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  • 2024/02/21公開

リスクアセスメントとは?目的や必要性、手法ややり方を解説

リスクアセスメントとは?目的や必要性、手法ややり方を解説

技術の進展により、社内の潜在的な危険性および有害性は多様化しています。放置してしまうと、重大な労働災害を引き起こしかねません。リスクアセスメントにより、危険性・有害性に対し適切な対策を講じることが大切です。

しかし、リスクアセスメントという言葉自体は聞いたことがあるものの、具体的な目的や必要性がよく分からないという方もいるのではないでしょうか。

本記事では、職場の安全へのリスクアセスメントの概要、目的・必要性、基本的な実施の手順について解説します。実施について疑問に思っている方はぜひ参考にしてください。

目次
リスクアセスメントとは
リスクアセスメントの目的・必要性・効果・指針
リスクアセスメントの基本的な手順
リスクアセスメントにおけるリスク見積りの手法
リスクアセスメントは安心安全な職場への第一歩

リスクアセスメントとは

厚生労働省はリスクアセスメントについて以下のように定義しています。

”リスクアセスメントとは、事業場にある危険性や有害性の特定、リスクの見積り、優先度の設定、リスク低減措置の決定の一連の手段”

参照:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「安全衛生キーワード|リスクアセスメント」

上記のように、現場にいる従業員の安全確保を目的とし、事故などのリスクを低減するための安全確認の方法を意味します。

なお、労働安全衛生法第28条の2では、リスクアセスメントの実施は努力義務であると示されています。

リスクアセスメントの目的・必要性・効果・指針

リスクアセスメントの定義が理解できたら、リスクアセスメントにおける以下の内容も知ることが大切です。

  • 目的や必要性
  • 効果
  • 指針

それぞれ詳しく見ていきましょう。

リスクアセスメントの目的や必要性

リスクアセスメントの目的とは、社内に潜んでいる危険性・有害性を発見し、事前に的確な対策を講じることです。

従来の労働災害防止対策は、既に発生した労働災害の発生原因を調査し、類似災害に焦点を当て、再発防止対策を確立するのが一般的でした。しかし、実際に災害が発生していない場合でも、潜在的な危険性・有害性が存在している可能性があります。

潜在的な危険性・有害性がないがしろにされている現場では、労働災害が発生する恐れがあるため、事前に対策を講じなければなりません。

また、技術の進展によって現場で様々な機械設備や化学物質が使用されるようになり、リスクは多様化しています。

多様化したリスクを見つけて適切に対処し、発生し得る労働災害をできる限り防止・低減させるためには、リスクアセスメントによって事前に対策を図ることが大切です。

リスクアセスメントの効果

厚生労働省は、リスクアセスメントの実施により以下の効果が期待できると示しています。

  • 社内に潜むリスクを明確にできる
  • リスクに対する認識を、管理者を含む社内全体で共有できる
  • 合理的な方法で安全対策における優先順位を決めることが可能
  • まだ残っているリスクにおける「守るべき決定事項」の理由を明確に示せる
  • 社内全員が安全対策に参加することで、リスクに対する感受性が高まる

リスクアセスメントは全従業員で実施します。そのため、業務経験や安全衛生の知識が浅い従業員でも、社内に存在している潜在的危険性・有害性への意識を向けられるようになるでしょう。

リスクによっては、技術面や経済面などにおいて適切な対処ができないケースもあります。そうした場合、応急的な措置は現場にいる従業員の判断に任せることになるでしょう。

現場従業員がリスクアセスメントに参加することで、リスクに対してなぜ作業中に注意しなければならないのかを理解できるようになり、リスクアセスメントで決定された「守るべき決定事項」の遵守に努めるようになります。

参照:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「安全衛生キーワード|リスクアセスメント」

リスクアセスメントに係る指針

厚生労働省は、以下についてリスクアセスメントの具体的な指針を公表しています。

  • 化学物質の取り扱いに係るリスクアセスメント
  • 機械や設備の製造者が行うリスクアセスメント

それぞれの指針にはリスクアセスメントの体制の構築や実施時期、実施事項について詳しく示されています。

実施事項では安全衛生の対象の選定方法、情報の入手方法、リスク見積もりの方法などが具体的に示されているため、リスクアセスメントの実施方法について悩んでいる方は指針を参考にするとよいでしょう。

参照:厚生労働省「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等による指針」
参照:中央労働災害防止協会 安全衛生情報センター「法令・通達|機械の包括的な安全基準に関する指針」

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リスクアセスメントの基本的な手順

リスクアセスメントの基本的な手順は次の通りです。

  1. 1. 実施時期・タイミングを決める
  2. 2. 危険性または有害性を特定する
  3. 3. 危険性または有害性ごとにリスクを見積もる
  4. 4. リスク低減のための優先度の設定・リスク低減措置内容を検討する
  5. 5. リスク低減措置を実施する
  6. 6. リスクアセスメントの結果および実施したリスク低減措置を記録する

ここでは手順を詳しく見てみましょう。

実施時期

リスクアセスメントは設備の導入や作業方法の変更、労働災害が発生したタイミングなどで実施するため、実施時期は企業によって異なります。

まずはリスクアセスメントを実施してみようという試みが大切です。危険が潜んでいる作業や作業場所などに対象を絞り、できる範囲で実施してみるのもよいでしょう。

危険性または有害性の特定

業務フローにおける全ての作業を対象とし、危険性・有害性の特定を行います。特定するためには、次のような情報を基に調査を行いましょう。

  • 日常業務の作業手順
  • ヒヤリハット活動
  • 安全パトロール
  • 労働災害の事例
  • 安全目標の達成評価
  • 前年度の労働災害業況

リスクを特定しやすくするためには、日頃から現場従業員が情報を報告する仕組みを整えておくことが大切です。

危険性または有害性ごとのリスクの見積もり

次にリスクの大きさを見積もります。

リスクの大きさを測るためには、マトリクスを用いた手法と数値化を用いた手法の2種類があります。それぞれの手法については後ほど解説します。

リスク低減のための優先度の設定・リスク低減措置内容の検討

多様なリスクに対し、措置を実施する優先度を設定しましょう。

リスクの数値が高いほど優先度は大きくなります。優先度の大きいリスクから、低減措置内容を検討しましょう。

リスク低減措置の実施

次のような手順で低減措置を行います。

順序 対策 対策内容
1 本質的対策 ・計画や設計段階で設備および業務内容を改善する
・危険度の高い業務を廃止したり、業務内容を変更したりすることで、危険性または有害性を除去する
2 工学的対策 ・安全装置やガード、インターロックなどの設備を配置する
3 管理的対策 ・作業者が適切にマニュアルや作業手順書を理解できるように整備する
・ヒューマンエラーの防止対策を講じる
4 個人用保護具の使用 ・(1~3を実施してもリスクを低減できなかった場合)
安全靴や保護帽、保護マスクなどの保護具を使用し、身の安全を確保する

低減措置実施後、新たな危険性または有害性が発生する可能性も否定できません。低減措置実施後も新たなリスクが発生しているかどうかを定期的に確認するようにしましょう。

参照:厚生労働省「リスクアセスメント担当者養成研修受講者用テキスト(平成24年度事業分)」

リスクアセスメントの結果および実施したリスク低減措置の記録

リスクアセスメントは低減措置を実施したら終了ではありません。リスクアセスメントの結果と低減措置の有効性の評価を記録しましょう。

有効性の高い低減措置は、他部署への展開も可能です。

一方、低減措置の効果が小さかった場合、評価結果を基に改善を検討しなければなりません。

リスクアセスメントにおけるリスク見積りの手法

リスクを見積もる方法としては、次の2つの手法が挙げられます。

  • マトリクスを用いた手法
  • 数値化を用いた手法

ここでは、それぞれの手法の特徴と具体例を見ていきましょう。

マトリクスを用いた手法

マトリクスとは「負傷または疾病の重篤度」と「負傷または疾病の発生の可能性」をそれぞれ横軸と縦軸とした表のことです。該当する重篤度の列を選択し、次に発生する可能性に該当する行を選択することでリスクを見積もります。

以下の表は一例です。縦軸が発生する可能性、横軸が重篤度です。

項目 死亡・重大なリスク(3点) 重大なリスク(2点) 軽微なリスク(1点)
発生する可能性が高い(3点) 6点 5点 4点
発生する可能性がある(2点) 5点 4点 3点
発生する可能性はほとんどない(1点) 4点 3点 2点

参照:厚生労働省「事例でわかる職場のリスクアセスメント」

※6点:即座に解決すべき問題がある
※5点:重大な問題がある
※4点:非常に問題がある
※3点:多少問題がある
※2点:問題はほとんどない

この表は、全ての作業や業種で活用できる点が特徴です。

数値化を用いた手法

数値化を用いた手法では、次の3つの尺度を数値化し、掛け算・足し算(数値演算)などを行い、リスクを見積もります。

  • 負傷または疾病の重篤度(致命的・重大・中程度・軽傷)
  • 負傷または疾病の発生の可能性(非常に高い・比較的高い・可能性あり・ほとんどない)
  • 発生する頻度

数値が高くなるほどリスクが大きく、対応の優先度も上位になります。

数値化を用いた手法を使用する主な業界は以下です。

  • 産業廃棄物処理業
  • 自動車整備業
  • 食品加工作業
  • 鋳物製造業
  • ビルメンテナンス業

数値化を用いた手法は評価対象によって柔軟に対応できる点がメリットです。一方、リスクの大きさにより点数の幅があるため、リスク低減措置の有効性が見えにくい点がデメリットとして挙げられます。

また、掛け算や足し算によって点数を算出するため、非合理的な評価になってしまう可能性も想定できます。例えば、致命的な重篤度で、発生の可能性がほとんどない場合、他のリスクよりも点数が低くなってしまうようなケースも生じるでしょう。

参照:厚生労働省職場のあんぜんサイト「数値化による方法(詳細説明)」

リスクアセスメントは安心安全な職場への第一歩

職場の安全へのリスクアセスメントの概要や目的、基本的な手順について解説しました。技術の進展により、職場に潜んでいる危険性および有害性は多様化しています。

労働災害を防止・低減するためにも、リスクアセスメントにより多様化した危険性や有害性を見つけ出し、事前に的確な対策を実施することが大切です。

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