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  • 2022/10/23公開

警察官は不正調査のエキスパートなのか?

警察官は不正調査のエキスパートなのか?

CFE(公認不正検査士)を取得したビジネスパーソンは、その後様々な分野で活躍されています。

多くは内部監査やリスク管理に従事し、その知見を内部統制強化をはじめとした企業価値向上に繋がる業務に活用しています。

しかし本記事では少し見方を変えて、元警察官でCFEを取得し、現在はリスク管理、ガバナンスのコンサルティングサービスを提供しているベストブレイン株式会社の堀様に、自身のご経験とCFE資格について語っていただきました。

目次
警察官は不正調査のエキスパートなのか?
知識が整理され、思考が磨かれる
資格取得に必要な事

警察官は不正調査のエキスパートなのか?

私は、警察官として、特に法令で逮捕状等を請求する権限を行使できる指定司法警察員として、企業において発生する不正をはじめ様々な事件捜査に携わってきました。時には、特別捜査本部の責任者として捜査を指揮する立場も経験してきました。現在は、そうした経験をベースにリスク管理のコンサルティングファームで、不正検査ばかりでなくハラスメントあるいは業務外の非行等の事実関係を調査・分析するサービスを提供しています。

さて、こうした声があるかも知れません、その声とは、「警察官として相当の捜査経験を積んできた以上、不正調査のエキスパートといえる。そうであれば、公認不正検査士の資格は不要ではないか、あるいは企業における不正調査のスキルは十分にあるはずだ」です。

しかし、そうではないのです。その理由はふたつあります。一つは、卑近な話で申し訳ありませんが、この資格が持つインパクトです。例えば、名刺交換の際に、名刺に記載された公認不正検査士という7文字に気づいた方の多くは、「どんな資格ですか」と興味を持ちます。また、「この資格、知っています。難しいですよね。すごいですね。いつ、合格したのですか」と言われる方も。

ビジネスにおいて自分を印象付けることは、大切だと思います。この資格には、その力が確実にあると思います。

ふたつ目の理由は、何よりノウハウです。例えば、公認不正検査士マニュアルは、極めて有用なマニュアルであり、数千ページに及びます。ただし、これを使い切るにはやはり相当の知識が必要です。

特に、警察官であれば、司法警察職員または司法警察員として、不正の疑いに対して実体的な真実を究明するために刑事訴訟法を根拠とした捜査権が付与されます。捜査の初期段階から、捜査に必要な情報を得るために警察という一般的には優位と感じられる立場で、関係先に関心事項を照会するなどの権限があります。もちろん、被疑者を逮捕し取り調べる権限など、特別な権限もあります。それらの権限は任意手段または強制手段の別を問わず、一般人にはない権限です。一方、そうした警察官としての権限がなければ、不正の嫌疑を追及する手法は一変すると言っても過言ではありません。誤解を恐れず敢えて言えば、警察官と比べると圧倒的に不利な条件で不正に向き合うことになるといえます。この不利な条件を覆すものが、公認不正検査士として必要な知識と思考力です。この知識は、警察官として捜査に従事し蓄積された知識だけでは補うことはできません。心理学、会計実務に関する知識などが追加で求められます。また、不正検査に限らず、営業の場面あるいは経営方針の企画など、およそビジネスシーンで幅広く求められる知識だとも思います。資格を取得して既に数年を経ましたが、年を重ねるたびにこの点は実感を重ねています。

知識が整理され、思考が磨かれる

一方、この知識は、私にとって広範囲に及び、かつ専門的な内容でもありました。しかし、この知識の習得に取組むとひとつの事実が見えてきます。それは、体系です。不正検査、不正の疑惑の究明という目的に向けて、一見いたずらにバラバラだと感じる様々な知識が関連し、体系的に整理できることが見えてくるのです。つまり、知識が整理されてくるということ。知識が整理されるという現象は、思考力が磨かれた成果ともいえます。

さらに、資格取得に必要な試験ですが、回答が複数ある選択問題です。しかも回答は、ゼロ回答はありませんが、ひとつの問題において回答として選択すべき数は、定まってはいません。一つの設問にある4つの記述から、正しい記述が1つかもしれないし、あるいは2つ、3つかも知れないということです。こうした問題に効率的に取り組むためには、様々な専門的な知識をスピーディに関連させることが不可欠です。特に公認不正検査士の試験では、その問題数、試験時間から思考のスピードに加え、集中力または持久力が求められます。

資格取得に必要な事

さて、資格取得に向けた勉強を通じて、新鮮な知識あるいはノウハウを得ることができました。そうした知識やノウハウは、当然にスキルアップにつながります。こうした自身のスキルアップとは別に、私がこの資格を取得していることを知った知人等から、資格取得の勉強方法などについて問合せを受けることも増えてきました。今まさに、注目され、ビジネスで有用な資格であると実感を強めています。

ただし、この資格を取得するためには、既述してきたように広汎な知識の整理と、思考のスピードアップが不可欠です。私にとって、試験に向けた取組み、試験合格は、時間との闘いでした。それはまぎれもない事実です。つまり、何よりも効率的な取組みが大切だと思うのです。私自身、もう少し効率的に勉強できたはずだと反省する余地があることも事実です。そこで、資格取得に向けたカリキュラムあるいは教材を十分に吟味し、選択すること、それがマストだと考えています。

CFEについてもっと知りたい方はこちら

監修

堀 尚弘
ベストブレイン株式会社 代表取締役
リスク管理専門家(元警視庁 警部)、CFE(公認不正検査士)

警視庁、警察庁で勤務。公安部、警務部、生活安全部等で事件捜査、制度分析、法務・広報、大規模災害対策等に従事。退職後は一部上場企業で経営企画、営業開発等に従事し、警察OBの出資を得てリスク管理のコンサルティング会社を創業。社業のほか金融機関の監査役、上場企業のリスク管理委員会委員も務める。

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