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  • 2026/09/30公開
  • 2026/10/06更新

内部監査人の自己研鑽~監査の高度化やキャリア形成にCIAはどう活きるか~

内部監査人の自己研鑽~監査の高度化やキャリア形成にCIAはどう活きるか~

ビジネス環境の急速な変化に伴い、内部監査部門に求められる役割も「ルールの準拠性確認」から「経営に資するアドバイザリー」へと大きくシフトしています。
本イベントでは、技術職として約30年間従事した後に55歳で内部監査室へ異動し、CIA(公認内部監査人)資格を取得された九州電力送配電株式会社の梅津武治氏をゲストにお迎えしました。

実務の最前線でCIAの知識をどのように活かしているのか、また、シニア世代におけるセカンドキャリア形成に資格がどう影響したのかについて、具体的なエピソードを交えてお話しいただきました。

登壇者紹介

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梅津 武治(うめづ たけはる)氏

九州電力送配電株式会社
監査室 マネージャー(2025年5月より)

技術職として電力輸送設備の保守・管理等に約30年間従事。通信会社への出向による情報システム業務なども経験した後、2023年7月に監査室へ異動。主に業務監査を約2年間担当。内部監査スキルの深化と定年退職後のセカンドキャリアを見据え、アビタス受講を通じてCIA(公認内部監査人)資格を取得。実務において監査プロセスの高度化に資格を活かすとともに、CIAフォーラム研究会へ参加し、他業界の実務家との交流を通じてスキルアップを図っている。

Q1. 内部監査には現在どのような変化が求められているか

梅津氏: 私が2023年7月に監査室に配属された当初、内部監査に対するイメージは「受ける側」としての経験しかありませんでした。

当時は、社内ルールと照らし合わせて間違いを指摘する、いわば「重箱の隅を楊枝でつつくような準拠性監査」が主流であると感じていました。監査を受ける現場や上司もピリピリしていたことを記憶しています。
自分が監査する立場になる際は「現場から嫌われるのではないか」と非常に不安でした。

しかし、実際に内部監査の実務に携わり、CIAの学習を進める中で、その認識は大きく変わりました。
現在の内部監査は、企業の継続に不可欠な部門であり、経営層が懸念している課題やリスクを念頭に置いて動く組織です。

単に不備を指摘するだけでなく、現場が工夫している良好な取り組みを全社に展開する役割も担っています。私たちは警察でも敵でもありません。
現場に寄り添い、一緒に会社を良くしていくスタンスを持つことで、経営に資する監査、そして業務改善や効率化を促すアドバイザーとしての役割が強く求められていると感じます。

Q2. 内部監査人に求められる自己研鑽や情報収集はどのように行うべきか

梅津氏: 内部監査人に推奨される研修や自己啓発は、業界や会社によって様々ですが、前提として「グローバル内部監査基準(GIAS)」を意識することは欠かせません。

私個人の情報収集としては、IT分野の動向を掴むために『日経コンピュータ』、財務関係では『経理情報』といった専門誌を定期購読しています。
また、アビタスがYouTubeで配信している「ガバちゃん」を視聴し実務の参考にしています。

内部監査部門のメンバー一人ひとりが、自身の背景や組織のニーズに合わせてスキルアップを図ることで、部門全体の底上げにつながります。
CIAの学習を通じて、ガバナンス、リスクマネジメント、内部統制(コントロール)の3つを体系的に学ぶことは、非常に高いハードルではありますが、最高の自己研鑽になると確信しています。

Q3. 必要な知識やスキルを身につけるにあたって、CIA資格は実務にどのように活きているか

梅津氏: CIAの学習で得た知識は、年間計画の策定から調書作成、往査、評価、報告、そしてモニタリングに至る内部監査プロセスのあらゆる場面で活きています。

具体的な取り組みとして、リスクに基づく内部監査計画(リスクベース監査)の策定が挙げられます。
当室でも従来からリスク評価は行っていましたが、それを直接的に内部監査計画へ反映する仕組みが十分に整っていませんでした。

そこで、CIAの知識をベースに、生成AIも活用しながらリスク評価を行い、リスクマップを作成しました。
室内のメンバーとディスカッションを重ね、最終的に内部監査計画へ反映させるという一連のプロセスをやり遂げることができました。
このチャレンジを後押しし、自信を与えてくれたのがCIAの学びです。

また、合格後は日本内部監査協会の「CIAフォーラム研究会」に参加し、「情報システム監査」と「CSA(コントロール・セルフ・アセスメント)実践」の2つの研究会に所属しています。
他業界の経験豊富な専門家の方々とつながりを持ち、実務の工夫について直接お話を聞ける環境は、今後の内部監査業務の高度化や効率化に向けた大きな刺激になっています。
現場や上長とディスカッションを行う際にも、CIAというバックグラウンドがあることで、自信を持って意見を述べることができています。

Q4. 内部監査の経験やCIA資格は、セカンドキャリア形成にどのように役立つか

梅津氏: 私は55歳で監査部門に配属されました。
技術職出身ということもあり、60歳の定年退職まで残り5年となった時期に、将来を見据えて電気主任技術者の資格を取得し、この業界での転職も視野に入れていました。

そんな折、アビタスの担当者から紹介された「企業実態調査レポート」を目にしました。
そこには、CIAが上場企業で強く推奨されていること、内部監査人材が不足していること、そして何より60代であっても中途採用のチャンスがあり、相応の報酬が得られるというデータが示されていました。
これを見て、CIA資格はセカンドキャリアにおいて非常に強力な武器になると確信しました。

実際に転職活動を具体化しているわけではありませんが、CIAを取得したことでセカンドキャリアの選択肢が大きく広がったと感じています。
現在は、さらなる専門性を高めるためにCISA(公認情報システム監査人)の資格取得に向けて勉強を続けており、今月末に受験を控えています。
定年後の再雇用制度について会社と交渉する際にも、客観的な専門性を示す材料として役立つと考えています。

Q5. これからCIAを目指す方へのメッセージ

梅津氏: 私からのメッセージをお伝えする前に、日本内部監査協会の研修で出会った、他社で内部監査部門長を務められている方からのメッセージを紹介させてください。
その方もアビタスで学び、私と同じ時期にパート3の合格を目指して切磋琢磨した仲間です。

「CIA資格は実務において実に役立つ資格であり、生涯にわたって自分を支えてくれるものです。アビタスを選択したことは大正解でした。最後まで諦めずに突破してください」

私自身も、CIAは単に内部監査に特化した資格にとどまらず、物事を「経営者目線」で捉えるための視座を与えてくれるものだと感じています。
仮に将来、内部監査部門から他の部門へ異動したとしても、経営に影響を与えるリスクを識別し、それに対処するスキルはあらゆる業務で活きます。

若い世代や中堅層の方々には、人生の選択肢を増やすきっかけとして挑戦してほしいですし、私のように定年を控えたシニア世代の方々には、資格取得や研究会での活動を通じて、共に内部監査の成熟度向上や人材育成を語り合える仲間として、ぜひ挑戦していただきたいです。

「勉強は始めに決心、のち習慣、合格すればCIA」という言葉を、皆様へのエールとして送ります。

Q6. 被監査部門と信頼関係を築くためのコミュニケーションで意識していることは何か

梅津氏: 現場の方々とコミュニケーションを取る際、口頭だけで議論を進める「空中戦」にならないよう心がけています。

私が伝えたい監査上の概念や問題意識を言葉だけで説明しようとしても、相手との認識にズレが生じることがあります。
そのため、ホワイトボードにベン図やイメージ図を描き、ビジュアルを交えて視覚的に理解し合える工夫をしています。

具体的な資料や図を示すことで、お互いの認識を一致させやすくなり、スムーズな対話につながっています。

Q7. 内部監査の重要性が高まっている背景をどのように考えているか

梅津氏: 有価証券報告書や統合報告書において、コーポレートガバナンスの有効性を開示することが強く求められるようになっている点が影響していると考えます。

企業がステークホルダーに対して「自社のガバナンスや内部統制が健全に機能している」と証明するためには、客観的な専門資格を持つ人材が内部監査を担っていることを示す必要があります。こうした社会的要請が、内部監査部門の重要性、ひいては専門資格を持つ人材の需要を高めている背景にあると感じています。

Q8. 内部監査部門における女性の活躍や年齢層の現状はどのようになっているか

梅津氏: 私の所属する監査室では、部門長である監査室長が女性であり、メンバーにも女性が在籍しています。

また、参加しているCIAフォーラムのCSA研究会で座長を務められているのも女性です。実務の現場において、男女の差や偏りを感じることはありません。

年齢層については、自社では50代以上が比較的多く、40代や若い担当者も在籍している状況です。
他社の実務家が集まるフォーラムなどに参加した印象としても、日本全体における内部監査部門の年齢層は、現状では比較的高めであると感じています。

Q9. 経営に資する監査報告ができたと実感できた具体的な事例はあるか

梅津氏: 経営層から直接「この監査が非常に役に立った」と評価をいただくことは、内部監査部門にとって永遠の課題であると感じています。

最近の事例として、新たに導入したシステム監査において、特定のプロジェクトの進捗やリスクに関する要望を経営層とディスカッションする機会がありました。その際、経営層から「この領域については、今後も引き続き注視して見ていってほしい」という言葉をもらいました。

経営層が関心を持つリスクに対して適切な情報を提供し、今後の継続的な関与を求められたことは、経営に資する監査への一歩になっていると実感しています。

Q10. CIA試験の学習において、どのパートが難しく、どのように克服したか

梅津氏: 私は現行のシラバスに改定される前の試験で受験しましたが、内部監査の専門領域であるパート1とパート2は並行して学習を進めました。

最も苦労したのはパート3です。
技術職としてキャリアを積んできたため、財務・会計の分野に全く馴染みがなく、非常に高いハードルを感じていました。
先輩方からも「技術系の人間にとって経理関係は難しい」と聞いていましたが、まさにその通りでした。

克服のために、アビタスの講義動画を繰り返し視聴し、質問機能を活用して疑問点を解消していきました。
さらに試験直前には、生成AIも活用しながら、自分が苦手とする論点に絞ったオリジナルの問題(マイMC)をノートに100問以上作成しました。
自分で問題と解説を書き出し、繰り返し解くことで、苦手分野を克服しました。

Q11. 財務やITの知識を補うために、簿記やITパスポートなどの資格を先に取得しておくべきか

梅津氏: 私自身はCIAの学習を始める前に簿記3級を取得しました。

仕訳の基礎的な考え方を理解する上では役立ちましたが、CIA合格のために必須の前提条件とまでは言えないと感じています。

また、IT分野に関しては、CIAを取得した翌月にITパスポートを受験したところ、特別な勉強をすることなく合格できました。
CIAの学習範囲でITの基礎知識が十分にカバーされていたためです。
ITパスポートは、内部監査の基礎用語を学ぶ上で有用なため、CIAを受験しない部門メンバーには取得を勧めていますが、CIA受験のためにあらかじめ取得しておく必要はありません。

Q12. 親会社とのガバナンスの連携はどのように行っているか

梅津氏: 親会社との情報共有や連携は定期的に行っています。

J-SOX(内部統制報告制度)への対応など、自社における監査範囲の特殊性もありますが、グループ全体でのガバナンス強化の重要性は認識しています。
親会社との効果的な連携体制の構築に向けて、現在は必要な準備や検討を進めている段階です。

Q13. 試験合格に向けて、1週間あたりどの程度の時間をどのように勉強したか

梅津氏: 約1年間の学習期間全体で、合計400〜450時間ほど勉強しました。
月平均で30数時間、1日あたりに換算すると1時間強のペースです。

平日は出勤前の朝の時間を中心に1時間半から2時間ほど学習時間を確保し、試験直前の時期は土日にそれぞれ5〜7時間ほど集中して取り組みました。
ただ、常に根を詰めて勉強していたわけではなく、趣味であるゴルフの練習など、適度な気分転換を取り入れながら学習を習慣化させることを意識していました。

Q14. 監査部門の外部評価は受けているか

梅津氏: グローバル内部監査基準では「5年に1度以上の外部評価」が推奨されています。

自社においては5年以上前に一度外部評価を受けていますが、すでに推奨期間を経過しているため、再度受審したいと考えています。
新基準への対応状況を整理し、自社の監査業務が適切に機能していることを証明するためにも、しっかりと準備を整えて外部評価に臨みたいと考えています。

Q15. 国内外の子会社や委託先の監査において、CIA資格は役に立つか

梅津氏: 自社では子会社や委託先を直接監査する業務は行っていませんが、グループ経営やホールディングス体制において、子会社管理や委託先監査の重要性は高まっており、CIAの知識は確実に活きると考えています。

また、海外監査の経験を持つ他社の知人からは、「海外の被監査部門に対して、CIA資格を明記した名刺を提示したところ、相手の対応や信頼感が大きく変わった」という話を聞きました。
CIAはグローバルに通用する資格であるため、国内外を問わず、内部監査人としての信頼性を担保する上で非常に有効であると感じています。

Q16. 内部監査部門の上司がCIA取得者である場合、業務上のコミュニケーションはスムーズになるか

梅津氏: 上司が内部監査の国際基準や体系的な知識を共有していれば、内部監査方針の決定や課題への対応に関するディスカッションは非常にスムーズになると考えます。

現在、自室の内部監査従事者でCIA資格を保有しているのは私一人ですが、資格の有無に関わらず、自分が学んだ知識やフレームワークを日々の実務に散りばめて発言するようにしています。
そうすることで、自室全体の知識レベルの底上げや、共通言語の構築に貢献できればと考えています。

Q17. 経営陣に内部監査の重要性を理解してもらうために、どのような働きかけを行っているか

梅津氏: 多くの企業の内部監査部門が抱える共通の悩みだと思います。
直接社長などの経営層にアプローチすることは難しいため、地道な情報発信を重視しています。

具体的には、社内イントラネット上に内部監査部門の専用コンテンツを立ち上げる準備を進めています。
内部監査計画や、内部監査を通じて見つかった他部門の良好な事例などを全社に向けて発信することで、経営層の目にも留まる機会を増やしたいと考えています。

また、現場の社員に対しては、監査を「健康診断」に例えて説明しています。「体の悪いところを早期に見つけて改善し、健康な状態を維持するための活動が内部監査である」と伝えることで、業務の意義を理解してもらうよう努めています。

Q18. 内部監査業務において、やりがいを感じる場面はどのようなときか

梅津氏: 私自身、現在の内部監査の仕事が非常に好きで、新しい取り組みへの挑戦を含めて、日々の業務すべてにやりがいを感じています。

その中でも、上司から「ありがとう」と声をかけられたときや、経営層との対話の中で「この領域を引き続きしっかり見てほしい」と、内部監査の役割を期待されたときには、特に強いやりがいとモチベーション向上を実感します。

Q19. 新たに内部監査部門に異動してきた新任の内部監査人は、まずどのような点から押さえるべきか

梅津氏: 最初からグローバル内部監査基準などの細かいルールをすべて読み込もうとすると、全体像が見えずに挫折してしまいがちです。
まずは、内部監査業務の「外観(全体像)」を掴むことから始めるのが良いと思います。

年間計画の策定から、現場への往査、評価、報告という一連のプロセスの大きな枠組みを頭に入れ、「今、自分が行っている業務は全体のどのプロセスに位置しているのか」を常に意識することが大切です。
その上で、実務を経験しながら一つひとつの業務を深めていくアプローチを推奨します。
自室に新任者が配属された際にも、まずはこの全体像の把握からスタートしてもらうようにしています。

編集後記

技術職として約30年のキャリアを積んだ後、55歳で未経験の内部監査部門へ異動し、CIA資格を取得された梅津氏。

その具体的なエピソードからは、キャリアのどの段階からでも新しい専門性を身につけ、挑戦できるという力強いメッセージが伝わってきました。

単なるルールのチェックにとどまらず、現場に寄り添い、経営に資する監査を目指す姿勢は、これからの内部監査人に求められるあり方を体現しています。

本レポートが、皆様の自己研鑽やキャリア形成の一助となれば幸いです。

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