします。卒業から10年近くたっても繋がりがあるというのは嬉しいですよね。
学びが実務にどう役立っていますか
実務ということでいうと、海外の同僚とのやり取りに役に立っています。MBAを取得したことで、同じくMBAを持っている同僚の意図を汲みやすくなりました。
あと、大学の講義ではUMassの教材のエッセンスを使うこともあります。モチベーション管理やイノベーションなど。会計は元々の専門ですが、教材の作り方などで参考にした部分もあります。
学位がキャリアアップ、転職に活きていますか
厳密には転職ではないのですが、同じファーム内での転籍(監査法人⇒コンサル会社)によって自己実現できているという意味では、大いに活きています。
当時から次世代教育に興味があり、業務の傍らとして実施していましたが、今は業務の一環として複数の大学での講義を行っており、とてもやりがいを感じています。
入学当時の状況を思えば、あのままでは今の会社を辞めていたかもしれませんし、以前の職場で今ほどの遣り甲斐をもって働けていたかはわからないので、違いは大きいです。やりたいことができるのであれば年収は下がってもいいくらいだと思っていたので、今はハッピーな状況だと言えます。
目指すところがあるのであれば、『迷ったら飛べ』のアドバイスを送りたい
これから目指す方へのアドバイス、激励をお願いします!
人生は一度きりだし、時が経つのは早いものです。今日のあなたが一番若い。
授業料は決して安くないし、毎週の課題も大変です。迷う気持ちも分かりますが、迷っている間にも時間は過ぎています。極端な話、申し込んで、どうしても続けられなかったら途中で辞めることもできますが、申し込まないことには何も始まりません。
目指すところがあるのであれば、『迷ったら飛べ』のアドバイスを送りたいです。