
2011年6月、金融庁の企業会計審議会において、IFRS(国際会計基準)の強制適用が、早くても2017年に延期される見通しが公表されました。これによって、IFRS、ひいては企業活動のグローバル化にブレーキがかかることが懸念されています。しかし、日本企業が海外市場等で生き残っていくためには、企業のグローバル化が不可欠であり、その軸となるのが、IFRSです。このような観点から、アビタスDipIFRコース担当講師、寺崎徹哉氏に、IFRSを巡る状況を、全3回にわたって解説いただきました。
第1回は、「IFRS導入は本当に後退したのか?~日米のIFRS対応を振り返る~」です。
日本とアメリカのIFRS導入に何が起こっているのか、正確な理解の一助になれば幸いです。
| 寺﨑 徹哉 (てらさき てつや)氏 IFRSコンソーシアム主任研究員/株式会社アビタス 教育研修アドバイザー/FAインサイトLLC代表 略歴 北海道生まれ。東京大学教養学部教養学科(国際関係論専攻)、オーストラリア国立経営大学院(AGSM)卒業(MBA)。総合化学及び通信機器メーカーで事業部経理・営業管理・国際調達等を経験した後、米国系コンサルティング会社を経て、1999年より国際会計の分野を中心とした教育研修サービスに従事。2007年より日本CFO協会にてFASS検定関連のプロジェクトに参画。現在、企業会計・財務を中心とした教育研修及び会計・IRを専門とする翻訳サービスに従事。米国公認管理会計士(US CMA)。 著書 「FASS ベーシック公式テキスト: 財務会計(IFRSs準拠)」、「FASSベーシック公式テキスト: 経営会計」(共に日本CFO協会 刊) 制作協力:「経営幹部のためのIFRSガイド 2011年版」(IFRS財団著、あらた監査法人監修、日本CFO協会訳) |
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第1回 IFRS導入は本当に後退したのか?~日米のIFRS対応を振り返る~ (2011.8.20)
米国証券取引委員会(SEC)が去る5月26日に公表したスタッフペーパーで、米国におけるIFRS導入アプローチに関する新たな考え方(コンドースメント、詳細は後述)が示された。 そしてこれを契機に、日本におけるIFRS導入論が迷走し始めている。2009年6月に金融庁が公表し企業会計審議会が承認した「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」で示された基本路線は、それからちょうど2年後の今年6月に開催された企業会計審議会総会・企画調整部会の合同会議において、根本から見直されることになった。「中間報告」で決定された事項で依然として有効なのは、IFRSの任意適用の容認(2010年3月期より)くらいのもので、その他は事実上白紙に戻されたと言っても過言ではないだろう。
今後、日本におけるIFRS導入がどう進展するのかを考えるに当たっては、やはり米国における現在の状況を正しく理解しておくことが必要である。本稿では、2008年にSECが公表したIFRS適用に関するロードマップ案から現在に至るまでの流れを踏まえた上で、今年中にSECにより打ち出される方向性を占い、その上で我が国に「残された」選択肢について考えてみたい。
| アメリカの現実路線~コンドースメントアプローチとは~ |
2008年11月にSECが公表したロードマップ案では、1) 米国内のSEC登録企業に対してIFRSを強制適用するかどうかについては、2011年に最終決定する、2) 米国内のSEC登録企業にIFRSを強制適用することを最終的に決定した場合、2014年から段階的に適用する、3)一定の要件を満たす米国内のSEC登録企業には、2009年12月15日以降終了する事業年度からIFRSを任意に採用することを認める、という3つの方針が提示 されていた。しかし、ロードマップ案の公表からほぼ2年の間に2)と3)の方針は白紙撤回され、SECはより「現実的な」路線を模索せざるを得なくなる。
そして今年5月に公表されたのが、冒頭のスタッフペーパーである。この中で提案されているコンドースメント(condorsement)という考え方は、コンバージェンス(convergence)とエンドースメント(endorsement)を組み合わせた造語であることから分かるとおり、この2つのアプローチの折衷案である。つまり、当面コンバージェンス(US GAAPとIFRSのすり合わせ作業)を続けながら、この2つが実質的に同等と評価できるようになった時点で、エンドースメント(IFRSを国内基準として正式に認める手続き)を行うという のである。ここで、IFRSとUS GAAPの2つが実質的に同等になるということは、US GAAPに準拠して作成された財務諸表が、そのままIFRSに準拠した財務諸表としても認められることを意味する。つまり、コンドースメントというアプローチは、米国内のSEC登録企業がIFRSの存在を意識せずに財務報告を行えるようにするために考え出された方法なのである。
ここで、エンドースメントの前提となるコンバージェンスについて、 具体的に説明しておこう。スタッフペーパーでは、この作業を3段階に分けて進めることを提案している。第1段階は、以前よりIASBとFASB間で進められているMoUプロジェクトの完了までであり、これについては規定路線といってよい。次の第2段階では、IASBが独自に取り組んでいる、MoUプロジェクト以外のプロジェクトに、FASBも参画するというもので、これもそれほど大きな議論を呼ぶ内容とは思えない。問題は第3段階である。第3段階の目的は、それでも残るUS GAAPとIFRSの差異の解消であり、簡単に言えば、「IFRSにあってUS GAAPにないルール」と「US GAAPにあってIFRSにないルール」をどう扱うかということになる。






















