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  • 2023/11/02公開

IPOに内部統制が必要な理由とは?内部統制整備のステップまで解説

IPOに内部統制が必要な理由とは?内部統制整備のステップまで解説

企業の目標を達成するために必要な仕組みを整備し適切に運用するプロセスを内部統制といいます。

企業で粉飾決算などの不正が行われた場合、経営者や従業員はもとより、株主や顧客、一般消費者をはじめ社会全体に大きな影響を与えるケースが少なくありません。そして、その企業の不祥事を防ぐためには内部統制システムが欠かせません。

IPOを行う際は、内部統制の整備が必要です。内部統制を整備すれば、業務効率化、社外からの信頼度向上、不正防止、リスクコントロールなど多くの効果があります。

本記事では、IPOに内部統制が必要な理由や内部統制の整備方法について解説します。

目次
内部統制とは
IPOに内部統制が必要な2つの理由
内部統制システムの整備方法
内部統制と内部監査の関係性
IPOには内部統制の整備が必須

内部統制とは

金融庁の「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」(※)によると、内部統制の定義は次の通りです。


「内部統制とは、基本的に、業務の有効性及び効率性、報告の信頼性、事業活動 に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な 保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される。」

つまり、内部統制とは「企業の経営目標を達成するために必要なルールや仕組みを策定し、適切に運用すること」を意味します。

※本基準は2023年4月に改訂版が公表され、2024年4月以降適用となる予定です。

参照:金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」

内部統制の4つの目的

金融庁が2023年4月に発表した「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂(意見書)」によると、内部統制の目的は以下の4つとされています。

  • 業務の有効性及び効率性
  • 報告の信頼性
  • 事業活動に関わる法令等の遵守
  • 資産の保全

各目的は独立して存在するのではなく、互いに密接な関係にあります。

参照:金融庁「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」

IPOに内部統制が必要な2つの理由

IPOのためには内部統制が欠かせないといわれていますが、その理由は次の2つです。

  • 「内部統制の整備」が上場審査の対象項目のため
  • 上場会社には「内部統制報告書」の提出義務があるため

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

「内部統制の整備」が上場審査の対象項目のため

日本には、東京証券取引所(東証)をはじめ、いくつかの証券取引所があります。例えば東証は「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つの市場に分かれており、それぞれに必要な株主数や純資産額などが異なります。

しかしながら、いずれの証券取引所にも上場審査の対象項目の中に「内部統制の整備状況」が含まれています。内部統制が整備されていなければ、審査は通過できず上場できないため、内部統制は必須事項となります。

そのため、IPOを目指すのであれば早い段階から内部統制の整備を行う必要があります。

参照:日本取引所グループ「上場審査基準|形式要件」

上場会社には「内部統制報告書」の提出義務があるため

金融商品取引法では全ての上場企業に「内部統制報告書」の提出を義務付けています。

報告書を提出しなかった場合や重要事項についての虚偽記載をした場合、5年以下の懲役もしくは5億円以下の罰金が科せられます(または併科)。また、社会的信用を損なうことにつながりかねません。

新規上場後3年間は「内部統制報告書」の監査証明は免除されています。しかし、免除されているのは監査証明のみで報告書の提出は必須であることに変わりはありません。

つまりIPO後も見据えても、内部統制の整備は必須であるといえます。

参照:法令検索「金融商取引法」

「内部統制報告書」とは

内部統制報告書とは、内部統制が有効に機能しているかどうか、経営者が客観的に評価した結果を報告する書類です。

内部統制報告書では、規定の項目ごとに評価し、開示することが求められます。金融庁によるひな形を参照にした規定の記載事項は以下の通りです。

  • 財務報告に係る内部統制の基本的枠組みに関する事項
  • 評価の範囲、基準日及び評価手続に関する事項
  • 評価結果に関する事項

あわせて、財務報告に関する内部統制有効性の評価に対し重要な影響を及ぼす後発事象が起きた際や、事業年度後に不正が発覚し是正した場合は、付記事項として記載します。そのほかに特記事項があれば記載が必要です。

参照:金融庁「内部統制報告書|第一号様式」

内部統制システムの整備方法

企業の業務・財務を適正化するための社内体制を内部統制システムといいます。IPO準備期間中には、内部統制システムの整備が必要になります。

しかし、どのように進めていけばよいか分からないというケースもあるでしょう。一般的には次の4つのステップで進めていきます。

  • ステップ1|内部統制の理解、メンバーの選出
  • ステップ2|現在の内部統制の把握
  • ステップ3|社内への情報の周知
  • ステップ4|テストと不備の是正

ステップごとに、詳しく見ていきましょう。

ステップ1|内部統制の理解、メンバーの選出

会社法によって、内部統制システムの基本方針は取締役会で決定することと定められています。会社の経営方針・行動指針、法令遵守基準などを策定し、コンプライアンス体制の充実に向けた基本方針を立てなければなりません。

そのためには、内部統制報告制度について十分理解する必要があります。その上で、整備・構築する内部統制の方針や範囲を決定しましょう。

同時に、内部統制整備の推進メンバーを選出しチームを作ることも必要です。人材育成が必要になるケースもありますが、必要な作業として取り組みましょう。

ステップ2|現在の内部統制の把握

企業の現在の内部統制の状況を把握し、可視化のために文書化しましょう。各部署や業務における現在の規程だけでなく、明文化されていないルールを含めて洗い出します。

業務プロセスを図に起こし、可視化した「フローチャート」を用いると、分かりやすく整理できます。

想定されるリスクと、それに対応する統制の関係を明確にするために、RCM(リスクコントロールマトリックス)を活用するのもよいでしょう。

現在の内部統制の状況を把握した後、リスクの分類・分析・評価を行い課題や不備を見つけ出し、改善します。

ステップ3|社内への情報の周知

研修会やミーティングを行い、内部統制報告制度について社内での理解を深める必要があります。特にリスクコントロールについては、現場との情報共有を図ることが大切です。

また、内部統制システムの見直しや強化によって現在のルールの変更や業務改善を行う際も、社員への通達が必要になります。

従業員が、伝達された情報を正確に理解し、適切な判断や処理ができるよう丁寧に伝えることが大切です。伝える情報や社員の人数が多い場合、確実に情報を伝えるために、社員への情報の周知方法を統一し、情報伝達の環境を整備しましょう。

ステップ4|テストと不備の是正

内部統制報告制度を反映した新たなルールやプロセスで業務を実施し、不備が見つかった場合は適切な対応を行います。

是正によってプロセスやガイドライン、ルールなどを変更した場合は、図やフローチャート、文書などを更新し、担当部署のメンバーに業務内容やルールの変更を伝えましょう。

内部統制システムの整備状況を評価するにはテストが必要です。代表的なテスト方法として、業務プロセスからサンプルを1つだけ抽出してテストする「ウォークスルー」や、複数のサンプルを抽出する「サンプリングテスト」があります。

内部統制と内部監査の関係性

内部統制が正しく機能していることを確認するために、組織内部の人間が行う監査を内部監査といいます。内部監査は、内部統制の実現に欠かせない要素の1つであると言い換えてもよいでしょう。

内部監査の目的は、不正防止、リスク軽減、業務効率化などです。企業の課題点を発見し、適切な改善策を提示して解決につなげる役割を担います。

内部監査は経営目的の達成に役立てるためのものですが、公正かつ独立の立場で実施する必要があります。

関連記事:アビタス CIA「内部監査(業務監査)とは? 目的・やり方・チェックリストを解説」

IPOには内部統制の整備が必須

内部統制の整備は上場審査の対象項目です。加えて、上場会社には「内部統制報告書」の提出義務があるため、IPOを目指すのであれば内部統制の整備は必須事項です。

内部統制を行うと、粉飾決算などの不正やミスの防止、リスク軽減など様々な効果があります。また、業務全体の流れを見直すことになるため、他部署との連携が進み、業務の効率化につながります。

社内で内部統制整備のメンバーの選定や、内部監査人の育成が必要になるケースもあるでしょう。

その場合は、CIA(公認内部監査人)などの資格を取得することで、専門知識が身につきます。内部統制システムの整備や強化を行う際は、CIA資格の取得を検討してみましょう。

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