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50代を迎えると組織内でのキャリアの先行きに不安を覚えるビジネスパーソンは少なくありません。そうした中、メガバンクから大手鉄鋼メーカーの内部監査部門へと転職し、新たなキャリアを切り開いたのが安居邦治氏です。
本イベントでは、安居氏が実践した「弱者の戦略」としてのキャリア形成や、短期間でのCIA(公認内部監査人)およびCISA(公認情報システム監査人)の合格法、そして実務における資格の活かし方について、Q&A形式で詳しくお届けします。
登壇者紹介

安居 邦治(やすい くにはる)氏
1991年に現在のメガバンクの前身となる銀行に入行。
32年以上にわたり勤務し、シンガポール駐在時には監査部に所属。帰国後、54歳で退職を決意し、大手鉄鋼メーカーの内部統制・監査部へ転職。アビタス受講開始から約3ヶ月でCIA試験に合格し、その後CISA試験にも合格。
現在は現役の内部監査人として活躍している。
安居氏:50代以降になると、多くの人が体調の変化や親の介護、子供の進学費用など、人生の危機とも言える状況に直面します。
同時に、会社組織の中での居場所が徐々に狭くなっていく現実もあります。転職を考えたとしても、華やかな求人広告のイメージとは異なり、組織内で特別なポジションに就いてこなかった人間が、高い年収で迎えられることは極めて稀です。
そうした厳しい状況において、私が提案したいのが内部監査部門を狙う「弱者の戦略」です。内部監査部門には、他部署との競争において有利に働く3つの特徴があります。
1つ目は、組織の高齢化です。
内部監査部門には若い人材が少なく、年齢を重ねていることが業務上の重みや信頼感につながるため、若い世代と無理に戦う必要がありません。
2つ目は、周囲の熱量の低さです。
他部署でキャリアの行き詰まりを感じて異動してきた、いわゆる消化試合のような意識で働く人が一定数存在するため、少しのやる気と行動力があれば、すぐに頭角を現すことができます。
そして3つ目は、社会的要請の強さです。
コーポレートガバナンスの強化に伴い、多くの企業が内部監査部門の増員を進めており、プロフェッショナルな人材を強く求めています。
この環境下で、自身の能力を掛け合わせることで希少価値を生み出します。具体的には、CIAの資格をベースに、ITの知識を示すCISA、さらに一定の英語力を掛け合わせるアプローチです。CIAとCISAの双方を保持し、さらに英語が扱える人材は市場に数千人程度しか存在せず、転職市場に出る人はさらに限られます。この掛け合わせを武器にすれば、50代や60代からでも十分に勝負することができます。
安居氏:私はアビタスに入学後、約3ヶ月で全パートに合格しました。
実践した学習方法は非常にシンプルで、アビタスの伊藤先生による講義のアーカイブ動画を2倍速で何度も繰り返し聴くというものです。平日は5から8時間、休日は15から16時間、起きている時間は常に講義を聴き流し、体に染み込ませるようにしていました。
早期合格に向けたコツとして、まず強調したいのは短期集中で臨むことです。
CIAは1年も2年もかけて勉強する試験ではありません。なぜなら、細かい知識の暗記よりも、内部監査人としての考え方を問う試験だからです。
学習を始める段階で、各パート長くても3ヶ月以内、できれば1、2ヶ月先の日程で受験日を予約し、自分を追い込むことが大切です。
実際に私の周囲でも、有効期限の直前など、後がない状況に追い込まれた人ほど、集中力を発揮して一気に合格しています。
もう1つのコツは、IIA(内部監査人協会)が好む考え方のテイスト、いわゆるIIAチックな感覚を掴むことです。
試験問題の多くは、実務上の正論や一般的なマナーではなく、プロセスを細分化してどのように改善していくかという、IIA特有の思考プロセスに沿って作られています。
4つの選択肢のうち、実務的に間違いではない選択肢が複数あっても、IIAが好むアプローチはどれかという視点で選ぶ必要があります。
この感覚は日常生活を送る中では鈍りやすいため、短期間で一気に講義を聴き、感覚が研ぎ澄まされているうちに受験を終えるのが最も効率的です。
安居氏:私がCISAの学習を始めたきっかけは、CIAのパート3の試験で一度不合格になった際、原因がIT分野の理解不足だったことにあります。
不合格を機にITを猛勉強してCIAには合格したのですが、合格後に少し物足りなさを感じ、その勢いのままアビタスでCISAの受講を開始しました。10月に勉強を始めて、翌年の1月には合格することができました。
CIAで学ぶITの基礎知識に、少しの専門性をプラスする形で学習を進められるため、ダブルライセンスとしてのハードルはそれほど高くありません。
CISAを取得する最大のメリットは、実務におけるコミュニケーションの入り口が非常にスムーズになる点です。
内部監査において、IT部門への監査は避けて通れません。しかし、専門知識のない監査人が的外れな質問をすると、現場の担当者から煙に巻かれて終わってしまいます。
名刺にCISAの資格が記載されているだけで、相手は「この人はITの基本を理解している」と認識し、対等な立場で建設的な会話に応じてくれるようになります。
これは外部の監査法人とやり取りをする際にも同様で、プロとしての信頼を最初に勝ち取るための強力なカードになります。
安居氏:内部監査人に最も求められるのは、被監査部門とのコミュニケーション能力です。
ただし、これはエリート社員が持つような、論理だけで相手を論破するような能力ではありません。
組織の中で理不尽な思いを経験したり、悔しい思いを重ねてきたりした人こそ、現場の苦しみや業務上のボトルネックを肌感覚で理解することができます。
そうした泥臭い経験に基づき、現場の担当者が何に困っているのかを丁寧に聞き出す姿勢が、監査の現場では何よりも活きてきます。この点において、人生の酸いも甘いも噛み分けた50代や60代の経験は、大きな強みになります。
一方で、いくら人柄が良くても、最低限の専門知識がなければ監査は成り立ちません。
そこで活きるのがCIAやCISAといった資格です。
これらの資格は、自分が内部監査のグローバルな基準を理解しているという客観的な証明になります。
名刺に資格が載っていることで、初対面の相手に対しても、監査人としての信頼性を担保した状態で対話を始めることができます。
実務を円滑に進めるための潤滑油として、資格は非常に有効なツールです。
安居氏:30年以上勤めた銀行を辞めて転職する際、家族からは強い反対を受けました。
長年慣れ親しんだ組織を離れ、50代半ばで新しい環境に飛び込んで本当に通用するのかという不安は、私自身も強く抱いていました。しかし、転職エージェントの勧めもあり、本来は40代までしか募集していなかった大手鉄鋼メーカーの求人に挑戦したところ、採用をいただくことができました。
転職活動を通じて痛感したのは、50代以上の採用において、客観的な強みを示す資格が不可欠であるという事実です。
企業側が一定の年齢以上の人物を採用する際、社内に対して「なぜこの人を採用したのか」を説明する明確な理由が求められます。
その際、CIAやCISAといった国際資格を保持していることは、書類選考を通過するための決定的な理由付けになります。
何の資格も持たないまま、これまでの経験だけで勝負しようとしても、書類選考の段階で落とされてしまうのが現実です。
自分の市場価値を証明し、面接の打席に立つためにも、資格は必須の武器だと感じています。
安居氏:内部監査に向いていないのは、一人合点をして勝手に物事を解釈してしまう人や、自分の思い込みが強すぎて相手の話を聞けない人です。
これは優秀とされるエリート層に比較的多く見られる傾向です。
「お前の部署のやり方は間違っている、こうあるべきだ」と一方的な正論を押し付けても、現場は反発するだけです。
それぞれの組織には、これまでの歴史や業務のプロセスが存在します。
それらを無視して一方的に変更を迫れば、現場の業務に支障をきたしてしまいます。
求められるのは、相手と共通の意識を持ち、一緒に業務を良くしていこうという協調的な姿勢です。
被監査部門の懐にニコニコと入り込み、相手が安心して本音を話せるような雰囲気を作れる人柄が、優れた監査人には共通しています。
論理的な正しさだけで押し通そうとするのではなく、相手の立場を尊重しながら対話を進められる柔軟性が求められます。
安居氏:年齢や経験によって、CIAがもたらすキャリアのインパクトは異なります。
まず、20代後半など若い世代で実務未経験の場合、CIAを取得していれば転職市場において極めて高い評価を受けます。
現在、多くの大手企業や金融機関が内部監査人材を渇望しているため、若い年齢でこの資格を持っていれば、引く手あまたの状況になるでしょう。
また、内部監査は組織全体の業務プロセスやガバナンスを俯瞰できるポジションであるため、若いうちにこの経験を積むことは、将来的に経営企画などのキャリアへ進む上でも非常に有利に働きます。
50代手前や未経験の方であれば、まずは現在の所属組織の中で内部監査部門への異動を希望するアプローチが現実的です。
内部監査への異動を希望する人は比較的少ないため、CIAの取得をアピールすれば異動が叶う可能性は高くなります。
そこで2、3年の実務経験を積んだ上で転職市場に出れば、年齢に関わらず有利な条件でキャリアを切り開くことができます。
また、コンプライアンスや法務、財務などの経験がある方にとっても、CIAやCISAの取得は非常に強力な掛け合わせとなり、市場価値を飛躍的に高めることができます。
安居氏:内部監査は、年齢を重ねれば重ねるほど、これまでの人生経験や業務知識が厚みとなって活きる仕事です。
そのため、60代を超えても嘱託などの形で組織に求められ、長く現役を続けられる分野だと確信しています。
今後、組織の体制変更や上司の交代、あるいは家族の事情による地方への移住など、予期せぬ変化が訪れるかもしれません。
そうした緊急事態に直面した際、自分を助け、家族を守ってくれるのは、市場で通用する強力なカードを持っているという事実です。
CIAという資格は、今の組織に留まるにしても、外の世界に挑戦するにしても、自分の身を守る強固な盾となり、道を切り開く鋭い矛となります。
地方の有力企業などでも、専門性を持った内部監査人は常に不足しています。
キャリアの選択肢を広げ、自立したビジネスパーソンであり続けるために、ぜひこの機会に挑戦の一歩を踏み出してみてください。
本イベントでは、50代からのキャリア形成における現実的な戦略と、それを支える資格の重要性が、安居氏のリアルな体験談を通じて語られました。
華やかな転職市場のイメージに惑わされず、自身の置かれた状況を客観的に分析し、競争の少ない内部監査という領域で希少価値を最大化するアプローチは、多くのビジネスパーソンにとって極めて実践的な指針となります。
特に、CIAやCISAといった資格を単なる知識の証明としてではなく、実務における信頼の獲得やコミュニケーションの円滑化のためのツールとして捉える視点は、資格取得の先にあるキャリアを見据える上で非常に重要です。
変化の激しい時代において、自らの手でキャリアをコントロールするための武器として、これらの国際資格への挑戦を検討してみてはいかがでしょうか。
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