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IFRS実務者インタビュー

【vol.10】今の経理に求められるのは、守りではなく“攻め”の視点。

伊藤 潤乃介さん
出光興産株式会社 経理・財務部門

  • 経理財務経験:有
  • 経歴
    1995 出光興産入社
    2000-現在 経理財務部
    (2014-2016 ベトナムJV出向含む)

今の経理に求められるのは、守りではなく“攻め”の視点。

出光興産の経理財務部に所属し、経理の中核を担う立場でIFRSを学習・活用している伊藤様にお話を伺いました。
日本基準を長く採用してきた企業においても、グローバル展開や海外との協業を見据える中で、国際会計基準の知識は確実に求められるようになってきています。現在までの、IFRSへの向き合い方や実務での使い方、検定取得の意義まで、現場目線で語っていただきました。

記事内容はインタビュー当時のもので現在は異なる場合があります。予めご了承ください。

ーまずはご経歴をお聞かせください。

私は出光興産の経理財務部に所属しており、まさに会計の本丸ともいえる業務に携わっています。当社は現在、日本基準(JGAAP)を採用していますが、過去にIFRSの強制適用が話題になった際には、社内でもIFRS適用を検討した経緯があります。その後も海外展開の広がりとともに、グローバルな会計基準への理解はますます重要になってきていると感じており、IFRS適用要否は常に社内で検討しています。私自身も、IFRSの全体像をもう一度整理し、知識を体系的に身につけるために、IFRS検定の学習を開始しました。

ーIFRSを学ぼうと思った背景を教えてください。

以前、社内ではIFRS適用を検討する中で、コンサルタントと連携して企業分析や影響調査を行っていました。その際は特定の論点について深く掘り下げる機会も多かったのですが、広い視点で網羅的に理解するという機会は限られていました。時間も経過し、再び「広く浅く」でも全体を見直したいと考えたことがきっかけです。
また、IFRSを知ることで海外子会社とのやりとりや投資判断、将来的な適用への準備など、様々な実務に応用できると考えました。

ー実際にアビタスの講座を受講してみていかがでしたか?

アビタスの教材は非常にバランスが良く、重すぎず軽すぎず、実務に即した内容で構成されています。最初に手に取るべき「教科書」として非常に優れており、概略的すぎず、かといって専門書のように重厚でもない。そのため、仕事をしながらでも学習を継続できる点が魅力でした。
また、私の部署でもアビタスのCIA(公認内部監査人)講座を受講していた社員がいたことや、法人営業での接点もあったことから、社内的にも信頼されている講座であるという安心感もありました。

ーIFRS検定の取得がキャリアに与えた影響は?

当社では資格取得が直接的な評価につながるわけではありませんが、一定の知識を持っている証明になるため、関連する業務のスタートラインに立ちやすくなります。たとえば、会議や資料作成の際に「IFRSでの処理はどうなるか」という話が出たとき、自分がその文脈を理解して発言できるかどうかは大きな違いです。実際に私も、アビタスの教材を今でも時々参照することがあります。まずは基礎的な理解を得た上で、必要なタイミングで基準書やより専門的な情報にあたるという学習プロセスが、私にとって非常に有効でした。

ー採用活動においてIFRS検定がどう評価されるとお考えですか?

履歴書の中で「IFRS検定取得」と記載があれば目に留まります。職務経歴にIFRSに関する経験が書かれていても、その深さまではわからないのが実情です。一方、検定を持っていれば、少なくとも一定レベルの知識を広く持っていることが確認できるため、面接でも共通言語での会話が可能になります。たとえ現在IFRSを適用していない企業であっても、国際的な会計基準に対する意欲や一定レベルの知識がある人材と評価されると思います。

ーIFRSの知識は、他部門の方にとっても有益だと思いますか?

経理部門以外、たとえば内部監査部門や監査部などにとっても、IFRSの知識は有用です。詳細な会計処理を理解していなくても、「この処理は一般的にどう扱われるべきか」といった勘どころを押さえておくことは、レビュー業務において極めて重要です。特に監査では、IFRSに則った視点を持つことで指摘の質が上がりますし、経理部門とのやり取りもスムーズになります。まさに“共通言語”としての役割を果たしてくれるのです。

ー経理人材の将来について、どのようにお考えですか?

今後の経理人材の需要については、非常にニーズが高い状況にあると考えています。供給面で言えば、若年層の人口減少により、母数自体が大きく減っている。一方で、需要面では起業の増加や、海外展開を進める企業、M&Aの活発化などで、専門性を持つ経理人材へのニーズはむしろ高まっています。
DX化によって業務効率が向上すると言われていますが、リース会計のように新たな制度変更が迫っている領域があることや、事業拡大による対応案件の増加も見込まれ、会計人材に求められる活躍の場所は確実に広がっています。また、新卒や2次新卒採用を行っても、最終的には上記のような変革の中で経理関連分野での現場力が必要となってきますので、そこに人材開発というもう一つハードルがあります。
そうした背景の中で、IFRSを含めた“即戦力”としての会計知識を持つ人材は、今後ますます事業活動に必要な存在としての認識が高まると考えています。経理は「守り」の業務というより、今後は企業価値の根幹を支える「攻め」の領域になっていくと考えています。

ーこれからIFRSを学ぼうとする方へメッセージをお願いします。

IFRS講座/検定は、広く浅く体系的に学ぶには非常に適していると考えます。一度学んでおけば、基準書にあたる際にも「何が書いてありそうか」の見当がつくようになります。経理部門で働く方にとっては、実務に役立つ入口として最適ですし、他部門の方にとっても、概略的な知識を持つことで更なる事業理解や関係部署とのコミュニケーションがスムーズになります。
また、アビタスの教材は試験対策と実務活用が明確に整理されており、時間のない社会人でも効率的に学べる構成です。「試験に合格すること」自体ももちろん重要ですが、それ以上に「自信を持って知識を使えるようになる」ことが、この講座の大きな価値だと思います。