
| 寺﨑 徹哉 (てらさき てつや)氏 IFRSコンソーシアム主任研究員/株式会社アビタス 教育研修アドバイザー/FAインサイトLLC代表 略歴 北海道生まれ。東京大学教養学部教養学科(国際関係論専攻)、オーストラリア国立経営大学院(AGSM)卒業(MBA)。総合化学及び通信機器メーカーで事業部経理・営業管理・国際調達等を経験した後、米国系コンサルティング会社を経て、1999年より国際会計の分野を中心とした教育研修サービスに従事。2007年より日本CFO協会にてFASS検定関連のプロジェクトに参画。現在、企業会計・財務を中心とした教育研修及び会計・IRを専門とする翻訳サービスに従事。米国公認管理会計士(US CMA)。 著書 「FASS ベーシック公式テキスト: 財務会計(IFRSs準拠)」、「FASSベーシック公式テキスト: 経営会計」(共に日本CFO協会 刊) 制作協力:「経営幹部のためのIFRSガイド 2011年版」(IFRS財団著、あらた監査法人監修、日本CFO協会訳) |
第3回 強制適用延期をIFRS学習のチャンスに変える!(2011.9.24)
去る2011年9月13日にIFRSコンソーシアム2011「グローバル時代の経営管理~日本企業がIFRSとどう向き合うか」が開催されたが、そのプログラムの一つに、「IFRSの取組と現状」をテーマとするパネルディスカッションがあった。パネリストは、大手監査法人で活躍するIFRS導入アドバイザリー・チームのリーダー達だったが、「強制適用が延期となったいま、日本企業は今後IFRSとどう向き合っていけばよいのか」というモデレーターの問いかけに対して、その中の一人の方が、「今後、IFRS導入の流れがどうなろうと、日本企業がIFRSから逃れることは不可能。そうであるならば、少し余裕ができた今こそ、人材教育にじっくり腰を据えて取り組むべきある。」といった主旨の発言をされていたのが印象に残った。
「きたるべきIFRS時代に向けて」と題した連続寄稿も今回で最後となるが、本稿では、筆者の主な活動領域であるIFRS教育の話をさせていただきたい。特に、経理・財務の専門家・実務家として、「IFRSが使いこなせる」ようになるために、さしあたり「机上でできること」には何があるかを考えてみたい。
| 1|簿記だけでは話にならない~IFRSにおける「財務会計」学習の必要性~ |
筆者は、「日本における」IFRS学習には2つの段階があると思っている。一つは、IFRSという会計基準の体系をベースとした「財務会計」そのものの学習段階、もう一つは、事業活動(会計的にいえば取引及び事象)に対するIFRSの適用能力を養成する学習段階である。なぜ、「日本における」を最初に付けたかと言えば、日本企業には、「財務会計」を体系的に学習した経験のある経理・財務の実務家が少ないという現実があるからだ。その原因としては、いわゆるトライアングル体制と言われる日本独自の会計制度が影響としていると思われる。
すなわち、日本で経理・財務の実務家として評価されるために必要とされてきたのは、財務会計で習うような会計理論よりもむしろ、日商簿記2級レベルの学習で身につく程度の基本的な会計的素養をベースとした税法(税務会計)や会社法の実務知識なのである。
筆者は、今後、IFRS時代が本格的に到来すれば、税法や会社法よりもIFRSが重要になるというつもりは毛頭ないが、少なくともIFRSを使いこなせるようになるためには、簿記で学習した程度の会計知識では話にならないという認識だけは、日本企業の経理・財務の現場にも定着するだろう。
したがって、一般企業の経理・財務スタッフ向けのIFRS学習とは、上述の第1段階、すなわちIFRSという会計基準の体系をベースとした「財務会計」そのものの学習ということになる。ただし筆者は、「財務会計は、これまで日本独自の企業風土、商習慣の下で営々と築き上げられてきた日本の会計基準をベースに学習することが重要であり、IFRS学習はあくまで日本基準との比較において行うべきだ」という考え方があることも承知している。そのことを承知の上で、やはり財務会計は、最初からIFRSベースで学ぶべきだと考える。
その理由は、体系的で学習しやすいIFRSに従った財務会計をしっかりと押さえてこれを知識基盤としつつ、その上で日本の会計慣行とどう折り合いをつけていくかを考えることを通じて実務スキルを磨いて行く方が、忙しい経理・財務スタッフにとって効率的ではないかと考えるからである。






















