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マサチューセッツ州立大学MBAプログラム第9期卒業生
(2016年4月入学)
元Microsoft Corporation 現 米国大手IT企業
ご経歴、年齢はインタビュー時のものです。
私には、将来的にIT業界で経営者をやるという目標があり、その過程において次の二つの点で、MBA(経営学修士)の必要性を感じていました。
第一に、グローバルビジネスに通用するリーダーとしてのアイデンティティを確立することが挙げられます。2014年ごろから私は前職の米国Microsoft Corporationに所属し、アジアタイムゾーンで日本、中国、台湾、香港を統括する新規クラウドビジネスの立ち上げチームの責任者を担当しました。そこで私はさまざまな国の優れたリーダーの方々と会う機会に恵まれたわけですが、そうした方々の多くがMBAホルダーで、さまざまな文化・環境・マネジメントスタイルが激しく交差するビジネス環境において、MBAが生きた共通言語としてリアルに活用されていたのです。さらに印象的だったのは、私は、当時アジアタイムゾーンのクラウドビジネスの専任チームの採用マネジメントも担当していましたが、そこへの応募者の多くが既にMBAホルダーだったのです。中国やインド並びにアジア諸国では、日本ほど、ジョブ セキュリティ(雇用を確保する手法)が安定しない厳しい競争社会であるという現実と、外資系企業で働く事が珍しくない環境の中で、自分のキャリアや専門性をいち早く証明する手段として経営者以外にも広くMBAの価値が認知されていました。応募者の多くがMBAを持っているのに、マネジメントの立場にある私がMBAホルダーではない状況に、正直焦りすら感じました。今後ますますグローバリゼーションが進む多様性に富んだビジネス環境の中で、MBAを軸にビジネスリーダーとして自己のアイデンティティを早急に確立する事がベストだと考えたのです。
第二に、「IT業界は非常にシンプルで狭い領域だ」と、他業種のある経営者の方から貴重な助言いただき、もっと広い知見と視野を得る必要があると考えたからです。長くIT業界で仕事をしていると、ついつい自分たちが時代の最先端を行く先導者のような錯覚に陥り、無意識に、お客様のビジネスを理解する以前に、一方的なITの押し売りになりがちです。例えば、“最新テクノロジーを使うことで世の中はこうあるべきだ、働き方はITでこう変えていくべきだ、IoTやAIを使わない企業は時代に取り残される”というようなアプローチです。ITはあくまでビジネスの手段です。また、製造業やリテール業などのお客さまは、ITサービス業より遥かに複雑かつ変化の激しい環境の中でビジネスをされています。何より経営者の方々とお話する上で、網羅的にビジネスの定石を抑えておく必要がありました。現実問題として例えば、WACC(Weighted average cost of capital)を知らない方に、CFOの方と資金調達にまで踏み込んだ議論はできませんし、他にもZARAに代表されるアパレル業界を変えたSPA(specialty store retailer of private label apparel)のビジネスモデルを知らなければ、消費者の嗜好の移り変わりを迅速に製品に反映させ最適な在庫のコントロールの仕組みを提案するといった経営者が直面するビジネスチャレンジに刺さる提案はできないわけで、これは従来のIT企業のソリューション先行型提案とは全く異なるものです。
第一に、日本をはじめ、世界中のMBAプログラムの多くは米国やイギリスのMBAをお手本にしていますので、最新のMBAを学ぶのであれば米国やイギリスのものを学ぶべきだと考えました。また、アジアタイムゾーンで約3年ビジネスを経験し、私もそれなりにビジネスリーダーになってきたと思っていた矢先、ある方から、「欧米のビジネスを知らなければ、真のグローバルリーダーとは言えない」と言われたことがありました。激励のような、良い意味で言ってくれたのだと思います。こうした経験もあり、米国のマサチューセッツ州立大学(UMass)のMBAに自然と興味が湧きました。また、入学後に気がついた話ですが、米国に行くとUMassのことは大体のビジネスパーソンがご存知で、UMassのMBAを取っていると言うと「UMassね、良い大学だね。」と言っていただけたのです。結果的に、米国で通用する、つまりグローバルビジネスで認識されたMBAであること、AACSB認証した世界に通用するMBAである点も非常に重要だと感じました。さらに付け加えると、グローバルリーダーの資質として多様性を理解する必要がありました。私もアジアのビジネスを経験し、また米国に赴任した事で、感覚的に理解したつもりでいましたが、学問としては知りませんでした。UMassのカリキュラムには、さまざまな国のカルチャー、ビジネススタイルを学問として学べるクラスもあり、大変役に立ちました。
第二に、学生の質が高いと確信できたことが挙げられます。私は以前にグロービス経営大学院の単科課目を複数で履修し、また、青山学院大学出身として、青山学院大学のMBAプログラムも詳しく調べ、比較検討した上でUMassを選びました。社会人にとって、MBAは、日ごろ出会う事が難しい、多様なビジネスバックグラウンドをもつ方々との貴重な学びの場ですので、できる限り複数年を共に切磋琢磨する学生どうし刺激を受け会える環境が望ましいと考えました。実際、UMassは志の高い社会人経験の豊富な方々が多く集い、教授陣講師陣の質も非常に高かったのです。また同期の学生の中にも、私も含めてシニアなポジションの方々もたくさんいらっしゃり、そうした方々との交流を通して得られた学びは計り知れません。
第三に、私は元々、理系出身であった事もあり、アカウンティングやファイナンス分野に苦手意識がありました。しかし、UMassはもちろんのこと、プログラムを提供するアビタスはUSCPA(米国公認会計士)講座を開いているビジネススクールとして定評があり、アカウンティングやファイナンスのカリキュラム内容については信頼が置けました。結果、UMassのファイナンスを学ぶことで、お客さまのインダストリーや業種・業態を財務諸表やマネーフローの観点から、どこにボトルネックがあるのかをスムーズに分析することができるようになりました。
第四に、多国籍の学生が在籍していることや、多様性の観点で女性比率が高いこと、ひいては仕事との両立がしやすいと感じたことも選んだ理由です。例として他のMBAのスクールに比べて、UMassは女性の割合が高いと伺いました。国内のMBAの女性比率は大体25%に対し、UMassは33%、3人に1人が女性です。アジアタイムゾーンや米国で働いていると、多様性については、性別よりも、年齢、宗教、価値観、働き方などにプライオリティーがありますが、UMassの女性学生の中には、仕事はもちろん、家事、出産、子育て、介護をこなしながらMBAを受講され、優れたリーダーシップとチームワークを発揮される方が多く、経営者を目指す私にとって、今後、ダイバシティを考える上で大きな影響を与えてくれたと思います。
最後に、英語ベースのカリキュラムも大きな魅力の一つです。「MBAに、私の英語力で大丈夫ですか?」というご質問をよくいただきますが、私は「MBAを通して英語もうまくなったら最高ですよね!」とお答えしています。約2年間、日々、大量に英語で読み書きしていれば、嫌でも上達します。そういう意味で一石二鳥です。「英語はツールだ」という話をしますが、それが非常に重要だということも事実です。私自身は英語にそれ程、苦手意識はありませんでしたが、それでも数多くの英語で書かれた財務レポートを分析し、さまざまなケースに対する打ち手を英語で四六時中考える日々の中で、自然と英語圏に特有のロジカルシンキングも強化できたと思います。
MBAで学習したいくつかの科目を例に挙げて紹介します。まず、「Operations Management」という科目で、主に製造業分野でのオペレーションと管理のためのさまざまな手法と意思決定のテクニックを学びました。具体的には、プロセス戦略、プロセス分析、品質とパフォーマンス、制約管理、継続的改善、SCM、在庫管理などです。例えば、EOQ(Economic Order Quantity)を学ぶことで、お客様と経済的な部品の発注量を話し合う際、安全在庫や発注点という考え方についても掘り下げるなど、個々のお客さまのサプライチェーンの改善に深く向き合う事ができるようになりました。「Strategy Formulation and Implementation(SFI)」という科目では、架空のグローバルのシューズカンパニーのCxO(企業活動における業務や機能の責任者の総称)のポジションを4人1組のチームで、それぞれ役割を決めて、競合を意識しながら、毎年の経営状況分析から経営判断を行うという経営シミュレーションを行いました。自社戦略をベースとした各地域における需要予測に始まり、販路拡大計画、製造計画、製品開発、設備投資、輸出入コスト、税金、資金調達、人件費、宣伝費など、普段、意識したことのない大変多くのビジネスパラメータの関連性を一つ一つ吟味しながら判断し、最終的に各期末にEPS・ROE・Credit Rating・Image Rating・Net Revenue・Net Profit・Ending Cashがそれぞれの会社の成果として算出されました。これは、MBAの全クラスの総まとめとして位置付けられたクラスで、経営者を目指す私にとって、まさに経営オペレーションのシミュレーションという貴重な体験となりました。製造業やリテール業では、ITサービス業に比べ、将来予測の難しい経営判断が必要な場合があるわけですが、SFIを学ぶことで例えば、グローバルサプライチェーンの効率化という課題に対して、“調達ロジックのこの係数の最適化を実現することで年間約3億円の在庫削減が期待できるため、この係数のリアルタイムかつ将来予測の精度を高めるために、3千万円を投資してAIを導入しましょう。”という提案ができるようになりました。総じて、お客さまのビジネスを理解するためのノウハウがMBAには凝縮されています。さらに、経営者を目指す上での心構えと定石を知ることができたのも良かったです。さまざまな意思決定において、どういう検討要素やフレームワークやロジックが適切であるかを知っておくことが重要です。例えば投資計画を考える際、NPV(現在価値)やIRR(内部収益率)というロジックがあるのですが、これを知らない人に投資判断を任せる事は難しいでしょう。その他にも「Operations Fundamentals」というクラスでは、エクセルを使い経営分析を定量的に示すための多くのテクニック習得することで、日々の業務にプラクティカルに役立っていますし、「International Management」のクラスでは、ZARAやスターバックスなど、非常に適用範囲の広い良質なケースから、さまざまなフレームワークを組み合わせて自分なりの分析と打ち手を考える応用力を身に付けることができました
上級課程に入るタイミングで、私は米国に転籍しグローバルの責任者を務めたため、月・火は米国と日本のタイムゾーンベースで仕事をし、残りを米国とヨーロッパのタイムゾーンベースという風に、かなり変則的なワークスタイルを取り入れていたので、オンラインの特性を生かして柔軟にMBAのクラスを受講することができました。また、上級課程中は基礎課程よりもグループワークや密なディスカッションが必要になってくることが多々ありました。実際、私は米国の2年間の滞在中に、5回日本に帰国し、それと合わせて、グループワークをこなし、同期生との飲み会にも積極的に参加しました。 同期のメンバーからは、「おまえは日本にいる友人より多く会っているよ」と言われたこともありました(笑)。オンラインだとインタラクティブなディスカッションは難しいと思われがちですが、全くそんなことはありませんでした。実際のビジネスでも、私はグローバルのマネージメントメンバーやお客様とほとんどインターネット上で仕事をしていましたので、むしろオンラインでMBAを受けるということはものすごく実践的でした。
一つ目は、自分の信念に従った目標を定めることです。自分が何を目指すのかという信念を、ぶれずにきちんと持ってやり通すことが何よりも大事です。私の場合は、“グローバルリーダーになる”ということを家族に宣言しました。また、各クラスを受講する前にそのクラスで習得すべき項目を自分の机の前に書いて張るなどしました。MBAは決してやさしいものではありません。莫大な時間と労力を必要とします。ですから、常に自分の向き合う試練に対して、その意味を明確化し、実際に行動する事が大切です。私は自らの意思と行動によって、MBA取得期間中に家族を連れてアメリカに転籍することにも成功しました。
二つ目は、かけがえのない仲間を得てほしいということです。MBAの肩書だけを取ろうと思えば、もっと効率の良い楽な選択肢があると思います。エグゼクティブMBAや日本語だけの短期取得型のものなどです。UMassを選んだ理由でも述べたとおり、忙しい中でビジネス経験が豊富で、意識レベルがものすごく高い人たちと2年~3年過ごすことは大きな財産となるはずです。私の場合、製薬や製造、リテールなどの異業種の方々と交流する事で、新たな学びだけでなく、“自分も頑張ろう!”と勇気づけられることも多々ありました。その関係は、MBAを卒業した今でも続いています。知識を得ようと思いチャレンジしたMBAでしたが、そこに集まってくる方々は皆さんそれぞれに人間力が素晴らしく、人として尊敬できる方々ばかりでした。一番思い出に残っているのは、コマンスメント(卒業式)で、仲間とひし形の帽子をかぶって、黒いガウンを着て写真を撮ったことです。リロケーション(グローバルな転勤)した際も、日本で送別会をしてもらって、メッセージ入りの色紙や、メンバーの集合写真の入ったマグカップなどをいただいたことも嬉しい思い出です。積極的に交流の場に参加し、知識だけでないMBAを十分に体験する事が、結果的にビジネスリーダーとしての人間力を養う上でも必ず役立つはずです。
三つ目は、30代、40代で挑戦することにも非常に価値があるということです。もっと若くしてやっておけばよかったという後悔もありますが、10年以上の実務経験にMBAでの学びをすぐに応用してみる事ができるのは大きなメリットではないでしょうか。また、管理職に就く方々が、MBAを取得する事で、組織全体の意識改革や業務効率化にもつながると考えます。 四つ目に、繰り返しになりますがグローバルなビジネスを目指すのであれば、MBAは絶対に勧めたいです。将来の世界における日本の経済力や国力といったテーマに関し、危機意識を持たれる方であれば、必然的にそのような思考になるのでしょうが、日本ではまだMBAの価値に対する認識に大きな個人差があると感じています。私は過去に中国ビジネスも担当しましたが、北京や上海などの都市部で働いている人たちは厳しい競争社会の中で自分のキャリアに対してとてもハングリーだと感じました。我々は昨今、圧倒的な勢いとスピードで成長を続ける中国を中心としたアジア経済圏の中で、日本企業の展望を担っているわけで、もっとグローバルな視点で多くのビジネスパーソンにMBAを目指してほしいと思います。
後に、多くの方が“MBAを取ったら新しい挑戦をしたい”という話をされますが、実はMBAを取りながらでも次の挑戦は十分にできるということを激励の意味でお伝えしたいです。MBAを取ること自体もそうですが、グローバルリーダーを目指す上で、自分のコンフォタブルゾーン(これまでの成功体験)を自ら破壊し、チャレンジしなければならないという念いがありました。MBAのManagerial Leadershipというクラスを受講中、自分の今後のキャリア形成について客観的なアドバイスを得るために自分の履歴書を持って実際にシリコンバレーのいくつかのユニコーンカンパニーのエグゼクティブの方々とお会いする機会をいただきました。彼らのフィードバックは、温くも厳しく的確なものでした。「君は今の会社だから成功できたのではないか?」、「君はキャリア的には大成功しているようだけど、本当にスタートアップで経営者として成功できるのかな? 経営者として何を成し遂げたいの?」、「凄いのは会社であって、君自身で何ができるの?」つまり、ビジネスをゼロから立ち上げられる経営力を問われたのです。まさに衝撃でした。このまま今の環境に居続けても、自分のゴールにたどり着けない現実を思い知らされました。MBAを通して何を得るかは皆さん次第です。ですから、MBAをやりながらでも、積極的に自分の目標に向かってチャレンジし、軌道修正していくことを、私はお勧めします。結局、私の場合、基礎課程修了後に家族を連れて米国に転籍し、MBAの最後のクラスを受講するタイミングの2018年7月に15年務めた会社を退職し、現在の会社に転職しました。客観的にみても大変だったと思いますが、そうした最中でも他にIT系の資格を2つ取得し、心理学系の資格とブロックチェーンの専門課程も取得しました。また、余談ですが、精神力と体力向上を目的にキックボクシングもやり始めました。ですから、決してMBAを取ってから何とかではなく、取りながら色々なことにチャレンジしていけば、良いのではないかと思いますし、それが社会人のMBA取得の醍醐味だと思います。
ボストンでの卒業式に参加し、苦労を共にした仲間と喜びを分かち合う達成感を皆さんにも是非味わってほしいです。