自分でも事業をやってみたいと思った。エンジニアから事業経営の知識を修得するためにMBAへ。
これまでのキャリアについてお聞かせください
大学では電気電子工学を専攻し、卒業後は自動車メーカーにエンジニアとして入社しました。四輪も二輪も好きで、当時はバイクでアマチュアのレースに参加したりしていましたね。とにかく自動車に興味があって、自分も開発に携わりたいという思いが強く、技術者という立場で10年ほど関わらせていただきました。その中でEVの先行開発に携わっていたのですが、自分が開発したものが日の目を見なかったり市場に出ても少量だったりで、社内の開発関係者からは評価されても事業という面では未熟なままでもどかしさを感じていました。
そして、私の次のキャリアとして商品や事業の企画側に携わりたいと思うようになり、上申を続けていたらアメリカ・シリコンバレーのリサーチ拠点立ち上げの機会とオファーをいただきました。こうして、海外駐在も含めて5年ほどは、新技術や新事業のリサーチと企画提案に従事することになります。シリコンバレーには様々な人種が集まっており、ある程度の英語レベルでも積極的に自分の主張ができないと特にビジネスでは損をする可能性があるので、言語や職種の違いだけではないコミュニケーションスキルも学びました。これら新技術や新事業のリサーチ活動は次の技術活用や新事業開発に繋げる必要があり、沢山の社内外関係者と話をする中でも事業・経営側の知識を増やしてもう一歩先の議論に進めたいということで、MBAの取得を目指すことにしました。
私はMBAの基礎課程と上級課程の間で丸々1年休んでいるんですが、このときに自動車メーカーから教育系ベンチャー企業に転職しています。自動車メーカーでは新事業開発への道作りが特に難しく、少しずつは進んでいる感じはありましたが合わせて自身の事業開発の経験不足にとてももどかしさを感じていたため、外に出て小規模でもスピーディに事業や経営の経験をすることを決断しました。そこで知人より、技術教育の経営者というポジションを紹介していただき、財務状況がかなり苦しい状態の会社でしたがそのサービス自体の価値に魅力を感じ、自分には成長のチャンスの方が大きいと思って飛び込みました。その後、ターゲットを絞った法人営業と研修サービスの強化により、その事業の実績と収益を伸ばすことができました。しかしその先のスケール化と資金調達に苦しみ、事業売却と会社清算の道を選択しました(ここまで約1年)。その後はこの事業売却先のIT系ベンチャー企業のコーポレートサービス部CFOというまた新たなキャリアに携わることを決め、時間を作ってMBAにも復帰・卒業しました。
なぜMBAの取得を考えましたか?きっかけと課題感を教えてください
シリコンバレーへ行って様々な企画提案をするなかで、エンジニアの知識だけでは足りないなと感じたのがきっかけです。帰国後は自分で事業を企画するだけではなく開発してみたいと考えるようになり、よりその思いが強くなっていました。経営全般の知識を得ること、幅広い経営の視点をもつこと、そしてそういった知識を持っているという証明書的な意味合いとして、MBAの取得を考えました。MBAの所持は、自分が知識を持っているアピールになり、関係者と事業の議論を進めるうえでの基礎もしくはアドバンテージになると思います。
どういう活用イメージをもって取得を決断しましたか
先ほどお話したように、自動車メーカーでの海外駐在時に、アメリカの海外拠点から会社の将来に活かせるような新技術や新事業のリサーチや企画提案を行うようになりました。それを実現するために社内外の多種多様な方々と多くコミュニケーションをとるようになったことで、会社の組織・事業・経営などの視点から考える機会が増えてきました。そこで当時はエンジニアであった私ですが、経営全般に対する知識を深めて業務(特に新事業の企画提案)に活かすため、また自身の意見を聞いてもらうための後ろ盾として、MBAを取得することを決意しました。
スクール選びの優先順位とその理由は何でしたか
仕事との両立面から見て、オンラインコースで通学や引っ越しが不要であることを優先しました。平日の勤務前後や休日など、仕事の空いた時間で学習でき、期間内の課題提出で評価してもらえる点も良かったです。 ほかには、当時既にアメリカのMBA入学条件をクリアしていたのも大きな理由です。学士課程修了でその成績がGPA3.0以上+TOEIC700点以上+実務経験が8年以上あるとGMAT免除(ただし、学校側が実務内容などから判定)で、これに当てはまっていました。
教育の質とグローバル活用の面から国際認証を取得している海外MBAを重視
なぜ海外MBA、かつAACSB取得の米国MBAである必要がありましたか
教育の質とグローバル活用の面から見て、MBAの国際認証(AACSBやAMAなど)を取得している海外の学校であることを重視しました。 また、アメリカ駐在期間中にある程度の英語力がついていたので、その英語力を落とさないこと、またアメリカでできたビジネス相手とのグローバルコミュニケーションに活用することに着目し、アメリカの学校がより好ましいと考えました。
オンラインであることをどう考えましたか
平日の通学やそれに伴う引っ越しが不要であることは大きなメリットだと思いました。クラスメイトとの人脈構築という点においては対面授業が勝ると思いますが、私の場合は既に同じ起業・経営マインドを持った方たちとのお付き合いがありましたので、優先度としては落として考えました。
基礎、上級の二段階式カリキュラムをどう受け止めましたか
結果的にとても良かったです。私は自動車メーカー在籍時に入学し、基礎カリキュラム終了のタイミングで転職しました。業種も職種も大きく変わり、まずは短期集中で仕事に注力する必要があったため、上級カリキュラムに進むのを1年ほど休止しました。途中で休みながらでも5年以内なら自分のペースで取り組めるということで、いい仕組みだと思います。 また、基礎課程において財務や会計などを日本語で学べたのも良かったです。私は日本のベンチャー企業のCFOですから、財務会計もアメリカではなく日本に則って行います。こういった場面で英語ばかり使うと、逆に伝わりにくい場面が出てしまうので、財務会計を日本語で学べたことは今に生きています。
印象に残っている科目とその理由を教えてください
基礎課程のOperations Fundamentals(OF)と、上級課程のCustomers and Markets(CM)でしょうか。 OFは私の中では「腑に落ちる」という感覚を得た科目でした。もともと仕事で営業的な判断を求められたり、提案や課題を出すときにもデータで示したりするのが当たり前だったので、分析のやり方としては苦になりませんでした。その上で、経営判断を行うときの定量的な分析手法を学べたのが大きかったです。ディシジョンメイクを客観的に評価することで、多くのステークホルダーに納得感を与えることができる武器を手に入れることができたと思います。
上級課程のCMは基礎課程のマーケティングと違い、シミュレーションツールを使って仲間と議論して数値を変えながら、マーケティングを実践的に進めていくのが印象に残っています。特に、会社の収益に大きく影響するマーケティング戦略をシミュレーション形式で段階的に取り組んだことで、競合他社(授業で言う他グループ)の戦略の先読みとその対応を学べました。そのほか、グループ内で意思決定に向かうまでのコミュニケーションスキルを実践的に学べたことも大きいです。授業であればある種ゲーム感覚で、みんなあまり主張しすぎずに丸く落ち着きますが、本当の実践ではもっともっと複雑でストレスフルになるんだろうなと考えたりもして。声を上げるタイミング、その声の大きさ、データがそろっているかどうか、周りにいる人がどんな性格かなど、現実世界では不確定要素が多いですよね。だから机上で取り組むのが無意味なのではなく、むしろそうだからこそ、CMでまずは大事なことからシンプルに考えることの重要さを感じました。
多業種、職種の同期との学びはどうでしたか
課題に対して、同期の方々の様々な視点からの回答を見て、自身の視座が高まり発想も柔軟になることができました。MBA前からシリコンバレーでいろんな業種の方とお付き合いしていたので、ある程度分かることが多かったのですが、大企業あるあるですとか、逆にこんな課題がありますというような現実的なお話を聞けました。実際の課題に対しても、それぞれの立場の方がこういう工夫をしていますというお話を聞けたのがとてもためになりました。 そういった意味では、今回のスクール選びでは優先度を下げた対面での関わりがあれば、こういった部分をもっと深く聞けたのかなという気はします。オフラインであれば、授業後の勉強会や飲み会のような集まりでもっと深堀りできたのかなと。欲を言えば、そういった機会があればさらに良かったかもしれないですね。
英語でのアウトプットには苦労しませんでしたか
後半で苦労しました。 入学から基礎カリキュラム終了までは苦労を感じませんでした。当時は仕事で英語を使う機会もありましたし、英語でインプット・アウトプットを行うこと自体にモチベーションを感じていたのもあります。 ところが上級カリキュラムの時には転職しており、仕事で英語を使う機会が極端に減ってしまっていました。
アメリカのMBA取得を目指したのはグローバルで活躍するため、そして自分の英語力をキープするためだったのですが、その英語活用のモチベーションが崩れてしまっている状態でした。英語活用へのモチベーションが下がると、単語一つを調べるにしても腰が重い感じになってしまって。この先もこの英語を使うことはないかもしらないと思うと、なかなか辛いものがありました。
入学前の期待値にあっていましたか
はい、合っていました。
アビタスさんにさらに期待する点を挙げるなら、コミュニティ形成の部分ですかね。今はコミュニティ形成に関しては同期同士で声を掛け合ったり、卒業生の方が率先してやってくださったりしています。この部分を、アビダスさんがリードして企画等を考えてくださったら、みんな喜ぶと思います。
「この人は凄い!」と感じた学生(同期に限らず)はいましたか
オンラインでのコミュニケーションが多かったのですが、受講生が活用していたTeamsのスレッドで自ら先導して情報展開やイベント企画されていた方々は素晴らしいと思っていました。
もちろん技術的、学問的にすごい方もいらっしゃって、これはレポートを拝見してすごいなと思っていました。私自身が元々ロジカルな人間なのでロジカルさに魅力を感じることが多く、しっかりとデータを参照しながら、根拠となるデータもそろえてレポートを書かれている方はすごいと感じましたね。こういうことがしっかりできる方って、それだけに終わらず、ほかの方々の課題に対する回答に対するコメントにも自分の意見を持たれているんです。さらにプラスアルファの補足があったり、フィードバックをされていたりするので、すごいなと思いました。
入学前の課題感と活用イメージは叶いましたか
英語での活用の部分だけまだ実現できていませんが、今は経営側の人間として仕事ができているので、学んだことの活用・実践がイメージ以上に実現できています。特に財務会計はダイレクトに知識が役立っています。会計基準は少し違ってくる部分はありますが、大元の考え方が一緒なので生かせていますし、あとその財務的な分析と戦略といった考え方も役立っています。ただそれを、関係者にどう伝えてどう動いてもらうかを実行することが難しいのですが。
同期生とのコミュニケーションは続いていますか
交流会に参加させていただく程度です。今後も継続的にコミュニティに参加させていただき、いつかは密なコミュニケーションまで発展できる方と出会えればと考えています。
学びが実務にどう役立っていますか
先ほどもお話させていただいた通り、会計・財務に関するところは実務に直結しています。また小さな会社ですので、組織やオペレーションなど大企業の戦略や動かし方とは違うことも多いですが、生かせる部分も十分にありますね。
学位がキャリアアップ、転職に活きましたか
元エンジニアが経営を始めるとなったときの、自信には繋がりました。これからは会社や事業の成長に直接寄与することで、更なる自信をつけていきたいです。
知りたいと感じた時に学ぶことが、一番吸収力が高く有意義な時間の使い方になる
これから目指す方へのアドバイス、激励をお願いします
普段の生活や仕事の中で知りたいと感じた時に学ぶことが、一番吸収力が高いですし、有意義な時間の使い方になると私は思っています。経営に関する学びであっても、自身の業種に縛られることなく、興味関心が強くなったらまずは調べたり学んだりすれば視座が高くなります。
私自身、現状英語が生かせていないというお話はしましたが、トータルとしてはMBAを学んでよかった、リターンの方が大きかったと感じています。ベンチャー企業の代表やCFOをやるにあたって、出資される方へのアピールになっているのも感じますし、実際MBAを取っているなら基礎があるんだろうと評価されると思います。 MBA取得が自信になるのはもちろん、アピールにもなるので、使える環境にいる方やこれから使える環境に行きたいという思いをもっておられる方なら、ぜひ取得に向けて動き始めてください。特に今は、場所やコストなどのハードルが下がっているので、チャンスだと思います。