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IPOとは新規株式公開・株式上場という意味の言葉です。
IPOと上場は厳密にいうと異なる意味を持ちます。しかし、IPOと上場との違いが分からないという方もいるのではないでしょうか。
本記事では、IPOの概要や上場との違い、直接上場やPO(公募)といったIPOと関連のある言葉との違いを解説します。また、IPOのメリット、必要な基準についても見ていきましょう。
目次
IPOとは
IPOに関連する言葉との違い
IPOの立場別のメリット・デメリット
IPOにおける「株式市場」の種類
IPOに必要な基準(1)「形式要件」
IPOに必要な基準(2)「実質審査基準」
IPO準備に必要なスケジュール
IPOに向けた内部統制の整備
IPOを行うためには、まず実質審査基準を固めよう
IPO(Initial Public Offering)とは、新規株式公開・株式上場という意味です。株式会社が自社の株式について証券取引所(市場)を通じて流通させることで、初めて誰でも自由に売買できるようになります。
IPOのためには、「形式要件」と「実質審査基準」の2種類を満たす必要があります。
形式要件とは、企業が株式上場を申請する際に必要とされる条件のことで、株主の数や株式の流通量、企業の時価総額や利益などが含まれます。
実質審査基準とは、企業が基本的な形式要件を満たした後、上場審査に進む際に参照される評価の基準のことです。
IPOに関連する言葉は、以下の3つが挙げられます。
ここではIPOに関連する3つの言葉との違いを詳しく見ていきましょう。
IPOも上場も、「未上場企業が新たに証券取引所へ上場することで、一般投資家が株式売買をできるようになる」という点は同じです。
IPOと上場の違いとは「新規株を発行するか、しないか」という点です。
IPOは「上場して新規の公開株式を発行すること」ですが、上場は「証券取引所において企業が保有・発行する株式の取引が認められること」とされています。そのため、必ずしも新規の株式発行を伴う必要はありません。
ただし、実際には新規上場する際に新規株式を発行する場合が多く、IPOと上場は同じ意味として使われるケースも多く見られます。
直接上場は上場前の株式のみで上場し、新株は発行しない手法です。
IPOとの違いは、その目的が資金調達ではない点です。資金調達が目的ではないため、新株の発行費用や上場時にかかる引受手数料などのコストを削減できます。
しかし、資金調達によるメリットを享受できず、株式の価値決定やリスク評価が困難になるといったリスクが懸念されます。
PO(公募)とはPublic Offeringの略称です。POは資金調達を目的として、既に上場している企業が新規の株式発行を行います。IPOとの違いは、未上場企業ではなく既に上場している企業によるものという点だといえます。
IPOと比較すると、POは小規模であるため、株式の価値決定およびリスク評価が困難になる点が懸念されています。
また、POには以下のようなケースも含まれます。
上記についても知っておく必要があるでしょう。
IPOは企業・従業員・株主、それぞれの立場によってメリット・デメリットがあります。
ここでは、それぞれの立場からメリット・デメリットを見ていきましょう。
企業側のメリット・デメリットは次の通りです。
項目 | 詳細 |
---|---|
メリット | ● 資金調達力の向上 ● 企業価値や知名度の向上 ● 人材採用への好影響 ● 社内体制の強化 など |
デメリット | ● 開示義務などの体制整備の負担 ● 上場維持コストの発生 など |
IPOにより、一般の投資家からの投資も期待できるようになり、資金調達力の向上が見込めます。上場するために必要な審査を通過しやすくなるだけでなく、企業価値や知名度の向上も図れます。
加えて、企業価値や知名度が向上することで社会的な信用も高まり、人材採用へも好影響を与えるでしょう。
しかし、盛んにIPOが行われているベンチャー企業向けの市場においては、投資リスクが高い企業が多く、企業として継続的に成長できるかどうかが問われます。
IPOをゴールと捉えるのではなく、上場企業としての責務を果たしつつ、企業成長を進めていく必要があるでしょう。
次に従業員のメリット・デメリットを見てみます。
項目 | 詳細 |
---|---|
メリット | ● 企業価値やモチベーションの向上 ● 資産形成がしやすくなる |
デメリット | ● IPOに伴う社内体制への対応 |
企業は上場のために社内体制の強化および業務システムの変更などを行います。従業員はそれに対応することになります。対応の経験はスキルアップやキャリア形成につながり、さらにモチベーションの向上にもなるでしょう。
一方で、社内体制の強化や業務システムの変更などは、従業員にとって大きな負担となる場合もあります。
株主のメリット・デメリットは以下の通りです。
項目 | 詳細 |
---|---|
メリット | ● 既存株主の保有株の資産価値向上 ● 株式の流通性拡大 ● 株式の現金化がしやすくなる |
デメリット | ● 投資リスクが存在する |
未公開株式は所有している株式を売却するエリアや機会が限定的です。一方、IPOでは株式が一般に公開されるため、株式の売買が可能になり、流通性拡大につながります。加えて、株式の現金化がしやすくなる点もメリットの1つです。
IPOは株価や企業の業績が不安定なベンチャー企業が多く実施しているため、株主としては投資リスクが存在している点がデメリットとして挙げられます。
IPOにおける株式市場は以下の4カ所です。
加えて、各証券取引所には市場区分があります。
取引所 | 市場区分 |
---|---|
東京証券取引所 | ・プライム市場 ・スタンダード市場 ・グロース市場 ・TOKYO PRO Market |
名古屋証券取引所 | ・プレミア市場 ・メイン市場 ・ネクスト市場 |
福岡証券取引所 | ・本則市場 ・Q-Board |
札幌証券取引所 | ・本則市場 ・アンビシャス |
この市場区分は、企業規模や目的に沿って分けられています。
形式要件は取引所や各市場によって条件が大きく異なります。ここでは、例として東京証券取引所の形式要件を市場ごとに比較していきます。
参照:日本取引所グループ「上場制度(内国株)|上場審査基準」
プライム市場とは時価総額が大きな企業が対象となる市場です。プライム市場の形式要件を見てみましょう。
項目 | 詳細 |
---|---|
株主数 | 800人以上 |
流通株式 | 流通株式数:2万単位以上 流通株式時価総額※:100億円以上 流通株式比率:35%以上 ※原則として上場に係る公募等の価格等に、上場時において見込まれる流通株式数を乗じて得た額 |
時価総額※ ※原則として上場に係る公募等の価格等に、上場時において見込まれる上場株式数を乗じて得た額 |
250億円以上 |
純資産の額 | 連結純資産の額が50億円以上(かつ、単体純資産の額が負でないこと) |
利益の額 | 以下のいずれかに適合すること ● 直近2年間の利益額の総額が25億円以上 ● 直近1年間における売上高が100億円以上である場合かつ、時価総額が1,000億円以上になる見込みがある |
スタンダード市場やグロース市場との大きな違いは、流通株式比率が35%以上である点です。
スタンダード市場とは上場している企業の中でも10億円以上の流通株式時価総額を持つ企業です。スタンダード市場の形式要件を見てみましょう。
項目 | 詳細 |
---|---|
株主数 | 400人以上 |
流通株式 | 流通株式数:2,000単位以上 流通株式時価総額※:10億円以上 流通株式比率:25%以上 ※原則として上場に係る公募等の価格等に、上場時において見込まれる流通株式数を乗じて得た額 |
時価総額 | ー |
純資産の額 | 連結純資産の額が正である |
利益の額 | 直近1年間における利益の額が1億円以上 |
プライム市場と比較すると、流通株式数は10分の1の2,000単位以上が基準となっています。またスタンダード市場の形式要件では時価総額における基準はありません。
グロース市場は将来的に成長が期待できるベンチャー企業などが多くを占めています。グロース市場の形式要件は次の通りです。
項目 | 詳細 |
---|---|
株主数 | 150人以上 |
流通株式 | 流通株式数:1,000単位以上 流通株式時価総額※:5億円以上 流通株式比率:25%以上 ※原則として上場に係る公募等の価格等に、上場時において見込まれる流通株式数を乗じて得た額 |
時価総額 | ー |
純資産の額 | ー |
利益の額 | ー |
グロース市場の形式要件では時価総額・純資産の額・利益の額における基準はありません。
プライム市場を例とすると、実質審査基準は以下の5つとされます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
参照:日本取引所グループ「2023 新規上場ガイドブック(プライム市場編)」xIII 上場審査の内容(有価証券上場規程第213条関係)
「企業の継続性および収益性」の審査基準では、収益基盤の安定性や企業が長期的に存続できるのかを評価します。
事業計画が企業を取り巻く事業環境やリスク要因を加味した上で適切に策定されているのかも評価の基準となります。また、事業計画の遂行に必要とされる事業基盤の構築や、構築の予定などが確認の対象となります。
投資家の利益保護と投資家が安心して株式売買ができる株式市場の提供のために、企業経営の健全性が求められます。
企業経営の健全性を評価するポイントは次の3つです。
企業が取り組んでいる事業が公正で忠実に遂行されているのかを審査します。
社外の組織や人間が企業経営を監視するコーポレートガバナンスの仕組みや、内部管理体制の整備が機能しているのかを評価します。
具体的な審査基準は次の5つです。
審査基準を満たすためには、コーポレートガバナンスや内部統制の整備が必要になります。
コーポレートガバナンスとは企業価値の向上や不祥事の防止を目的として社外取締役や社外監査役など社外の管理者によって経営を監視する仕組みのことで、企業統治とも呼ばれています。
コーポレートガバナンスを強化することで、有価証券報告書の虚偽記載や資金流用など様々な不正行為の防止につながります。
関連記事: アビタスCIA「ガバナンスの意味や強化方法、コンプライアンスとの違いなどを解説」
内部統制とは、企業が不祥事を起こすことなく健全かつ効率的に事業を運営するための社内ルールや仕組み、社内の管理体制を指します。
ガバナンスと内部統制は混同しやすいものの、ガバナンスは社外から監視する仕組み、内部統制は社内の仕組みである点が異なります。
関連記事:アビタスCIA「内部統制とは? 4つの目的・6つの基本的要素、J-SOXについても解説」
投資家が企業状況を把握するために、企業は会社情報を適時・適切に開示できる体制や情報管理の体制を構築しなければなりません。
そのため、企業内容などの開示の適正性も審査基準の1つになります。具体的には、開示用の文書において企業の実態の開示を歪めていない点や法令等に基づいて作成されている点などが求められます。
公益や投資家を保護する観点から認められるかも審査基準の1つです。具体的には、次のような内容などを確認します。
これらも重要な審査基準です。
IPOを実現するためには最低でも準備に3年程度の期間が必要といわれています。
IPOでは上場申請にあたり、申請する直前2期間の監査法人等による監査証明が求められます。加えて、上場企業としてふさわしい社内体制の構築には1年以上の運用が必要になります。
IPOのためには申請手続きだけでなく、監査証明や社内体制の構築なども求められるため、長期的に時間や手間を費やすことになるでしょう。
関連記事:アビタス CIA「IPO準備に必要な10ステップとは|内容やスケジュールを解説」
参照:日本公認会計士協会「新規上場のための事前準備ガイドブックp4」
前項でも述べたように、上場のためには内部統制が必要です。
加えて、上場後も「内部統制報告書」の提出が義務とされている点に留意しましょう。上場後の3年間は公認会計士による監査の免除を選択できるものの、提出自体は必須です。
そのため、上場準備期間のみならず、構築した内部統制が機能している必要があります。
内部統制における「内部監査」とは、内部統制が正しく機能しているかを社内の内部監査人によってチェックする工程を指します。
内部監査の有効性を高める方法として「CIA(公認内部監査人)」の資格取得者の採用も有効な方法の1つです。
CIAとは内部監査人としての能力や専門性を証明できる唯一の国際資格であり、資格の取得を通して体系的な学びを得ることができます。
関連ページ:アビタス CIA「公認内部監査人(CIA)とは?取得するメリット、他資格比較」
IPOを行うためには、形式要件および実質審査基準を満たさなければなりません。
形式要件とは上場申請をするにあたって必要な定量的な条件、実質審査基準は上場会社にふさわしい要素を備えているかを審査するための定性的な基準です。形式要件だけでなく、実質審査基準をクリアできるように早めの準備が必要です。
実質審査基準の中でも、企業のコーポレートガバナンスおよび内部管理体制の有効性を証明するためには、内部統制部門を設置することが大切です。また、上場するためには内部統制が必要になります。
内部統制の適正性を判断するためには、内部監査が必要である点も知っておきましょう。CIA(公認内部監査人)資格を持っている人材が社内にいると、内部監査の有効性が高められるでしょう。
企業のコーポレートガバナンスおよび内部管理体制の有効性を証明するために、内部統制部門に所属している人間が、CIA資格を取得するのも選択肢の1つといえます。
アビタスでは2005年にCIAプログラムを開講して以来、圧倒的な合格実績を挙げ続けています。合格率を上げるために、オリジナル教材と講師の質の良さにこだわっています。
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