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みなさん、こんにちは、アビタス講師の八野です。このコラムは、いつもの教室から飛び出して、実務で遭遇したあれやこれやについて、驚いたこと、感心したこと、考え込んでしまったことなどを本音トークでお伝えいたします。
今回は「不正の発見」についてお話します。「そもそも~」と「総務部長でいいの?」のふたつについてまずは、見て頂きましょう。
目次
1.そもそも不正を探していない
2.総務部長でいいの?
3.餅は餅屋です
企業や組織の「不正」が世間をしばしば騒がせますが、その際、「監査人は何をしていたのだ?」という声があがります。この疑問は当然だと私も思います。がしかし、「監査人はそもそも不正を探していない」と答えると、ご納得頂けるでしょうか?あるいは、馬鹿なことを言うなとお叱りになられるでしょうか?
実は監査人は、「不正の発見」とは別の目的があって監査をしているのです。外部監査人(監査法人や公認会計士)による財務諸表監査の場合、財務諸表に重大な誤りがあるかないかを監査しています。内部監査人(内部監査室にいる人)の場合、ガバナンスなどの妥当性を評価することにより、組織に価値を付加するために監査しています。
勿論、監査の過程で「不正」に気付く場合があります。監査人には、不正があるのではないかという職業的懐疑心を働かせなさい、という規定もあります。がしかし、本来の目的は別の所にありますので例えば、巧妙に細工された不正はまず、見つけることはできないでしょう。
考えてみればあたり前のことで、監査法人の公認会計士といっても、普通の人です。内部監査室の内部監査人といっても、元あなたの同僚です。つまり、刑事のような「犯罪捜査」の訓練を積んだ人ではないのです。
こう考えると実は、一般の企業や組織においては、「不正を発見」する専門家はいないというおそろしい現状が見えてきます。うちの会社は上場会社で監査法人さんに監査してもらっているので大丈夫、では全くありません。
このような状態で、組織内で不正らしきものが発生した際、みなさんどうされていますか? 上場会社で、大きな損失や犯罪が予見されるようなときには、「第三者調査委員会」のようなものが設置されて、不正調査にあたるのでしょう(新聞でよく報道されていますね)。がしかし、大多数の会社にとっては、名のある弁護士先生を座長にした「第三者調査委員会」まで設置して(お金をたくさんかけて)、調査を行うことはまれでしょう。大半は、組織内で調査を行い、該当する場合には就業規則などに照らして処置するのではないでしょうか。
問題は、組織内部で調査する際に誰を調査担当者にしているかです。営業部でもない、製造部でもない、宣伝部でもない、まあ、総務部だよね、ということになっていませんか?そして総務部長が例えば、怪しい?と思われる人物に面接をします。総務部長がハッスルして面談が尋問になってたりもします。
これはとても危険です。先程から言っているように、組織に「不正発見」の専門家はいません。かつ、専門家ではない人が、具体的な調査活動(例えば、従業員との面談や証拠の押収など)をしてしまうと結果、かえって会社側が不利な状況に陥ることもあります。例えば、従業員を監禁(部屋のドアの前に人を立たせても監禁と判定される場合があります)した状態で面談しても、裁判になった場合その時の供述は、一切証拠として採用されません。証拠となるデータがあると思われるパソコンを起動して当該ファイルを発見し、USBにコピーし保存したとしても、証拠の保全が全くなされていないと判定されれば(この例だと、保全されたとは言い難い)、証拠として認めてもらうのはかなり難しいでしょう。
専門家でない人が、いわゆる捜査や不正調査を行うことは、かえって組織を窮地に陥れる可能性があります。悪い人は、こちらの揚げ足をとることに長けています。総務部長にハッスルいただくことはやめましょう。
現場でよく相談されることがあります。先ほど書いた通り、調査委員会を立ち上げるほどではないし、弁護士さんに依頼するほどではない不正をどのように調べればよいのか、と聞かれます。不正が起こっているだろうなと気付いても、それをきちんと調査する人材が圧倒的に足らないのです。
手前味噌で恐縮ですが、私は幾つかの国際資格を持っています。その中でも、公認不正検査士(CFE)の資格は、こと「不正の調査」に関して大変有意義な資格です。また、CFEは、不正を「予防」「発見」「是正」に関する知見と経験を備えた資格です。
残念ながら「不正」はなくなりません。がしかし、減らすことはできると思っています。日本においてもCFEのような専門家が増えれば、不正は減っていくと思います。みなさんも、ご興味わいたなら、不正検査士資格の内容を調べてみてください。やりがいあります。
八野 寿典
アビタスUSCPA(米国公認会計士)、CIA(公認内部監査人)、CFE(公認不正検査士)各プログラム講師
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